『雨の日も神様と相撲を』
城平 京、講談社タイガ、2016年
文季はどうも、相撲に愛されているらしい。
小柄で愛くるしい顔立ちをしている逢沢 文季ふみきは相撲好きの両親の影響で相撲漬けの日々を送っていたが、その両親が事故で亡くなり田舎に住む刑事の叔父のもとで生活することになった。
その久々留木くくるぎ村は相撲好きのカエル様という神様に守られた村で、村人たちも皆、相撲を神事としていた。
そんな文季は、神であるカエル様の言葉を聞き村人たちに伝える「かんなぎの家」の遠泉とおいずみ家の長女で跡取りの真夏まなつから、カエル様に相撲を教えてほしいと頼まれたのだ。
文季の相撲の知識を見込まれ、外来種であるイチゴヤドクガエルとの相撲勝負に向けて手助けをする羽目になる。
同じ頃、隣村ではトランクに詰められた女性の死体が発見された。しかもトランクにはヤドクガエルの死骸も一緒に入っていたのだという。
やがて、この2つの出来事は絡まり合って思わぬ方向へと進んでいく。事件の結末は。外来種との決着の行方は。
おとぎ話と現実が融合したような作品。
主人公の文季は、小柄ながらも頭を使った取り組みを得意とする中学生力士。相撲の知識は相当あり、それに加えて相手の弱点や癖を観察する目や考える力がかなり鍛えられています。
なので、ガタイのいい相手にもそこそこ勝てるし、侮れない力士として有名のようです。
そんな彼が移り住むことになった久々留木の神様、カエル様たちに相撲を教えることになってしまいますが、サイズなどはリアルのカエルです。ただ「かんなぎの家」の跡取りにはそのカエル様の声が聞き取れるので、その少女を介してコミュニケーションをとっていきますが、その指導というか戦術がまた論理的。本気でカエルに相撲を取らせるために、著者もかなり調べられたのだと思います。
それにしても文季が歳に似合わず頭脳明晰です。トランク詰めの死体についても中々な仮説を打ち立てますし、ラストはかなり頭脳派な活躍をみせます。将来は名探偵ですね。