『ハイブリッド戦争の時代』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。



『ハイブリッド戦争の時代』

志田 淳二郎、並木書房、2021年





名桜大学国際学群准教授の志田氏は、91年生まれということなので、まだ30歳なのですね。米国外交史、国際政治学、安全保障論などが専門とのことで、これは参考になる一冊でした。



新たな戦争形態としてのハイブリッド戦争について論じられています。定義としては「意図的に民間と軍事的目標の境界を曖昧にする武力紛争未満の取り組み」ということらしく、代表例として本書でも詳しく取り上げられているのが、2014年のロシアによるクリミア併合。

このときに活躍したのが「リトル・グリーン・メン」で、国籍を示す紀章を付けず、覆面をして完全武装した「地元の自警団」を自称する謎の集団でした。



ハイブリッド戦争の研究は2000年代初頭から始まっているそうで、それ自体の肯定派・否定派がいたり、こうした新しい概念ができるにも紆余曲折あったみたいです。



宣戦布告をするより低いレベルの状態で、国家または非国家主体が調整のとれた状態で目標達成に動くため、国連憲章にも想定されていない紛争形態であるといいます。

それ故に、国連憲章のいう「侵略」に該当するのかとか、それに対して個別的自衛権・集団的自衛権を行使できるのかなど、曖昧に攻めてくるので対処も難しい模様。

経済的圧力サイバー攻撃、正体不明の奴らによる武力攻撃など、これはミサイルや鉄砲でどんぱちやってた頃が懐かしいレベル。



そんな中露が仕掛けてくるハイブリッド戦争に対して、日米やNATOなどは、どう立ち向かえばいいのか。志田氏の考える針路もしっかり示してくれています。

日米同盟の再確認、日本単独の防衛力整備など。NATOとの連携も決定的に重要だと述べています。安倍前総理が提唱した「FOIP」から連なる「クワッド」の枠組みを始め、私もあまり知りませんでしたが、NATO日本政府代表部が開設されていたり、自衛隊も連携を強化していたり、外交面でもすでに動いていたようです。やっぱ安倍さんスゴいわ。



我らが民主主義国家は、ハイブリッド戦争の脅威を完全に排除することは不可能だといいます。これに完全に対抗しようとするなら、ヒト・モノ・カネ・情報を政府が一元管理できる権威主義体制になるしかなく、それ自体が民主主義の敗北を意味します。

まずは、一人一人が学んで知識を得るところからでも始まるしかないでしょうね。