『おこだでませんように』(くすのき しげのり作)
<あらすじ>
家でも学校でも、いつも怒られてばかりいる「ぼく」。
本当はちゃんと理由があるのに、言ったら余計に怒られそうで、いつもぎゅっと口を結んでそっぽを向くことしかできません。
そんな「ぼく」が、習ったばかりの平仮名で一生懸命に思いをこめて書いた願い事とは――?(続きは解説でネタバレします)
<解説>
某絵本の紹介サイトで、「大人が泣ける絵本」の一つに紹介されていたので、気になって読んでしまいました。
で、本当に涙ぐんでしまいました。
余談ですが、最初タイトルを見た時に「おこだ出ませんように」と脳内変換してしまい、「『おこだ』って何だ?? おばけか?」と数秒真剣に考えてしまったのは私です。
純粋に感動だけしたい人は、この情報は即座に記憶から抹消してください。
さて、一瞬「何のことだろう?」と首を傾げてしまうタイトルですが、これは主人公「ぼく」が七夕の短冊に書いた願い事です。
その意味は、「怒られませんように」。
絵本というのは面白いもので、文章で語られる「ぼく」の視点と、読者が描かれている絵から読み取る情報は、必ずしも同じものではありません。
読み手は絵を見て、なぜ彼が怒られているのかがわかる。
だけど、「ぼく」にはわからない。
「ぼく」には「ぼく」の理由や考えがあってやっていることなのに、周囲の大人(もちろん絵本世界の)にはそれが伝わらず、「ぼく」の行動だけを見て怒ってしまう。
その度に怒った顔をしてそっぽを向いてしまう「ぼく」が、心の中では悲しい気持ちで一杯になっているのも知らずに……。
怒られてばかりいる自分は悪い子なんじゃないかと思い悩み、周囲の大人に笑ってほしい、ほめてほしいと願う「ぼく」は、叶えてほしい一番の願い事として、七夕の短冊に「おこだでませんように」と書きました。
習ったばかりのたどたどしい字で、文章や文字を少し間違えながらも、一生懸命に書いた願い事。
それを見た先生は、「怒ってばかりだったんやね」と涙を流し、「いい願い事だね」と初めてほめてくれました。
そしてその夜、先生から電話をもらったお母さんも、笑顔でぎゅっと抱きしめてくれます。
そのうれしそうな笑顔に、読んでいるこっちも涙腺を刺激されてしまいました。
何かもう、本当に「良かったねぇ」という言葉がぴったりの、やさしいラストです。
もちろん、子どもを叱るのは必要なことです。
でも、叱られる行動の裏にある「どうして」を聞き逃してばかりいると、彼のように周囲の大人に心を閉ざし、一人で悩みを抱えこませてしまうことになるかもしれません。
そういう意味では、確かに大人にも読んでほしい一冊なのかなと思いました。
