『狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役』 | えにーの読書感想文

えにーの読書感想文

読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。



『狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役』

竹本 健治、光文社文庫、2009年



僕の脳裏にそいつの凶悪な姿がむっくりと立ちあがり、大きな翼をどこまでもひろげていくイメージがありありと浮かんだ。だけど、そこにいるのは魔物や妖怪の類ではない。そうだ、それはあくまで人間でーしかも、そんなことができるのはたった一人だ。


明峰寺学園高校の校内放送の映像で流れた女子生徒の映像。それは1年の津島 海人うみひとを糾弾する内容で、その直後に女子生徒は密室と化した室内で胸にナイフを突き立てて死んでいたのだ。しかも室内にはハウリングの大音響が響いていた。

そもそも碌に面識もない相手から何故あのような糾弾を受けたのか。そして密室の正体とは。海人の憧れの先輩・武藤 類子が〝友達〟である天才棋士・牧場 智久の知恵を借りることになり。(『騒がしい密室』)


明峰寺学園高校・演劇部の公演に、美しい王女をボウガンで暗殺する殺し屋の役で引っ張り出された海人だったが、その本番の最中にボウガンによる本物の殺人事件が発生してしまう。

その公演を見にきていた類子や智久も交えて警察の捜査が始まるが、本番中にボウガンを射ることができた人物の特定は困難。それに対する智久の推理とは。(表題作)


校庭にできたミステリーサークルの中心で、腹を裂かれて内臓を取り出されていた女子生徒の謎を巡る『遅れてきた屍体』の全3編を収録。




   



津島 海人くんは密かに女子生徒からの人気がある高校1年生。そんな彼が想いを寄せるのは剣道部のエース・武藤 類子。しかし、その類子は天才棋士の牧場 智久と仲がいい。てな具合の三角関係もあり。


ゲーム三部作当時小学生だった智久もだいぶ大人になり、落ち着きのある青年に成長しています。そして本作では安定の名探偵っぷりを披露。警察からの信頼も厚いようです。過去の経験を経て、いろいろ学んだんでしょうね。


3編とも程よい長さで謎も魅力的。智久のことを勝手に恋のライバルだと思い込んでいる海人の奮闘も微笑ましいものです。