心学「先に立つ」

 

人間、先にやりたがる人は少なくはない。先にやる、先に立つ、先に得る、先に並ぶ、先に進む。確かに「先んずれば人を制す」と云う言葉もある。しかし、先に立とうする人間ほど後ろが見えていない。

 

「道理の徳」は先に立ち、先に得ることを避け、気がついたら「先の立場」「先に得ていた」になっていることが多い。先を考えず、今「為すべきことを成す」ことを行えば、自然と周囲の人間は後押しをして、先に押し出されるものである。

 

「先に」と思う心は周囲の人間から嫌われ、後ろから引っ張られることが多い。先にいることが邪魔の存在になっていることに気がつかない。その点、慎み深く謙虚な人間は安心感を与え、周囲の人間に信頼され、先に立つようになる。

 

出口や入口でも先に出入りした人間は誰からも感謝されないが、「お先にどうぞ」と言われ、自分が先に出た時には、「ありがとうございます。」と言う場合が多いはず。日常に見られる「お先にどうぞ」と云う譲り合う心である。これが常の修養としての見本。

 

*心学道場「恕庵」 謙虚な心を修養する