【1月21日(金)】
0.ゆーとー嬢とすせりんと私に関するちょっとした解説
ゆーとー嬢は、大学時代の後輩だ。
厳密に言うと卒論のゼミはちがって、私は古事記や昔話を、ゆーとー嬢は平安期の歌集を専門としていた。
だから、正確に言えば、源氏物語を専門とするすせりんの方が直接の先輩に当たる。
とは言え、時代と興味が近いことから授業はほぼ重なっていて、しかも一人暮らしをしていたゆーとー嬢とすせりんの家がご近所だったことから、わりと一緒にいることが多かった。
卒業後、すせりんは名古屋へ行き、ゆーとー嬢は東京に行った。
しかし、ゆーとー嬢の実家は名古屋だったし、すせりんは年に1回は上京するし、千葉と東京は近いので、3人の交流は細々と続いていた。
今回ゆーとー嬢が結婚するにあたり、学生時代の交友関係の中から私とすせりんの二人が招かれることになった背景には、そんな歴史がある。
たぶん。
ちなみに、ゆーとー・すせりん(本来は「立花すせり」だが、私が勝手に「すせりん」と略している。古事記に登場する「オトタチバナヒメ」と「スセリヒメ」に由来)というのは普段呼んでいるあだ名ではなく、それぞれのブログで使っている名前だ。
基本的にゆーとー嬢は「○○(本名の姓)さん」、すせりんは「××(本名の名)ちゃん」と呼んでいる。
ゆーとー嬢は結婚して姓が変わってしまうが、ほぼあだ名化しているため、今後も旧姓で呼ぶことになるかもしれない。
1.注意書きに注意
名古屋で映画版『スカーレット・ピンパーネル』 を観るために、家を出たのは7時過ぎだった。
例によって慌ただしかったため、携帯電話の充電コードを忘れてきてしまったのが残念だ。
充電できないため、なうによる実況中継は諦めざるをえなかった。
とか言いつつ、それなりに投稿していたけれど。
新幹線の切符はゆーとー嬢が往復分を送ってくれたので、最寄り駅では名古屋までの往復乗車券のみを買う。
そして東京駅で、新幹線への乗換改札に2枚分の切符を投入し――
ガコン!とゲートが閉まって、私はものの見事につんのめりそうになった。
「はい、ちょっと拝見しますね~」
さわやか笑顔の駅員さんが、切符をチェック。
そして。
「ああ、この切符、乗車券も含んでいますねぇ。
東京~名古屋間の乗車券が二重になってるから、引っかかってしまったんですよ」
ヌシ、32歳にして初めて、乗車券と特急券が一枚でまとまっている切符が存在することを知る。
「特急券が別に必要となります。」とにこやかに曰う駅員さんに、私はすごすごと当日分の特急券売り場へと向かったのだった。
持ってて良かった、V○SAカード。
時間を大幅にロスしてしまった私は、慌ててホームへと向かう。
そして、今まさに発車しようとしていたのぞみに飛び込んだ。
その瞬間、ガコン!と閉まったドアに挟まれたが、何とか無事に乗車。
友人の結婚式に出席するだけなのに、なぜか今回も波瀾万丈な旅になりそうな気がした。
2.秘密
新幹線での時間は好きだ。
たいていは窓の外を流れ去っていく景色をぼんやりと眺めながら、好きな音楽を聴いている。
山側でなかったのが少し残念だが、窓際席をキープできただけでもラッキーだ。
今回もぼんやりしていると、マナーモードになっている携帯電話が振動した。
職場の支店長(縁茶的訳語)からだった。
諸事情により、内容は限定記事とさせていただく。
覚悟していたこととはいえ、いざ実際に決定事項となると、やはり涙が出た。
だが、外で泣くわけにはいかない。
それ以上溢れないように気をつけながら、私はその後もひたすらぼんやりと、窓の外を流れる景色を眺め続けていた。
3.『スカーレット・ピンパーネル』再び
名古屋からあおなみ線に乗り換え、荒古川公園駅で降りた。
映画版『スカーレット・ピンパーネル』が上映される映画館は、そのすぐ近くにある。
雪が残っていることに驚きつつ、結婚式用の靴やらカバンやらが入ったでかい荷物を持ったまま、映画館へと向かう。
