篭城発覚から1週間ほど、社長とコンサルタント社長は、材料集め

をしたそうです。


まず、I の住んでる所。履歴書の住所から、googleマップで

確認したところ、マンションであることがわかりました。

しかし履歴書の住所には部屋番号が書いてなかったそうです。


次に、履歴書の電話番号に電話してみました。

子供の女の子が、「 I です」と、出たそうです。


娘が居るのは、話に聞いてましたが、ホントだったとは。
ちょっと複雑です。子供には罪はありませんし。


西新井で購入した営業車が、行方不明になってました。
興信所をつかって3日間、30万円で I の行動を調べたところ。
車は、本来の駐車場の割と近くのコインパーキングに駐車していた

そうです。


マンションの部屋番号もわかりました。洗濯物を干す、I の奥さん

らしき人の写真もあったそうで、3日間の行動が動画で撮影されて

いたそうです。


専務は、「隠し事はできませんね」と、浮気がバレた旦那さんのような、

微妙な感想を言ってました。


これらの材料と、北海道の前回 I の餌食になった会社の社長と

連絡を取った事を I に告げると、さすがに動揺したようすで、

交渉に応じたそうです。


平成25年8月26日の早朝3時、私は目を覚ましました。


私は、思ったのです。あの、壊したサッシの修理費は、

本当に払われているのか。
後から請求が来るのではないだろうか。
私は、珍しくメモを書いて、忘れずに社長に言ってみる事にしました。

午前7時、いつものように会社に行くと入り口で専務と会いました。


「やー!元気?」


「ご無沙汰です。」


思ったよりは、元気そうでした。そしてその後ろには。


「初めまして」


社長の娘さんであるところの、専務の奥様でした。
2階の事務所に上がり、専務と話をしていると。


「西新井で、ICレコーダを3台買っています」


専務は、西新井の金の入出金を調べていたようでした。

私は、ドキッとしまいた。やはり本社の中に運び屋がいたんだ!と。

私は、3階の社長の所に行きました。


「社長、私思ったのですが、あのサッシを修理しにした業者は、知ってる人ですか?」


「知らない、I が手配してた」


「ここの会社の名前で手配してたら、後で請求が来るのではないでしょうか?」


「ほんとだ!そうかもしれない!弁護士先生にメールする!」


社長は、メールを打ち始めました。


「あと、専務に聞いたのですが、西新井でICレコーダ買ってたそうですね、しかも3台」


「そうなんだよ、そんなに必要かな?」


「ま~、商談とかで必要かも知れませんが、3台は要らないでしょうね~。」


たぶん、I が1台。本社に2台、交互に置いてたのかもしれません。
さりげなく、社内を調べてみましたが、ICレコーダは見つかりませんでした。


平成25年8月26日月曜日。

いつものように本社には、2人の社員が出社してきました。


勤続10年の事務方の長、社長と同じ年と聞きました。女性。
大学のバイトから社員になった営業の男性。既婚。子供あり。

専務より少し年上。

パートの30台前半の、女性は今日もお休みでした。


この中に、運び屋がいる。かもしれない。私は、信じられない気持ちでした。
そんな人たちを残して、私と社長は西新井に向かったのです。


西新井の駅の中にある喫茶店で、社長と2人コーヒー飲みながら

打ち合わせ。


そこに社長の娘さん。社長の親戚の方、経営コンサルタントの先生。

そして弁護士先生が2名。


専務は、居ませんでした。やはり、もう西新井のメンバーには

会いたくないのでしょう。


そろったところで、午前11時。私達は、国税局の査察官の様に

西新井事務所に向かいました。


入り口の近くでこちらに気が付いた I は、腕組みをして右足体重で、

こちらを一瞥し、奥に行きました。
パーテイションで囲われた事務所エリアには、西新井のメンバーが

居ました。
本社サイドと西新井サイド、野球やサッカーの試合開始前のように、

一列に並び対面しています。


あの人が居ない。


以前に私の仕事のサポートをしてくれていたシングルマザーで、 I の右腕に

なってしまった女性が居ませんでした。


話では、ちょっと用事で出ていて、すぐ戻る。とのことでした。

本社サイドから社長と弁護士先生が、今日ここに来た趣旨と明日の予定

を告げました。


平成25年8月27日火曜日。この日をもってここに居る人たちに

解雇通知書と、月給+ひと月分の給与を渡します。

と、言った感じの内容でした。すると I が。


「有給と代休分も入ってるでしょうか?」


とか、言い出しました。


「4月から代休みを取ってませんでしたので」


とか言って、資料を出してきました。
社長は、困惑した顔で受け取り、持ち帰って検討すると告げました。

私は、西新井で買った営業車を確保し、持ち出された書類関係を

その車に乗せ、本社に戻りました。


本社では、明日の話をしていました。


「しかし、今になって有給とか代休とか、よく言うよな~!」


社長は少し興奮気味にいってました。
しかし、有給はある程度勤めないともらえないことくらい、

私でも知ってます。
ICレコーダをアスクルで買ったり、駐車場の位置をちょっとかえたり、

住所の末尾を隠したり。

意外と、雑だな。すぐに足が付くことばかりだ。

私は、そんな感想を持っていました。


「明日が、山場です!よろしくお願いします!」


と、社長は言いました。

おそらく、一番最後に I と直接対決になり、金を渡さない事を告げ

られた I が、どう反応するか。


「明日も、一緒に行ってくれ、人数は多いほうがいい。」


どうやら、俺は武闘派要員だったらしかった。


北から来た男⑧