『増加博士と目減卿』
二階堂 黎人、講談社文庫、2006年
小説家は、自分の小説を書いている最中にだけ、ありとあらゆる世界の《神》になれるー。
巨大なビア樽のような体型、赤ら顔に立派な口ひげ、黒いリボンにメガネ、黒のフェルト帽をかぶり、黒いダブダブの服を着て、その上に黒いマントを羽織った老人。その名も増加ぞうか博士。
核シェルターの密室で男を襲った前代未聞の凶器の謎、ロックがかかり内側から目張りされた車の中で殺害された男の謎、増加博士と目減めべり卿が推理の火花を散らす塔の密室殺人の謎。
作中の登場人物たちが、自分たちは推理小説の中の住人であることを知っているメタミステリーの世界で巻き起こる事件3編を収録。
増加博士は、増加=増える=ふえる=フェル博士のパロ。目減卿はそのままメリヴェール卿のこと。どちらもカーの小説に出てくる名探偵ですね。
本作はメタミステリーなので、作中の登場人物たちは自分たちが小説の登場人物であることを知っていて、なおかつこれから事件が起こるということも知っている設定です。そこら辺のユニークさというのもありますね。
とはいえ、事件は密室3連発。まあ、メタならではのギリギリなやつから本格的な密室まで、遊び心も満載な一冊です。