「あ。」
ではなく、
「あっ」
でもなく、
「あーっ」
でも、もちろんなかった。
強いて言うなら、
「・・ぁ」
言葉を発する間もなく両足首が交差した気がした。
何となく「(後ろから)膝カックンしたら危ないよー」と思いながら、
階段を転げ落ちた。
でんぐり返し。
どすんがすんごろん。
三回転目で歩道に転がり出て、歩いてたスーツのおっさんが凄い顔して飛び退いた。
体育座りで(そんな顔しなくてもいいじゃん)て思いながら全く知らない人だが、
「悪ぃ。」
「ごめん。」
おっさん凄く迷惑そうな顔で見下ろして「くるり」歩き出す。
いやそこは「大丈夫?」だろ。助け起こせよ。
まぁ、ぶつからなくて、巻き込まなくて良かった。
立ち上がる。
「ぱんっ。ぱん。」デニムのお尻を払う。
かっこつけて、つけられる状況ではない。
晴れた日の午後、銀座の裏通りの雑居ビルから図体の大きな男が転がり出て来た「ごろん。」と。
はぁ・・
ありゃ。
デニムの左足前側、太ももから膝下まで縦に大きく裂けてる。
「ダメージデニムなんてレベルじゃないな」
しっかし、
足を踏み外した記憶はない。スマホ見ながら降りてたわけでもない。階段を降りてたのは俺ひとりで後ろから誰かが『膝カックン』したわけではない(階段降りてる人に膝カックンは無理だと思う)。
なぜだ?
これか?
降りてる途中で何らかの理由でデニムが裂けて、突然足への抵抗が変わった? 垂れて長くなって踵に引っかかった?
んーでも、でんぐり返し中に破れたって可能性のが大きいか。
じゃなんで?
歳。
情けない。
疲労であって欲しい。
左足首、右手首にダメージ。
今日も休みで良かった。
病院行ってくっかなぁ