トミカからワゴンタクシーが発売されることになり、半年前に予約。先日、Amazonから届きました。
今はこの形のタクシー見ないですよね。
どうしても欲しかったのには、理由がありました。
24年くらい前。
社会人になり、学生気分から一転、色んな事が大きく変わる真っただ中にいました。僕も彼女も新宿で働いていましたが、二人とも会う時間も無いくらいに忙しくなり、仕事に忙殺される毎日でお互いの存在にかまっていられなくなり、自分たちの器も小さかったせいもあって、別れることになりました。
忙しさと無気力感の中、終電を無くした僕は、仕事場の新宿からアパートのある高円寺へトボトボと歩いて帰りました。真夏の暑い夜、無気力さとむなしさを抱えたまま、ボーっと山手通りを歩いていたら、スーッと隣にワゴンタクシーが停まって、ドアが開きました。
「乗る?」
「あ、はい。」
「どうして僕が乗るってわかったんですか?」と聞くと、「だって、どうしようもない顔して歩いていたもの。」と運転手さん。
普通の運転手さんのような制服姿ではなく、フィッシャーマンズベストを着て、頭にはベースボールキャップ、こんなに夜遅くなのにティアドロップ型のサングラスをした白髪の70代くらいの運転手さんでした。
「で、どこまで行くの?」
「あ、高円寺までお願いします。」
「了解よ。」
そう言うとゆっくりとワゴンタクシーは発進。早稲田通りの方へ無言のままタクシーは進みました。
しばらくすると、運転手さんが声を掛けてきました。
「ボーイ、何かあったの?」
後にも先にもボーイと呼ばれたのはあの時だけ。僕をボーイと呼んでいるのだと分かるまで一寸時間が掛かったのですが、直ぐに気を取り直し、話に答えました。
「あ、はい。仕事が忙しくて、それで彼女とも別れたばっかりで…。」
僕の身の上話を、「うん、うん。それで?」という感じで聞いてくれました。早稲田通りに入り、中野を越え、しばらくすると高円寺。もうすぐ僕の住むアパート。
「運転手さん、この辺で。」
「了解。」
そう言うとタクシーを路肩に停めてくれました。料金を払い、降りるとき、
「ボーイ、アナタなら大丈夫。もっともっと良い恋しなさい。」
そう言って、にっこりと笑ってくれました。
「はい!がんばります!」
降りると、そのままワゴンタクシーは阿佐ヶ谷方面に消えていきました。ちょっと風変わりなワゴンタクシーと、ちょっと風変わりなオネエ言葉のお爺ちゃん運転手さん。
それから、何度も終電を無くしてタクシーに乗りましたが、二度とあのタクシーに出会うことはありませんでした。
だから、このミニカーは、僕の宝物になるでしょう。
あの運転手さんは、もう生きてはいないかもしれません。でも、また僕が何かに落ち込んで、トボトボと夜の幹線道路を歩いていたら、スーッとあのワゴンタクシーが現れて、ドアを開けてくれるような、そんな気がするんです。
もし、あの時の運転手さんが現れたら、
「お久しぶりです!運転手さん。僕、あれから色々恋もしました。で、結局、あの時別れた彼女と十年ぶりに再会して結婚したんですよ!」
そう伝えたい。
「あら、ボーイ。良かったじゃない!」
そう言ってくれるような、そんな気がしてなりません。
僕の人生において、忘れることのできない、大切な思い出です。





