『高校生にも読んでほしい 海の安全保障の授業』
佐藤 正久、ワニブックス、2016年
周囲を海に囲まれた日本ですが、軍事技術の進歩により「海が陸地化した」というのが現実のようです。これは、その通りですよね。なので本書では「海の安全保障」をテーマにされています。
まあ、中国との関連がメインですが、彼らは「国境は国力に応じて変化する」という「戦略辺疆へんきょう」という概念があるそうで、故に周辺国をジェノサイドしてるわけですね。
そして2003年に改訂された「人民解放軍政治工作条例」では、「世論戦」「心理戦」「法律戦」を「三戦」として挙げているのだという。
中国は1950年代に西沙諸島の半分を、75年には残り半分をベトナムから奪いました。80年代には南沙諸島の6ヶ所の岩礁を奪い、95年にフィリピンが支配していたミスチーフ礁を奪取。中佐諸島には2012年、違法操業を繰り返して一瞬の隙をついてフィリピンのスカボロー礁を実効支配してしまったそうです。俗に言う「サラミスライス作戦」ですね。
なんでここまで好き勝手できたかって、要は軍事力が違いすぎるからとのことですね。あとは、中国は国連の常任理事国で、拒否権も持ってますし。
これに対してアメリカは「航行の自由作戦」で対抗しているようです。国連海洋法条約に基づく無害通航によって合法的にその海を通るという対抗手段ですね。
日本としても石油タンカーの8割が南シナ海を通るそうなので、ここを理不尽に抑えられたら死活問題ですよね。
ほかにも逆さ地図から読み解く中国が尖閣諸島を狙う理由や、佐藤議員と春香クリスティーンさんの対談も収録されています。
「海の憲法」たる国連海洋法条約を遵守し、遵守させ、法秩序でもって世界の海を守っていく。そんな一助となる一冊かなと思いました。