時間があったので、CD付パンフレットを2部購入。
一つは保存用――ではもちろんなく、宝塚が好きな先輩へのお土産だ。
パンフレットは、思っていたよりも内容が充実していなかったのが残念だが、CDには「ひとかけらの勇気」の他に「君こそ我が家」が収録されていてうれしかった。
ただし、一番最後のリプライズ版だったため、曲自体が短かったのが残念だ。
気が緩むと涙腺も緩みそうな気分で入った映画館だったが、やっぱり『スカーレット・ピンパーネル』はおもしろかった。
私が観たときやDVDとはちがい、映画版では、敵役であるショーヴランが明日海りおさん、義理の弟であるアルマンが龍真咲さんとなっている。
ホワイト系のイメージが強い明日海だが、敵役もはまっていてかっこよかった。逆に、ちょっとイッちゃった系のイメージが強い龍さんも、穏やかな弟役に違和感がなかった。
内容的にも、ご夫婦ハッピーエンドものなので、結婚式前日に観ても差し支えない。
少なくとも、不倫と男女仲の崩壊を描いた『アンナ・カレーニナ』や『トラファルガー』だったら、ちょっとどころじゃなくごめんなさいという気がする。
ちなみに、一番気になっていたアドリブのファッションアドバイスのコーナーはと言えば。
「右が青、左が赤、真ん中が白という上着を着て、みんなから『三色旗だ、三色旗を着ている…!』と言われるのはどうだろう?」
「けっこう!」
「なんだ~、そうしたらせっかく『シシィ♪』って呼んでやろうと思ったのにぃ」
……『エリザベート』ネタ……!!
エーヤン、フランツ・ヨーゼフ!です、霧矢さん。
※あまりにマニアックすぎるので注:
ミュージカル『エリザベート』で、夫である皇帝フランツ・ヨーゼフと共にハンガリーを訪れたエリザベート(通称シシィ)は、ハンガリーの三色旗(緑、白、赤)をモチーフとしたドレスを着て民衆の前に立ち、「エーヤン、エリザベート!(エリザベート万歳)と人びとからの喝采を浴びます。
月組公演 では、当時のトップスターである瀬奈じゅんさんがトートを務め、エリザベートには本来宙組の男役である凪七瑠海さん、そしてフランツ・ヨーゼフが霧矢大夢さん、皇太子ルドルフが明日海りおさん、皇后暗殺犯ルキーニが龍真咲さんだったのでした。
4.金色の鯱を横目に眺めて
特に観光したい場所もなかったし、たまにはゆっくり本でも読みたいと思ったので、映画を観た後は早々にホテルにチェックインすることにした。
これまたゆーとー嬢のご厚意により、この日の宿は、式が行われるホテルのシングルを取ってもらっている。
地下鉄の駅からも近かったが、名古屋駅から無料のシャトルバスが出ているということだったので、それに乗ることにした。
が、駅の出口付近にあるはずの乗り場がなかなか見つからず、大荷物を持ったままかなり彷徨う羽目になったのは、ちょっとしたお約束である。
「名古屋城の近くですよ~」という前情報はあったが、実際のホテルは近いどころか隣だった。
歩いて行けない距離ではなかったが、過去に3回ほど行ったことがあるので、今回はホテルに留まることにする。
余談だが、「愛・地球博」と同じ年に行われた「名古屋城博」で、名古屋城のシンボルである金の鯱に触った――というのは、ちょっとした自慢だ。
確か、改修工事のために天守閣から下ろされて、そのまま「金の鯱に触ってみよう」という企画になっていたんだと思う。
触ったのがどちらの鯱だったか、忘れてしまったのがちょっと悔しい。
ホテルでしばしくつろいでから、すせりんと食事をするために再び外出する。
すると、ちょうど到着したらしいゆーとー嬢と遭遇。
愛知人のゆーとー嬢は、最後の夜は家族と実家で過ごすとばかり思っていたので、非常に驚いた。
もっとも、明日の主役は芸能人のごとくにホテルの人たちに囲まれていたため、お互いに「あ。」という感じですれ違うだけだった。
とりあえず「すせりんとご飯食べてくるね~」とだけ言い残し、私は夕暮れ時の栄へと向かったのだった。(続く)