■あらすじ
製薬会社フィンザーでSNSマーケティングを担当するアリスは、不倫相手の同僚との密会後、夫の元へと深夜に家路を急いでいた。道中人里離れたガソリンスタンドに立ち寄ったが店内に従業員の姿はない。仕方なく店を出ようとしたその時、突然どこからか銃弾が飛んできて腕を負傷、スマートフォンも撃ち壊されてしまう。彼女が戻らないのを心配し、店内に入ってきた不倫相手も背後からの狙撃の餌食となり死亡。唯一の外との通信手段となるトランシーバーで、応答した男に助けを求めだが、その男こそが自分の命を弄ぶスナイパーだと分かり、窮地に追い込まれパニックに陥るアリス。なぜ彼女は狙われるのか…?助けを呼ぶ手段もない、逃げ場もない絶体絶命の状況の中、目的の分からない残虐無比なスナイパーとの悪夢のような一夜が幕を開ける…。(公式サイトより)
■ネタバレ
*深夜、アリスは同僚ジョンの運転で帰路に就く。彼女は不妊治療中で夫も協力的だが、ジョンは不倫相手でもある。前日に給油しておいた筈がガス欠間近になり、2人は最寄りのガソリンスタンドへ。アリスは併設のストアに入り、ジョンはセルフ給油する。スタンドの向かいの山の斜面には[GODISNOWHERE]という大きな看板が掲げられている。
*アリスはコーヒーやガムを買おうとするが、店内には店員の姿がない。ドアから一歩踏み出して周囲を見回しても、自分と連れ以外には誰も居ない。已む無くレジカウンターに紙幣を置いて、店を出ることにする。カウンターの奥の壁には[神よ勇気を与えたまえ]と書かれたボードが掛けられていて、それが赤く汚れている。
*自動ドアを通り抜けようとした時、狙撃されるアリス。弾が左腕を抉り、痛みで悶絶して呻く。その後も発砲が続き、身動きもままならない。給油を済ませて車の中で待っているジョンは、この事態に気付いていない。大声で名前を呼んでみても無反応だ。
*アリスは肩付近を縛って止血。そして被弾した際に手にしており、衝撃で床に放り出してしまった携帯電話を掴もうとする。彼女の位置からは例の看板が見える。狙撃者は看板付近に居るようで、アリスが腕を伸ばすと的確に携帯電話を打ち抜いて破壊する。
*監視カメラのモニタが目に入り、店の奥に非常口があることに気付くアリス。しかし蹲っている位置からは目視出来ず、ドアの方へ移動すれば狙撃犯からは丸見えになる。
*その時、レジカウンターに置かれたトランシーバーから男性の声が聞こえる。『アメリア、聞こえてるんだろ?応答せよ、どうぞ』声の主と話が出来れば通報してもらえるかもしれない。商品棚の品物を頭上に放り投げ、狙撃者の視線を逸らしながら必死に無線機を掴む。(狙撃者は品物を正確に撃ち抜く。)一方、給油したばかりなのに再び燃料残量の警告灯が灯り、ジョンはガソリンが漏れていることに気付く。
*無線機に向かって必死に窮状を訴える。「私はアリス・ジャーメイン・バックよ、警察を呼んで。撃たれたの」相手がその内容を咀嚼する前に、ジョンが入店。燃料漏れについて伝えに来たのだろう。しかしこちらの状況は更に悪い。ドアから見えない位置に隠れて無線機を抱えていたアリスが気付いた時には、ジョンは首を撃たれて倒れこんでいた。助けを求められるがどうすることも出来ず、ジョンは息絶える。
*無線機の男に「友人が撃たれた」と訴えて通報してもらう。15分程で警察が到着するようで、アリスは安堵する。通話相手の男はストアの店員アメリアの夫らしい。彼に問われて「撃たれたのは同僚のジョンで、コンベンションの帰路だった」と話す。『救急車を呼ぶか?』「息がないわ」『そうか…頭を撃ったからな』通話の相手こそ狙撃者だったのだ。
*「何が望みなの?」『さあ、何だろうな』狙撃者はガソリンスタンドへの接近を仄めかす。アリスは相手から見え難くするため、ブレーカーを落とそうと考える。立ち上がると狙撃されるので、商品を掴んではスイッチへと放り投げるが上手くいかない。商品棚に寄り掛かっていると僅かに動いたため、キャスター付だと気付く。ロックを外して棚を動かしながら、その陰に隠れて移動。スイッチを落として、漸く店内を暗くすることに成功する。
