
蒼莉 「井上さん!?」
五郎 「聞多…半蔀(はじとみ)さんだぞ」
蒼莉 「!」
井上 「…」

井上 「…蒼莉か…ざまぁねぇな…」
五郎 「全身斬られて…五十針以上の縫合だったよ…」
蒼莉 「良かった…」
井上 「…?」

蒼莉 「生きてて…良かった…」
井上 「…」
蒼莉 「あ、そうそう…高杉さんから伝言があって…」

蒼莉 「井上さんを襲った円竜寺の連中なんですけど…どうやら宍戸さんから報告を受けたみたいです」
蒼莉 「井上さん…あの人に何か言いました?」

井上 「…言ったなぁ…夜襲かけるって…ちっ…あいつか…」
蒼莉 (なんだ、わりと元気そうだな…)
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それから1ヵ月後。
井上の元へ高杉がやってくる。

高杉 「オレ…長州、脱藩(で)るわ」
井上 「は?」
高杉 「長州から脱出する」
井上 「は!?」

高杉 「三度も言わすな」
井上 「どこに行くつもりだよ!こんな情勢で…」
井上 「…まさか…」
高杉 「さすがに察しがええなぁ…じゃけど…くれぐれも喋るなよ」
井上 「う」

高杉 「すぐ戻ってくるけぇ。 で、蒼莉置いてくけぇ連絡係にでも使っちょき」
井上 「えっ!?お前一人で!?」

高杉 「一人じゃないとできん事もあるじゃろ?じゃあな」
井上 「―――っ」
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蒼莉 「高杉さん…どこ行ったんでしょう」
井上 「おそらく九州だな…」
井上 「筑前や…肥前…小倉藩を味方につけようってことだろう…けど…」

井上 「長州の今の事態を見て…他藩の勤王派が動けるとは思えんがな…」
蒼莉 「…」