2022. 5. 28 (土) 15 : 00 ~ iichikoグランシアタ (大分市)
シューマン:「子供の情景」Op.15より 第1曲 「見知らぬ国と人々について」
J.S.バッハ:パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 ト長調 BWV988 / ドミトリ・シトコヴェツキーによる弦楽三重奏編曲版;アリア, 第1~第15変奏
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 ト長調 BWV988 / ドミトリ・シトコヴェツキーによる弦楽三重奏編曲版;アリア, 第16~第30変奏
ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲 第3番 ハ長調 WoO36-3
(返礼曲:ピアノ独奏)
J.S.バッハ:イギリス組曲 ト短調 BWV809より 第5・6曲 ガヴォット I・II
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
ヴァイオリン:大宮臨太郎
ヴィオラ:坂口弦太郎
チェロ:市 寛也
一昨日行ったコンサートの話です。
前週末は別府市へ、今回は大分市へ。
前回と同じく、めちゃめちゃよかったー
元々のプログラムはアルゲリッチのソロは2曲目に組んであったが、当日になって1曲目に演奏されることが発表された。まぁそちらの方が弦楽トリオのゴルトベルク変奏曲が続けて聴けるから自然かな。
当初アルゲリッチのソロはバッハのパルティータ2番かシューマンの子供の情景かどちらか、ということだったが、別府ではバッハを弾いたしたぶん同じだろうなと思ってたら、やはり予想通りバッハを弾きますとのアナウンス。
開演前に音楽祭の総合プロデューサーの伊藤京子さんからご挨拶があった。
印象的だった言葉。伊藤さんは音楽の”力”、”パワー”という表現があまり好きではないそうで、それはアルゲリッチも同じ、アルゲリッチは音楽は”寄り添うもの”といつも言っているそうだ。
昨今のウクライナ情勢や先日のアメリカでの銃乱射事件などそういうニュースを聴くたびにアルゲリッチは心を痛めているとのこと、音楽をこうして演奏できる喜びと平和への祈りを、といったお話だった。
この日の曲解説 (寺西基之氏による)はコチラ。
というわけで1曲目はアルゲリッチのソロ演奏。
今日もなかなか出てこないかなと思ったら、予想外にすぐ登場した (伊藤さんが話してる間に心の準備が整ったんだろうか)。
で、バッハと思ってたら、いきなりシューマンの子供の情景の1曲目が
私はてっきりアルゲリッチが間違えたと思ったが、第1曲を弾いたあとそのままバッハを弾き始めた。 なにか彼女なりの意図があってのことなのだろうが、この第1曲がもう本当に美しくて なんならそのまま全曲弾いてもらってもよかった
そしてバッハは2度目だったが何度聴いてもほんとにすごい
前回聴いたあとグレン・グールドの同曲をCDで久々に聴いてみたが、グールドとは全く違うバッハ。グールドは細かく音を刻んで(まるでスタッカートみたい)いたが(それはそれですごく好き)、アルゲリッチはペダルを駆使して打鍵も強く、バッハの固定概念をくつがえすような。カプリッチョは何度聴いても圧巻! と同時にバッハってやっぱりすごい!とあらためて思う。聴いてると時々ジャズっぽかったり、音のパズルみたいだ。バッハの頭は理系じゃなかったかな~などと考えながら聴いた。
(画像はアルゲリッチ音楽祭の公式ツイッターよりお借りしました ©脇屋伸光)
次はN響メンバーのトリオによるバッハの「ゴルトベルク変奏曲」の弦楽三重奏曲版。
通常は第30変奏まで一気に演奏されるのだろうが(約1時間くらい)、今回は休憩をはさんで前半は第15変奏まで、後半が残り、と二つに分けて演奏された。
原曲のピアノ版も素晴らしいが、この弦楽トリオ版もすごくいいんですよね~
編曲したシトコヴェツキーもすごい、知らないで聴いたとしたらきっと弦楽トリオのために書かれた作品と思うだろう。
ただバッハって演奏によって退屈してしまうかワクワクするかがはっきりしていてだからこそ難しいのだと思う。
前半の演奏は個人的には面白みにやや欠けた気がした(あくまで主観です)。教科書的な優等生の演奏なのだろうけど聴いていて高揚しない。アルゲリッチを聴いたあとだったせいもあるかもしれない。
あぁ、こんな感じの演奏なのか~と思ってたら、なぜか休憩後の後半の方が断然よかった。後半も変奏が進むにつれてさらに勢いが出てきて第30変奏とかほんとによかった。最初のアリアと最後に演奏されたアリア、全然違って聴こえた気がしました。
私はピアノ版をまだ生で聴いたことがないのでいつかぜひとも聴いてみたい。
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 / シュ・シャオメイ (Pf)