*ブレーカーはレジカウンター内の壁にあり、アリスはそのままカウンター裏に座り込む。するとそこで女性の遺体を発見。これがアメリアだろうか。狙撃者は『妻に浮気された』と話す。『原因はDVか?金で苦労させた?退屈だっただけさ。君はどうだ?』狙撃者は、アリスの浮気について知っているかのように話す。
*カウンターの中には電話機があるが、電話線は切られている。火災報知器も作動しない。一方で店内が暗くなったので幾らか移動がし易くなり、車のキーでセキュリティアラームを鳴らしてみる。しかし手際良く狙撃され、間もなく車は沈黙。通り掛かった車も、何も気付かずに通過してしまう。無線機からは狙撃手の声が聞こえ、彼女を非難し煽る。
*腕からの出血が続いており、アリスは接着剤で傷口を接合。ペットボトルの水で痛み止めを呷る。その時、1台の車がやって来て男が店内へ。暗い店内に向かって「アメリア?どうしたんだ?」と呼び掛ける男に、アリスが「伏せて、撃たれるわ」と警告する。狼狽える男を宥めつつ通報するよう促すが、男は携帯電話を車内に置いたままだった。落胆するアリス。
*男は夜勤で配達業務をしていて、その合間にいつも店に立ち寄るのだと言う。この店はアメリアの親が購入したもの。裏口はガレージへのドアで、夜間は開かない。アメリアの夫だと言う狙撃者は嘘を吐いている。そんな会話の中で、配達員の来店以降発砲が止んだことに気付くアリス。彼を警戒して、商品棚のハンマーを掴む。疑われた男は「トランシーバーで狙撃者と話せ。俺が通報したと言ってみろ」と促す。
*アリスが無線機に話し掛けても反応がなく、配達員に対する疑念が強くなる。彼は「もう犯人は立ち去ったのかもしれない」「数時間すればトラックの連中が来る」と言い募るが、アリスは「車へスマホを取りに戻るべきよ」と主張。狙撃者に対する目くらましとして、アリスが暗い店内で懐中電灯を揺らす。配達員は車まで辿り着くが、携帯電話に手を伸ばした瞬間に狙撃される。狙撃者と配達員は別人だった。また1人になるアリス。
*『彼は自分を犠牲にした、君とは違って』無線機の声が復活する。アリスがフィンザー製薬勤務であることを言い当て、ワクチンに対する私見を述べる狙撃者。アリスは狙撃者の言葉を聞き流しながら、店内にあるゴルフ傘に着目。開いて窓際に幾つも並べて、外からの目隠しにする。狙い通りに店内での自由度が高くなり、アリスは裏口のドアへ。しかし大きなシリンダー錠が掛けられていて、配達員の話の通り開きそうにもない。消火器を掴んで錠前に叩き付けてみても、状況は変わらない。
*やがて、また1台の車がガソリンスタンドへ。給油しようとする男に対して、アリスは店内から無事を祈ることしか出来ない。結局カードが使用出来ず、悪態を吐きながら男は走り去る。狙撃者の気紛れなのか見逃され、男は無傷で、ガソリンスタンドの異変にも気付かない。
*狙撃手は無差別な悪人ではないのかもしれない。アリスは同情を誘えないかと自分の状況や心情を吐露するが、会話は嚙み合わず、相容れないまま終わる。
*次に警察車両が接近。アリスは期待を抱くが、パトカーは別の現場へ向かっているのだろう、そのまま走り去ってしまう。
*アリスは狙撃者の隙を突いて外へ。自分達が乗っていた車まで接近するが、結局狙撃者に見付かり乱射される。慌てて店の出入口へと駆け戻るも、腕に次いで足も撃たれる。彼女は絶叫し、床を這い進み、やがて気絶する。
*意識を取り戻すと、アリスは救急バッグとダクトテープで足の傷の手当てをする。そしてノコギリの替え刃で、裏口のシリンダー錠を破壊しようとする。しかし柄のない状態では簡単にはいかず、手を怪我してしまう。
*カウンター内で[ヘンリーの私物]と書かれた箱を見付けていたアリスは「あなたは失業したの?ヘンリー」とトランシーバーに向かって問い掛ける。箱の中にはジャン・ラスパイユの著書『聖人のキャンプ』や、銃を手にした男の写真が入っており、狙撃手の人物像と重なる気がしたのだ。しかし本心からなのかはぐらかしているのか、男の反応は薄く『ヘンリーって誰だ?』と返してくる。
*ガソリンスタンドに、また車がやってくる。乗っているのは老夫婦だ。給油中に配達員の遺体に気付いた夫が先ず撃たれ、次いで駆け寄った妻が撃たれる。最期の力を振り絞り、妻の手を握ろうとする夫。それを阻止するため、夫は更に狙撃者に撃たれる。
