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孤独な道標 【第八章】~執念②~

【第八章】
≪執念②≫

夏になり私は昼の仕事と副業の回春店も両立していて、淳介にはしばらく会わない日が続いていた。

きっと、淳介も私のことを忘れかけているんだろうと思っていた。でも、そんな思いも束の間だった。淳介は私の働く会社の電話番号を調べて電話をしてくるようになった。

最初から相手にしなければよかったのに、電話に出てしまった。私が、きつく言えば収まると思ったから。でも、それも甘かった。

淳介はその日からまた、電話攻撃、待ち伏せ、プレゼントなどを持って私の前に度々やって来ては復縁するように迫った。
「俺は、おまえの奴隷契約書をもってるんだぞ。婚姻届だってもってるんだぞ。」
「それがどうしたの?そんな紙片なんてなんにも怖くないわ。」

「みるく、いったいどうしたっていうんだ。おまえがそこまで変わるのは何かあったからだろ?他に誰かと奴隷契約書を交わしたのか?」

「バカじゃないの?もう奴隷ごっこはおしまい。私は、淳介の浮気がいやだって何回言ったらわかるの?」

「だから、俺、あれから一度も浮気してないし、これからもしないって誓うよ。それに、俺が単なる行為じゃ出ないの知ってるだろ?みるくとじゃなきゃ駄目なんだ。」

「遅かったわね。また新しい奴隷を探しなよ、そのルックスとトークで。」

「みるく・・・考えなおしてくれ。俺は、みるくをこの身体に焼き付けてあるんだ。」

淳介は、私に腕の入れ墨を見せた。腕には以前からあった絵と文字の他に最近入れたという梵字を見せてくれた。なんて書いてあるかは読めなったが、私にはなんとなくわかった。恐らく私の名前が刻まれたんだろうと思った。怖くてそんなの聞けない・・・。
「なんて書いてあるのか聞かないのか?」淳介は私に問いただす。

「わからなくていい。私には何も関係ないことだもん。」

「まあ、そう言ってられるのもいまのうちだ。そのうち俺じゃなきゃ駄目だって身体が悲鳴をあげるようになるから。」
淳介のこの自信はどこからくるのか全くわからなかった。でも、別れを告げてから半年近くが経っても尚、淳介の気持ちが私にあることが信じられないくらいだった。だからと言って、戻るわけにはいかない。私はもう、決めたんだ・・・。淳介と一緒にいたら、自分が自分らしくなくなるような気がしたし、私には奴隷は向いていないって。

こんなやり取りが何度かあり、しばらくしY子から連絡があった。その時のY子は明らかに様子がおかしかった。

以前は私の友人だし、私のことを心配してくれていたのにこの日から、Y子は淳介の味方になった。

何があったのかはわからない。でも、私には誰も味方してくれる人がいなくなった。淳介はY子に対しても何か、賄賂でも渡したんだろうか。それとも、自分のそのルックスとトークでY子を誘惑したのかもしれない。淳介ならやりかねないと思った。

私は何が何でも、淳介にこの住んでるところだけは知られまいとした。たとえY子が喋ったとしても、最寄りの駅までしか教えていなかったから、見つけるのは容易くはないはず。大丈夫、大丈夫、私は自分に言い聞かせることしか出来なかった。毎日を忙しく送る中、私は淳介に見つかるかもしれないという恐怖と闘いながら季節は秋に近づこうとしていた。