仁とは一切を包容する分け隔てない心である。


仁であってはじめて是を是とし、非を非とできる。
 

ただし、是非どちらであろうがその根本は包容である。
 

是を是とし、非を非とした上で全てを受け入れて包容するのである。
 

これは単に全てを許すこととは大きく異なる。
 

受け入れるというのは自分が非と判断したものを単に許すということではない。
 

非とするからにはその対象を変えずにはいられないのは当然のことである。
 

受け入れるからこそ自分が非とするものと徹底的に戦うことができる。
 

この是非が明らかになってはじめて人に進歩向上がなる。
 

大学には「唯仁人のみ能く人を愛し、能く人を悪むと為す」とあり、
 

孔子は「己に克ち、礼に復るを仁と為す」という。
 

儒教における修身は仁によって成る。
 

王陽明の提唱する良知もまた仁である。
 

医は仁術の仁もこの仁をいう。