*車には2人の孫娘も乗っている。それに気付いたアリスは慌てて、身振り手振りで[伏せて]と伝える。しかしジェスチャーだけでは限界があり、少女は車を降りて祖父母に縋り付く。アリスはキッチンペーパーにサインペンで[車へ戻って]とメッセージを書き、窓ガラスに張り付く。少女は素直に車の中へ。
*狙撃者も少女の姿を見た筈だ。「あの子は撃たないで」と懇願すると、相手は『君が姿を見せたら、あの子を逃がす』と条件を出す。アリスは今度は[道路へ逃げて]とメッセージを掲げる。今度も少女は素直に駆け出すが、ガソリンスタンドに背を向けると目の前は漆黒の闇だ。暫し立ち尽くし、やがてアリスに駆け寄る少女。
*看板の前で、狙撃手が立ち上がるのが見える。アリスは少女を連れて、足を引き摺りながら裏口へ移動。手の怪我で中断していた、シリンダー錠の切断を再開する。懸命な作業の結果ドアが開き、2人はガレージ内へ。しかしシャッターを開けることが出来ず、アリスはひとまず少女を物陰に隠れさせる。そして自分は再び店内へ戻る。
*狙撃者が店内に入る。男はフードと目出し帽を被っている。「アリス、どう思う?俺は旦那の手先か?或いは君の策略で蹴落とされ、クビになった元同僚か?それとも差別主義者か不遇分子の憂さ晴らしか?単なる暴力的な無差別事件で、君は偶然居合わせたのか?」
*身を隠していたアリスが男に襲い掛かる。ガレージで見付けた刃物で脇腹を刺し、屈んだところで背中を刺す。男は呻きながらも肘打ちで反撃、転倒するアリス。彼女は床に転がっていた消化器での打撃を狙うがその攻撃は甘く、突き飛ばされて傷が増える。頭部に銃口を突き付けられ、咄嗟に目出し帽を剥ぎ取ろうとすると、僅かに男の攻撃が乱れる。
*揉み合いになるが銃声が響き、アリスが倒れ込む。男がガレージに入り、シャッターを開ける。暗かったガレージに僅かながら光が差し、男が隠れている少女を発見。少女に接近し、男が「もう怖くないよ」と話し掛ける。そしてフードを脱ぎ、目出し帽を取ろうとした時、アリスが消化器で男を殴打。今度の攻撃は有効で、男は再起不能だ。プレス機を起動して、男の身体を引き摺るアリス。最後に彼女が再び目出し帽を剥ぎ取ろうとすると、男は必死に抵抗して、顔を見せないままプレス機に潰される。
*アリスは遂に男を倒し少女を守ったが、腹部を撃たれており間もなく絶命。目撃した惨劇に怯える少女。しかしその頃には夜が明けており、少女は1人で道へと駆け出して行く。
■雑感・メモ等
*映画『ハンテッド 狩られる夜』
*レンタルにて鑑賞
*アレクサンドル・アジャ製作、フランク・カルフン監督のバイオレンススリラー
*スペイン映画『シャドウ・スナイパー』のリメイク。オリジナルは未見。
*会話の中に、差別・DV・ハラスメント・ジェンダー・反ワクチン・陰謀論者といった話題が盛り込まれる。そこが肝かもしれないけど、然程面白くないし面倒なのでネタバレでは割愛。テンポを阻害しているように感じたので、せめてもう少し内容が絞り込まれていれば良かったかな。
*犯人については正体不明。序盤に夫とのビデオ通話中に「何処から掛けてるの?」『え?家だよ』てな会話があって些か夫が疑わしかったり(流石に夫が実行犯なら気付くだろうけど、取り敢えず在宅ではないのかも)、アメリアの名前を知っていて終盤ではガレージのシャッターを難なく開けていたので(根拠としては弱めだけど)やっぱり店員かもしれなかったり?誰が犯人であれ、車に細工していたとしても(給油して直ぐに残量警告が出ていたくらいなので)あのスタンドに2人が辿り着けるかどうかは分からないよね。狙撃者はアリスについて詳しいけど、待ち伏せは難しいのでは。2人が到着後に発砲が始まるなら尾行していたのかもしれないけど、アメリアが先に死亡していて電話線も切られてる。
*最終的に狙撃者と相対する時にアリスが武器にする物がよく分からないんだけど、伸縮する長柄鋸みたいな感じだろか。
*少女があんな場所で1人になるラストは割と心配。あらすじにも「人里離れた」て書いてある訳なので。