『ヴァンパイヤの塔』 | えにーの読書感想文

えにーの読書感想文

読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。


『ヴァンパイヤの塔』

ディクスン・カー、創元推理文庫、1998年



「ありとあらゆる形をとった悪夢。ありとあらゆる形をとった幻覚。眼のほかは微動だにしない、大きな悪魔の仮面。あの彩られた仮面に隠れている真の顔がのぞけるとしたら、なんとも恐ろしいことではなかろうか?」


降霊術において、心霊研究家を椅子に固定し周囲を手を繋いだ人々で囲んだ密室の暗闇の中で、その霊能者がナイフによって刺殺された。さらに悲鳴が聞こえた時には全員が手を繋いだ状況だったのだ。(『暗黒の一瞬』)


死者と電話をしてしまった男。泊まる者の命を奪う部屋。目を離した一瞬で背中にナイフを突き立てられた男。読んだ人間の命を奪う死の原稿。目の前で消された町。公衆電話のボックスから煙のように消えた大佐とダイヤの原石。

様々な奇怪な謎にフェル博士が立ち向かう。



   



フェル博士シリーズてすが、当時やってたラジオドラマの脚本集みたいになっていて、書き方も台本のそれとなっています。けっこう数があって、一つ一つは短いながらも、怪奇趣味というかカー的な作品だらけでしたね。


一人を取り囲んで周りでみんなが手を繋ぎ合っている暗闇の中で、真ん中の人物が殺害される。などなど。

現代では他所で見たことがあるようなトリック・シチュエーションもありますが、その当時にこれを考案するというのは、やはり格が違いますね。恐るべし、カー。