「トマトソースが好きなんだ・・・」
あなたは微笑みながら、そう言った。
海沿いの小さなイタリアンレストラン―――――。
初めてこの店に来た時も、迷うことなくトマト味をチョイスしたことを私は思い出していた。
そして小さく・・・クスッ・・・と笑った。
私の苦手なキノコがたっぷりとのっかったパスタを、とてもおいしそうに食べる口元とか・・・
ちょっとうつむきかげんに、チラッと私を見上げ屈託なく笑う目元とか・・・
自分の吐いたタバコの煙に、つい眉をしかめてしまう素直な眉間とか・・・
私はいつもそんなあなたを、単純に好きだと思う。
そして勝手に照れる。
あなたを前にしては、高鳴る想いを隠せない私。
目の前に広がる色のない海―――――。
冬の海はそらぞらしく、くすんで、寒々しい。
この恋がいつか終わることを、まるで知っているかのように冷たい。
この海に背を向けて・・・
ふたりの時間(とき)を少しでも長くいたいから
遠回りしながら帰った・・・トマト味の甘酸っぱい別れ際。
「また、行こう」
「うん、また・・・」
キッチンにて―――――。
プチトマトを見つめながら、私は呟いた。
「トマトソースガスキナンダ・・・」
洗いたての皮の張ったトマトを、私は口に放り込んだ。


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重ねあうその手の温もりに・・・
「どうしてそんなにあったかいの?」
「ココロがあったかいからだろっ!」
そう言ってちょっと威張ったその顔も
無邪気で好きだ・・・。