ついこの間の話なんだけどね。
ほら、あそこの大きい部屋(縁茶的訳語)があるでしょう?
夜遅くまで仕事をしていた先輩が、帰る時にその部屋の前を通りかかったら、ほんの少し戸が開いていて、うっすらと明かりが漏れていたんだって。
消し忘れたのかな、ってその部屋に入ってみたら、明かりなんて点いていなくて。
その代わり、部屋の真ん中がぼぅっと光ってて。
よくよく見たら、その光の中に、女の人が立っていたんだって。
目を閉じて、思いをこめるようにヴァイオリンを弾いていてねぇ。
でも、その人の体は半分透きとおっていて。
えっ、と思った時には、もう消えていたんだって……。
――ってな話を、昨日プロジェクトXYZ-typeS(縁茶的訳語)関係の小学1~2年生に大まじめに語ったら、本気で怖がられてしまいました。
うん、まあねぇ……昔していた仕事で「耳なし芳一」を語ったら、芳一が耳を取られる場面で、聴き手の半数近くが耳を押さえたという過去を持つ女だからな。
しかも、その仕事を辞めた時の送別の言葉が、「○○さん(本名)の語ってくれた『耳なし芳一』は、本当に怖かったです。」だったからな。
え、何? 私の思い出は「耳なし芳一」? それちょっと悲しいから、語りが上手かったってことにしておいていい?みたいな。
ちなみに薄々お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、冒頭の「ヴァイオリンを弾く女性」目撃談は、思いっきりフィクションです。
わかってる。
オリジナリティが著しく欠如してるって、自覚してるよ。
でも、ちょっと騒いじゃってる子どもたちを静かにさせたかったのだけど、私のアドリブ力ではこの程度のベタな話が精一杯だったのよね……。
「泣ぐ子はいねえがぁ。言うごど聞がねぇ悪ぃ子は、……(『コン○ルゾンビが喰っちまうぞ~』←心の中で続けた言葉。元ネタはMix Speaker's,Inc.のミニアルバム『ANIMAL ZOMBIES』の「Mix Theater~ANIMAL ver.~」より)」では効果無かったし。
しかし、です。
「子どもは怖いもの、不気味なものが大好きなんです!」と戌井さん(『ゲゲゲの女房』の登場人物)が力説したとおり、怖がりながらも好奇心を失わないのが子どもという生き物です。
「私、見てくる~!」と、一人の女の子がすっ飛んで行ってしまいました。
数秒後。
「怖いぃぃぃっっっっっ!!!!!」と言いながら戻ってきたその子が仰るには。
「あのねあのね、部屋の真ん中でね、ぼぅっと光る玉の中に女の人がいてね、ヴァイオリン弾いてた……」
「それ○○さんの話そのまんまじゃん!」
すかさずツッコミを入れる、彼女の友達2名。
っていうかそれ私の創作だし、と、私も内心でツッコミ。
――さらに数秒後。
何故か小学生の女の子3名を後ろに従えた(しかも一人は腰にしがみつき、その子の腰にも別の子が……という電車ごっこ状態)私は、先頭に立ってその部屋へと足を踏み入れていました。
仕事中? うん、そうなんだよね、本当は。
こういうところで油を売っていたから、勤務時間内に仕事を終えることができず残業する羽目となり、ひいてはこの日のaqbiライブに行けなかった――というわけではありません、念のため。
それはさておき、私の職業を知る数名の方ならある程度想像できるかもしれませんが、その「部屋」とは本当にだだっ広く、明かりがついていなければ、昼間でも本気で不気味です。
「○○さん、何かいるー?」
「……いや、何もいないと思うけど……私、霊感ないからなぁ。そういう人のところには、霊が近寄ってこないっていうし……」
不可思議現象が起こらないのはそのせいだ、と子どもの夢(?)を壊さないように配慮しつつ、私はさらに奥へ。
――そして、不自然に停止。
「……あれ?」
「何何何ー!?」
「……いや、あれ何かなって……」
「えええーっ!?」
声を上げる女の子たちには敢えて答えず、私はしばし沈黙し――
「――うーん、やっぱりわかんないや。何かいたような気もしたんだけど、気のせいじゃないかな」
なんせ私霊感ないから霊も寄ってこないし、とフォローしつつ、この日の探検は終了したのでした。
こんな大人でもいいですか?