(KKC5625) (2016年)
ゴルトベルク変奏曲といえば、グレン・グールドの録音が名盤として有名なのでしょうが、私はシュ・シャオメイのも好きです。1990年版の方有名なのかもですが25年後に再録音されたこちらも大好きです。
最後はアルゲリッチとN響トリオの4人によるベートーヴェンのピアノ四重奏曲第3番 WoO36-3。
私はベートーヴェンがピアノ四重奏曲を書いていたこと自体知らなかったが、前述の寺西基之氏の解説によると、ベートーヴェンは14歳の時に3曲セットのピアノ四重奏曲WoO36 (自筆譜にはピアノではなくチェンバロと明記)を作曲していて、彼の初の室内楽曲だそう。彼の死後1828年に出版、今回の作品は初版では第3番だが、自筆譜では第1番と書かれており、最近の新全集版はそれに従っているそうだ。
ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲ハ長調WoO36の3 (16分31秒)
/ エッシェンバッハ (Pf), ブレイニン (Vn), シドロフ (Vla), ロヴェット (Vc) (1969年6月)
このyou tubeも軽快なテンポだが、アルゲリッチたちの演奏 (第1、3楽章)はさらに速い気がした。はえ~~!と思った 前回も書いたが、まさにアルゲリッチマジック!と言ったらいいのか、あるいはアルゲリッチに煽られて (or 尻を叩かれて?w) 弦のお三方はゴルトベルクの時より一段とギアが入ったようにピアノにくらいついていた(ように個人的に思えただけで実際は余裕だったのかもですけどね!)。
この曲自体がピアノが主役ぽく書かれてあるので余計かもだが、アルゲリッチのピアノが入るだけで音楽がキラキラ 色が鮮やか 短い曲だけどすごく楽しかった
(画像はアルゲリッチ音楽祭の公式ツイッターよりお借りしました ©脇屋伸光)
終演後はアルゲリッチが先導して(?)ステージの端っこから端っこへ移動して大きな拍手に応えていた またもやあちこちでBrava ! と一文字ずつ紙に書いたものを掲げた方々(同じ方たちなのかな?)がいらした。
その後、大分県民栄誉賞の授与式があった。(私は逆にこんだけ長年貢献してるのにまだあげてなかったんかい!ってツッコミたくなりましたけどね)
広瀬大分県知事、だいぶ年取ったなぁ。杖をついて足元もおぼつかない。今年80歳になられるそうで、余計なお世話だけどそろそろ後進に道を譲った方がいいんじゃないのかな~。アルゲリッチには副賞として大分ワインと牛しゃぶの目録が手渡された。
そのあとアルゲリッチが英語でスピーチ。 賞への感謝を述べるとともに、牛しゃぶはもう食べちゃってたらしく、食べて若返ったと。(通訳の方は訳してなかったけど、広瀬知事に”あなたと同じように(若返った)”と言ってたようなw)
(画像はアルゲリッチ音楽祭の公式ツイッターよりお借りしました ©脇屋伸光)
でもって広瀬知事が「もう一曲弾いてくれんかな」的なことを言ったもんだから(と言った当人は用は済んだとばかりにさっさと帰っていったよ・・・)、アルゲリッチきっと授与式だけのつもりじゃなかったかなと思うんだが、ステージに無理矢理(?)取り残されて(いやもしかしたら予定されてたのかもですけどね)最後に1曲弾いてくれた。
再びのバッハでイギリス組曲第3番からガヴォット。これがまた素晴らしくって
第5曲の軽快なガヴォットからの~第6曲のガヴォットがなんて幻想的!ペダリングの魔術師!最後まで感動をいただいた。
おまけ:大分のホールでは毎回過去の音楽祭の写真パネルなどが飾られています。
それを一部載せます。
音楽祭の歴史なんだけど字が小さすぎて読めず
たくさんの写真。もっとたくさんありましたがこの中からいくつか載せます。
「1995年音楽祭に先駆けたプレコンサート1回目として10年ぶりのソロ・リサイタルを開催、世界が注目し、驚愕した瞬間!」©TAKEO ISHIMATSU
「第6回音楽祭(2004年)「子どものための無料コンサート」より子どもたちの「アルゲリッチさんありがとう!」の大合唱に応えるアルゲリッチ ©T.Tada
「第10回 (2008年)「室内楽マラソンコンサート」よりアンコール 10周年を祝って弦楽四重奏でハッピーバースデー変奏曲」©Rikimaru Hotta
「第10回音楽祭(2008年)「オーケストラ・コンサート」リハーサルより チョン・ミョンフン、マルタ・アルゲリッチ モーツァルト作曲4手のためのピアノ・ソナタニ長調 K.381を演奏」©Rikimaru Hotta
(誰かの手(私じゃありません)が反射で映り込んでますが亡霊ではありませんw お気になさらず~)
アルゲリッチが来年もお元気で大分へ来れるよう祈っています
帰りに見た由布岳
(フロントガラス越しの写真なので鮮明じゃなくてすみません)