2018. 5. 25 (金) 19 : 30 ~ iichiko総合文化センター・iichikoグランシアタにて
<ベスト・オブ・ベストシリーズ Vol.6 室内オーケストラコンサート>
第1部
ルーセル:小組曲 Op.39
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ミヨー:フランス組曲 Op.248
指揮:ラデク・バボラーク
水戸室内管弦楽団
第2部
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 Op.35
(ソリスト (Pf & Tp) アンコール)
シューマン:幻想小曲集 Op.73
(アンコール(サプライズ演奏))
プーランク:ホルン、トランペットとトロンボーンのためのソナタ FP33より 第3楽章
(Hr; ラデク・バボラーク、Tp; セルゲイ・ナカリャコフ Tb; 呉 信一 )
ハイドリッヒ:ハッピーバースデー変奏曲より テーマ, ヴァリエーション13 タンゴ
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
トランペット:セルゲイ・ナカリャコフ
水戸室内管弦楽団
今年もこの季節がやってきた 別府アルゲリッチ音楽祭も今年で第20回を迎えるそうだ。
昨年はイヴリー・ギトリスのマスタークラスと室内楽コンサートを聴いたが、今年はこの公演と来週日曜日のしいきアルゲリッチハウスでの公演を聴く予定。
今日は仕事をやや早目にあがらせてもらって、博多駅からソニックにちりんに乗って2時間ちょっとで終点の大分駅に。駅からは徒歩で20分くらいで会場に到着した。
ところで・・・実はこの日九響の定演もあったのだ
そのことを忘れてこのチケットを取ってしまった私・・・
まさに ダボーブッキーング
ほんとはこの日の九響の定演もすごく楽しみにしてたのに・・・
というわけで、九響の方はオットに代わりに行ってもらった。ちなみにこの日の演目はチラシをご覧ください。
指揮者はカーチュン・ウォン、ソリストはダニエル・オッテンザマー (Cl)
オットの話や行かれた方々のブログなどを読むと、モーツァルトのクラリネット協奏曲もストラヴィンスキーの葬送の歌~「火の鳥」もすごくよかったらしい
さてさて大分の話。
ここ数年は毎年聴いていたアルゲリッチのピアノ協奏曲が昨年は小澤征爾さんとの共演のためチケットが瞬殺でなくなってとれなかった。今年も小澤さんの予定だったので、鼻から諦めていたがご病気で降板となり、そのためかスムーズにとることができた(チケット代も当初より随分安くなった)。小澤さん降板により、当初予定のピアノ協奏曲が、ベートーヴェンの2番からショスタコの1番に変更になった。小澤さんは今年の松本での音楽祭も降板されるとか、早くまたお元気に復帰されることを祈っております。
前半はバボラークさん指揮でオケのみの演奏。
水戸室内管はテレビでは拝見したことがあるが、実際に聴くのは初めて。
正直私はアルゲリッチが聴ければいいと思って行ったので、しかも前半の1曲目も3曲目も知らない曲だし~、you tubeで聴いてみたけどよくわかんないし~、なんて思ってあまり期待していなかったのだが・・・とんでもない失礼な話だった!
