『名探偵の証明』
市川 哲也、草原推理文庫、2017年
1980年代に一世を風靡した名探偵・屋敷 啓次郎。行く先々で事件を解決し、その解決率はほぼ10割をマークし、名探偵の名を欲しいがままにしていた。
そして時は流れ還暦を越えた彼は、とある事件での負傷も相まって探偵からは足を洗い、落ちぶれた生活を送っていたが、かつての活躍を知るファンや関係者、パートナーを組んでいた刑事などからは復活を望む声は少なくない。
そんな中、資産家の一族に脅迫状が送り付けられた事件で、屋敷は周りからの期待の声に後押しされて、探偵としての再起を賭けて調査に乗り出すことになる。
その脅迫状の謎を巡り、タレント活動も行なっている新進気鋭の名探偵・蜜柑 花子と対決をすることとなるのだが、密室の中からその家の息子の死体が発見されてしまう。
屋敷は長年のブランクやトラウマを乗り越えて、この謎を解き明かすことができるのか。
光と闇に翻弄されながらも戦い続ける名探偵たちの生き様を描いたミステリー。
かつては解決率100%を誇り、推理小説界に「新本格」のブームさえ作った伝説の名探偵だったが、60代ともなりうらぶれた姿になっていたところを当時の相棒だった元刑事からの誘いもあり、復活を賭けた謎解きに挑みます。
とはいえ、やはり歳なので頭脳労働も一苦労です。
そんな屋敷のほかに、女子大生の蜜柑 花子という名探偵が登場します。この蜜柑は屋敷の大ファンで初対面時には興奮して気絶したほど(!)ふだんはアンニュイな女の子なのですが…。そんな彼女の想いも事件に絡んでいたり。
そして、事件を解き明かしていく名探偵には敵がつきもの。これから犯罪を起こそうとする犯人であったり、素人の口出しをよく思わない警察であったり。あとは無責任な世間の声とか。。
そんな名探偵の影の部分が描かれていて、どこかの小学生探偵や名探偵のお孫さんたちも真っ当な人生を送れるのか不安になります。