『ヴェサリウスの柩』
麻見 和史、創元推理文庫、2012年
物語は始まった
生者が死者となり 死者が生者となる
黒い絨毯の上で死者は踊り
生者は片腕を失うだろう
国立東都大学医学部で解剖の実習中に、遺体の腹部から出てきた長さ4㎝ほどのシリコン製のチューブ。その中には研究室の園田教授への脅迫文が収められていたのだ。
園田教授を慕う助手の千紗都は、同じ研究室の梶井と共に密かに調査を進めていくが、その脅迫文の発見が発端となり彼女らの周りでは次々と怪事件が起こり、とうとう連続殺人にまで発展していく。
生者と死者がない交ぜになった世界で解き明かされる真実とは。
第16回鮎川哲也賞を受賞した氏のデビュー作。
解剖の実習中に、その医学部の教授を呪詛する脅迫文がタイムカプセルの如くに体内から出てくるという衝撃の幕開け。主人公の千紗都は謎の男・梶井と共に脅迫文の謎を追いますが〝死〟に魅入られたかのような怪事件が続出。朗らかで明るい内容とはいきません。
怨念というのか妄執というのか狂気というのか。生者と死者が入り乱れるかのような凄まじい展開を迎えることに(実際に蘇ったりはしません)。
ちなみに、ヴェサリウスとは16世紀の解剖学者の名前とのこと。