水戸室内管うまし 室内管なので小編成(この日は6-6-4-4-2だったと思う)なのに、2階席の遠くにいる自分の席まで、まるでフルオーケストラのような豊かな響きが聴こえてきた。
コンマスの席には九響にもよく来て下さる豊嶋泰嗣さん、ヴィオラの首席の席には川本嘉子さん、チェロの首席の席には原田禎夫さんが座っていたと思う。ただ水戸室内管はコンサートマスターや首席奏者というシステムはなく、曲によって席は変わるらしい。実際2曲目、3曲目では彼らも後列などに席を移動していた(3曲目では豊嶋さんは第2ヴァイオリンの席だった)。 これら大御所たちの演奏家がいるからというだけではなく、木管・金管の個々のレベルも高い!と思った。特にフルートとオーボエの方、めちゃめちゃうまいっ オーボエはアーメル・デスコットさん。フルートはセバスチャン・ジャコーさん。
このおふたりは本当にうまかった。 金管の面々もとても安定している。金管(とくにホルン)がこんなに安心して聴けるのはいいなぁ。 とにかく今まで別府音楽祭に来たどのオーケストラよりも抜群にうまいと思った。
you tubeで聴いてよくわからなかったルーセルやミヨーの曲も生で聴くととてもよかった。ミヨーの曲は元々アメリカのブラバン用に作曲されたもので、1949年に管弦楽用の編曲版が作られたのだそう。そのせいか明朗で華やかな曲調が楽しかった。
聴き馴染みのある2曲目のドビュッシーの牧神の午後への前奏曲も別世界で聴いているかのようにひたすら美しかった。幻想的なフルートや吉野直子さんのハープが素晴らしかった。
水戸室内管で福岡公演とかやってくれないかなぁ
そして後半はいよいよアルゲリッチの登場
オケのチューニングが終わって、会場も静まり返っていたが、なかなか登場しない。ほんの1-2分くらいだったかと思うが、とても長く感じた。そしてついにトランペットのナカリャコフさんとともにアルゲリッチが登場した。
ショスタコのピアノ協奏曲第1番はちょうど2年前のこの音楽祭で聴いたことがあるので2度目(その際は高関健&広響、トランペットは辻本憲一氏)。そのときも圧巻の演奏だったが、この日もほんとーにすごかった
元々水戸室内管は指揮者をおかない演奏会にも力を入れているオケなので、指揮者がいなくても全く遜色ない。アルゲリッチも別に弾き振りのようなそぶりもしない。むしろ指揮者がいないことによって、オケ、ソリストともに演奏の自由度が増しているんじゃあと思えるほどだった。
アルゲリッチの演奏は2年前の同曲を聴いたときと技術的にも全く衰えていない。私の席からは遠目にしか手のあたりが見えなかったが、それでも強靭さと柔軟さを同時に醸し出す打鍵の様子がよく見えた。2年前よりもさらにテンポが速く感じたほどだった。その疾走するアルゲリッチにオケも自由自在についていく。トランペットのナカリャコフさんはアルゲリッチ自身が指名したというだけあって、さすがうまい!
いつも思うが、アルゲリッチは「ふふふ~ん」と何でもないように弾いているように見えて実は手先はすごい。(たとえが悪いけど)まるで猫がねこじゃらしと戯れているように自由に鍵盤と遊んでいるように見えて、正確なタッチと芸術的な運指、そして何といってもその輝かしい音色・・聴く人の心をたちどころに鷲づかみにしてしまう。(勿論いい意味で)”魔性のピアニスト”なんだよなぁ。
来月で77歳(!)になるアルゲリッチ。このくらいの年代になるとたいていのピアニストは何かしらの部分で衰えが感じられるというのに、この変わらないタッチの源の筋力が衰えていないのは驚異的。
アンコールにシューマンの幻想小曲集Op.73は元々クラリネットとピアノのために書かれたもので、ヴァイオリンやチェロのための編曲譜もあるが、トランペットで聴いたのは初めて!クラリネットでも息継ぎがとても大変だというが、ナカリャコフさん、さらり~と吹いていたように聴こえた。すごい。
そのあと、バボラークさんがマイク片手に登場、アルゲリッチに向かって英語でメッセージを述べた。
”この音楽祭に我々のオケを招待してくれてありがとう。そして音楽祭が20周年を迎えたことにおめでとう。我々は貴方のパーソナリティと音楽性のスピリットに常に刺激を受けています。そして(まもなく迎える)貴方のバースデーを心からお祝いします。”
といって、ナカリャコフさんのトランペット、呉さんのトロンボーン、そして自身のホルンで1曲演奏、そのすぐあとにオケがハッピーバースデーを演奏した(ハッピーバースデー変奏曲なるものがあるんですね。知らなかった。) その間アルゲリッチは座って聴いていた(表情は遠すぎて見えなかったが)。 そして金管3人衆がバラの大きな花束を持ってクルクル回って踊りながら再登場、アルゲリッチに手渡した。 アルゲリッチは豊嶋さんや川本さんなどにその花束から1本ずつ花を渡してから、客席に向かって挨拶。舞台袖に去っていった。
たった20分くらいのアルゲリッチの演奏のためにわざわざ大分までかぁと行く前はちょっと難儀に思っていた自分だったが、演奏は時間じゃない、中味なのだとあらためて反省。
そして水戸室内管の演奏が聴けたことが自分にとっては大きな収穫だった。感動して、帰りに水戸室内管= MCOのロゴが入ったTシャツも買って帰ったのだった
2階席のL席のいちばん端っこの席に総合プロデューサーの伊藤京子氏、そしてアルゲリッチの娘?もしくは孫娘??が座っていたように見えた。