『贋作「坊っちゃん」殺人事件』
柳 広司、角川文庫、2009年
かつておれが見ていたはずの現実は、すべて裏返しの世界だった。曲がっていたのは言葉ではなく、現実の方だった。だとしたら…。
四国から東京に戻った「おれ」=坊っちゃんは街鉄の技師として働いていた。そんなある日、四国で教師をしていた頃の同僚・山嵐と偶然再会する。
そこで坊っちゃんは山嵐から、3年前に赤シャツが首を吊って死んだと聞かされた。しかもそれは自分たちが赤シャツと野だいこに鉄拳制裁を加えた当日の出来事だったという。
赤シャツは自殺ではなく他殺だったのではと疑う山嵐と共に、坊っちゃんは3年ぶりに四国を訪れ、赤シャツの死の真相を探ることになる。
そこでは驚愕の真実が坊っちゃんを待ち受けていた。
夏目漱石著『坊っちゃん』の3年後を描いた作品。もう完全に続編です。世界観や人物設定にまったく違和感がありません。
さらにすごいのは、『坊っちゃん』のストーリーを丸ごと本作の伏線にしてしまっていることですね。
四国滞在中に起こった数々の出来事。バッタを入れられたり大勢の生徒に床を踏み鳴らされてり、赤シャツがうらなり君の婚約者・マドンナを横取りしたり、そのうらなり君が僻地へ飛ばされたり山嵐が辞めさせられそうになったり。
新しい解釈というよりは、夏目漱石もそのつもりで書いていたのではと思える内容です。ぜひ原作から続けて読まれてみるといいと思います。