ゴミ箱、どこに行きました? | 夕焼け空

夕焼け空

「もう帰るわ」
「どこに帰るん?」
「家に決まってるやん。はよ帰らんとお母ちゃんが心配しはる」「そっかぁ。ほんなら夕焼け見ながら一緒に帰りましょね♪」

「夕焼け空」はkorieが経験した「あたたくて面白い?介護のお話」です。

※お名前は全て仮名です。

 

働きだして間もない

まだ 認知症のことをうわべだけしか知らなかった時の

摩訶不思議な出来事です。

 

お迎えが終わって皆さまが揃った頃

 

よしこさんが 私に質問をされました。

 

 

「ちょっと!ここにあったゴミ箱どこいきました?」

 

 

え? ゴ、ゴミ箱ですか?

 

 

「ここにありましたやん、四角いやつが」

 

 

え、えっと??

 

 

私がまごまごしていると

よしこさんは隣席のきみさんにこう言いました。

 

 

「ありましたよね!」

 

 

「へ? そんなんありましたか?」

 

と きみさんもビックリ。

 

そして

「ゴミ箱なんてなかった」

とキッパリ。

 

 

しかし、よしこさんは

よしこさんときみさんのお席の間に

小さな四角いゴミ箱があったと言う。

今までもずっとあったと。

 

 

私が 

あったかしらね、

あったかもですね、

どうでしたっけ?

 

 

と ますます まごまごしていると

 

 

よしこさんは

そのゴミ箱をとても便利にしていて

今日も紙くずを捨てたのに
知らない間になくなってしまって困ってます と

 

とても流暢に熱く語られ

 

 

 

そして

 

 

 

きみさんがこう言いました。

 

 

 

「ほんまや!朝はここにゴミ箱あったのに 今はあらへんで!」

 

 

 

ええええぇ~~~~っ!?

 

 

 

「あんたがどこか持って行ったん違う?」

 

「どこに持って行ったん?」

 

「一緒に探しに行こうか?」

 

 

 

な、なんと ほぼ全員の皆様が

ここにゴミ箱があったと仰るように!

 

 

 

もちろん、ゴミ箱など最初から存在していませんが

 

まるで 集団催眠にかかったかのように

皆さまが  私に

 

ゴミ箱は どこに行ったの?  

 

と。

 

 

 

そ、そうですね。

スタッフが どこかに持って行って忘れたのかもですね。

ごめんなさいね。

あとで、所長さんに聞いておきますね。

 

 

と、ひとまず まとめて(?)

 

 

もうすぐ 体操の時間なので
お手洗いに行っておきたい方はおられませんかぁ~~?

 

と、場面を替えました。(汗)

 

 

その後は

よしこさんもどなたも ゴミ箱のことは仰らず

 

昼食を召し上がって

ゲームをして

歌をうたって

おやつを食べて

 

いつも通り。

 

 

午前中の ゴミ箱騒動は何だったんだろうというくらい

穏やかな一日。

 

あぁ 今日も なんとか 無事に 一日を終えられて

良き良き~~ と 思っていたら

 

 

最終送迎の きみさんが

玄関で 靴を履き 私を見て ひと言。

 

 

 

 

「ほんまに ゴミ箱 どこ行ったんやろなぁ?」

 

 

 

 

おぉぉぉぉ ~~~~ぉお 。

 

 

 

 

 Korie♪