『幽女の如き怨むもの』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。


『幽女の如き怨むもの』

三津田 信三、講談社文庫、2015年



「はい。たった一つの事実に気づくことさえできれば、自ずと下せる解釈です」


戦前、13歳で家の借金のために遊女として売られた少女。「緋桜ひざくら」と名付けられた彼女は、花魁として生き地獄の世界に身を置くことになったのだが、花魁の一人が身投げをして、自身も「何か」に呼ばれるように後追い未遂を犯してしまう。


戦中、「二代目緋桜」を命名された花魁を含む3人が相次いで身を投げ、そして戦後にも同様の出来事は続いた。


身投げをした人物たちは、その遊廓に潜む怪「幽女」に呼ばれたのだろうか。

遊廓という、外界とは隔絶された世界の中で、3つの時代に3回連続で起こる身投げ事件。それらの怪異に刀城 言耶が立ち向かう。


 



   



刀城 言耶の長編シリーズ第6弾。


今回は刀城シリーズの異色作のような形になっていて、事件(?)そのもののスパンがとても長く、戦前〜戦後まで続いています。花魁たちの置かれた境遇は痛ましくて、そこは読んでいて辛いものがありますが。

花魁を身投げさせるという部屋を舞台に、3つの時代の3つの遊郭で起こった3人の緋桜が絡む3つの身投げ。


始末が悪いのは、身投げした全員に自殺なり事故なり、一応こじつけめいていてもそれなりの理由が存在していたこと。そのため、連続殺人とも言いがたく、本当に幽女の呪いとも言いがたいという宙ぶらりんで余計に不気味な状態となっています。


解決編は、えっという驚きがあり意外と伏線が張り巡らされていたりと推理小説っぽさ全開で、それでいて幽女というガチの怪異も出てきたりと三津田流のホラー+ミステリーの傑作となっています。