『狂乱廿四孝/双蝶闇草子』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。

『狂乱廿四孝(きょうらんにじゅうしこう)/双蝶闇草子(ふたつちょうやみぞうし)』

北森 鴻、創元推理文庫、2016年





「結局わたしは、人の執念や英知を軽く見すぎていたのだろうか」




明治3年。女形として一斉を風靡するも、病で両足を失った天才役者・澤村 田之助の奇跡の復活劇に沸く歌舞伎界で、凄惨な連続殺人の火蓋が切って落とされた。この事件の鍵を握るのは、投獄中の奇才画家が描いた一枚の幽霊画なのだといが。


戯作者見習いの少女・お峯らはこの謎解きに奔走するが、下手人はお峯や師匠の河竹 新七にも牙を剥く。

被害者同士の共通点とは。すべては同一犯によるものなのか。16年前の8世市川團十郎殺害との関連は。


滅びゆく江戸情緒の残り火に翻弄される者たちの行く末を活写した『狂乱廿四孝』、その1年後、お峯が130年の時を挟んで再び事件の渦中へと巻き込まれる未完の『双蝶闇草子』の2編を収録。





第6回鮎川哲也賞受賞作。

にして、『狂乱廿四孝』は氏のデビュー作。


三代目・澤村 田之助。実在の人物ということですね。脱疽という病によって四肢を失った歌舞伎の女形の悲劇の名優。

江戸時代が幕を閉じ明治が始まりますが、その中で古き良き江戸がしだいに消えていく様と、病で足や手を失っていく田之助の悲壮がシンクロしていて…。


『双蝶闇草子』は言わば続編で、お峯と大学の卒業論文のテーマに三代目・澤村 田之助を選び、それが嵩じて彼のファンにもなってしまっている現代の大学生・早峯 水鳥(はやみね みどり)の意識がシンクロし、意思疎通を図れるようになってしまう物語。

そして明治初期と現代で共に連続殺人が勃発。お峯と水鳥がそれぞれ巻き込まれ…、しかし未完のまま北森氏はこの世を去ってしまいました。結末は分からず。けっこう面白く読んでいただけに残念でなりません。