はやくねてよ | 縁茶亭茶話

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地味に地道に生活している一般人が綴る、ごくごくありふれた日常

『はやくねてよ』(あきやまただし 作)

<あらすじ>

 今夜のこうたろうくんは、なんだか眠れません。

 なんとか眠くなるように、こうたろうくんは柵を越えるぶたさんの数を数えることにしたのですが――。(続きは解説でネタバレします)


<解説>

 少し前、久々に負の思いに捕らわれて、眠れなくなってしまいました。


 どうして私は、みんなと同じようにちゃんとできないの?

 頑張っているはずなのに、一生懸命やっているつもりなのに、そう思っているのは私だけで、本当はちがうの? 足りてないの?

 足りていないなら、私はあとどれだけ頑張って一生懸命やればいいの?

 私はいつまで、このままなの――?




 とまあこんな感じで、GARNET CROW的に言えば「孤独やためらい弱気が押し寄せる夜」(『忘れ咲き』より)というのは一応私にもあるわけですが、三十路を過ぎてめっきりオバサン化している身としては、その一方でこうも思ってしまうのです。

「明日も仕事で早起きなんだから、悩んでも仕方ないことをうだうだ悩むくらいなら、とっとと寝たいんだけどな。」と。


 で、「はやくねてよ」というマインドBの台詞そのままであるこの本のことを思い出したのです。

 もちろん、内容は全然ちがうんですけどね。



 眠れない夜に数えるものとして、一番多いのは羊でしょうか。

 中にはただの羊ではなく「Sヒツジが1匹、Sヒツジが2匹…」となっている人もいるかもしれませんが(注:MSIネタです)、このお話に登場するこうたろうくんは、ぶたさんを選びます。


 なぜにぶた?と思うところですが、答えは簡単。

 身も蓋もない言い方をすれば、作者とお話の都合です。

 そして、そこがこの話の楽しいところでもあります。


 柵を越えたぶたさんは、そのまま消えてしまうことはありません。

 やがて柵の中はいっぱいになり、ぶたさんは一斉に「はやくねてくださいよー」と文句を言うのです。

 そう、「ぶーぶーぶー」と。

「ぶーぶー文句を言う」、そんな言葉の連想遊び的な要素で、柵を越えるトップバッターは羊ではなくぶたさんになったのでした。(たぶん)


 しかし、話はそこで終わりません。


 文句を言うぶたさんのうるささで失敗したこうたろうくんは、今度はおかあさんの数を数えることにします。

 しかし、柵の中いっぱいのおかあさんたちは、「はやくねなさいねー」と大合唱。

 そのコーラスが楽しくて、これまた眠くなることに失敗してしまいました。


 続いて選んだのは、かいじゅうです。

 ところが「はやくねろよー」と吠えられてしまい、こうたろうくんはやっぱり眠ることができません。


 文句を言うぶたさんと、歌うおかあさんと、吠えるかいじゅう。

 あまりのうるささに、とうとうこうたろうくんは「は・や・く・ね・て・よー」と叫びます。

 そうして、何だか疲れてしまったこうたろうくんは、そのまま眠ってしまったのでした。



 テンポ良く読めるし、「今度は何が来るんだ?」という期待感もあって、きちんとオチもついている。

 読み聞かせにはぴったりの1冊です。