■あらすじ
静かな田舎へキャンプにやってきたサムとイアンのカップル。結婚の約束も交わし順風満帆、幸せな休暇になるはずだった。しかしふと気づくと隣のテントの様子がおかしい。荷物はそのままに人影は見当たらず、夜が明けても誰も戻ってくる気配すらないのだ。不審に思った二人が森を散策すると、信じられないことに赤ん坊が倒れているのを発見する。衰弱しているもののまだ息はある。「助けを呼ばなければ」そう思った二人の前に地元のハンターが現れる。親切にも赤ん坊の家族探しを手伝ってくれるというのだが、ほどなくして二人は想像もしなかった驚愕の事実を知ることになる。それは死ぬよりも辛い、悪夢のような一日の幕開けだった。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*クリスマスを数日過ぎた頃、エムは家族でキャンプに来ていた。両親と赤ん坊のオーリーが一緒だ。ガンジリー滝までは徒歩で20分か、それ以上は掛かる場所にテントを張っている。昔その滝では銃で脅され連行された先住民が、畑目当ての開拓者に虐殺された。ガンジリーには[泣く]と言う意味がある。
*夜には父がギターを弾くが、エムは「サイモン&ガーファンクル以外」をリクエストする。「好きだと思ってたのに」「5歳の時はね」「『コンドルは飛んで行く』も駄目か?じゃあ季節に合うこの曲は?」クリスマスはもう過ぎてしまったが、父は『Silent night』を弾く。
*翌朝、父と母はオーリーを連れて滝へ向かう。昨晩は悪夢に魘され、虐殺の話で気持ちも乗らないエムは1人でテントに残る事にする。森からの物音に落ち着かず、不安を感じたエムは車に戻って眠る。そこへ近隣に住む前科者のジャーマンとチョークがやって来る。眠るエムを見付けて「森の中へ連れ込んで犯せ」とチョークに言うジャーマン。「それで捕まったんだろ?」「もう失敗しない、チャンスは掴め」
*ジャーマンが車からは少し離れているテントの様子を確認に行っている間に、エムが目を覚ます。チョークに驚き怯え、「出て来いよ」と促されるとクラクションを鳴らす。その音が届いて駆け戻ったジャーマンが、エムに銃を向ける。「降りて来い、降りなきゃお前の頭を撃ち抜く」と脅され、已む無くエムは車の外へ。そこへ同じくクラクションの音を聞いた父が単身駆け付けるが、丸腰ではどうにもならない。
*殴られ地面に転がる父。母はオーリーをテントに置いて、身を挺してエムを逃がそうとするが失敗する。3人は後ろ手に縛られ、口をダクトテープで塞がれる。ジャーマンとチョークは酒を持ち、銃口を向けて3人を滝まで歩かせる。一家の車の鍵を投げ捨てるジャーマン。エムの携帯電話に保存された画像で他にも赤ん坊が居た事が分かるが、所在は分からない。
*滝に到着すると父は木に固定され、母とエムは犯される。「またやるか?」と訊かれて「やらない」と答えるチョーク。「それなら銃を持て。お楽しみだ」ジャーマンは父の頭に空き缶を乗せて、チョークに撃たせようとする。最初は嫌がっていたチョークだが、父が身動ぎして缶が落ち、苛立って頭を撃ち抜く。
*続けて母の頭に缶が乗せられ、チョークは缶を撃ち、ジャーマンは母の胸を撃つ。次にジャーマンは、地面に裸で横たわるエムの頭を撃つ。2人は一家の死体をそのまま放置して立ち去る。テントを確認するが、オーリーは1人で歩いて外へ出てしまい見当たらない。
*大晦日、キャンプへ向かう医師イアンとサマンサのカップル。サムの買物中に、犬のバンジョーを連れたジャーマンにガンジリー滝への道について尋ねるイアン。滝へは四輪駆動車でなければ難しいが、上流のストーニー・クリークへ行くなら道も舗装されていて問題ないと教えてもらう。
*辿り着いたストーニー・クリークには先客が居て、車が停められ大きめのテントが張られている。イアンは静かなキャンプを望んでいるが、サムが場所を気に入ったためにそこにテントを張る事にする。テントを張り終わる頃にはサムからイアンにプロポーズして、イアンはそれを快諾。
*幸せな2人だが、誰かにこのニュースを伝えようにも携帯電話は圏外だ。夜にはサムが動物ではない何かの気配を感じるが、それが何かは分からない。隣のテントに昼間から全く人影がないのも気掛かりだ。もう時刻は23時を回っている。
*その頃、ジャーマンとチョークはパブで酒を飲んでいた。チョークの持つ携帯電話を見咎めるジャーマン。それは元々エムの物で、殺害前に撮影した彼女の画像も保存されている。トイレでアームストロング巡査と会話を交わした後、2人だけになるとジャーマンは携帯を叩き壊す。「刑務所へ戻りたいのか?自覚が足りないんだよ。滝で起こった事をいつまでも引き摺るな」とチョークを叱責するジャーマン。「滝へキャンプに行く奴等に会った。大人しくしてろ」と念を押す。
*テントで2人だけの年越しをしたイアンとサム。翌朝になっても隣のテントには変化がない。気になって覗くと、テントの中は荒らされている。レンジャーに連絡をした方が良さそうだが、携帯は繋がらず車もパンクしている。悪路を走ってタイヤが駄目になったようだ。更にサムが倒れている赤ん坊を発見。テントの主はこの子を探しているのではないか。彼等の車の鍵は見当たらず、イアンが歩いて携帯電話が繋がる場所を探す事にするが、そこへチョークがやって来る。
*チョークはジャーマンへ『狩りに出掛ける』とメモを残していた。チョークが暴走すれば自分も刑務所に逆戻りになるため、ジャーマンも滝へ向かう。相手の素性を知らないサムとイアンは、チョークに助けを求める。「レンジャーではなくハンターで、豚の駆除にやって来た」と話すチョーク。2人の食糧も豚に荒らされたために説得力がある。
*直ぐにも赤ん坊を病院へ運びたいが、チョークは「3日前にあのテントの一家に会ったが、滝へ行くと言っていた」と言う。道が悪いため、トラブルに遭ったのかもしれない。ここから丘を越えれば10分程で滝に到着するから、探して1時間程度で戻って来る事が出来る。しかし、人里に戻れば捜索は夜になってしまうだろう。そしてイアンの判断では、オーリーは幸い一刻を争う状態ではない。
*結局イアンはチョークと共に滝を目指す事に。車から銃を取り出すチョークにサム達は驚くが、彼は「豚が居たら仕留める」と説明する。やがて滝に到着する2人。イアンは、エムと彼女の父親の無残な死体に言葉を失う。一方チョークは、母親が消えている事に狼狽える。痕跡を辿っていくと、瀕死の母親を発見。イアンが介抱しようとするがチョークが発砲し、今度こそ彼女は絶命する。
*オーリーと共に車で待つサム。そこへジャーマンがやって来る。赤ん坊の事を伝えても興味を示さず、イアンの行方を訊くジャーマン。不審に思っているとチョークの撃った銃声が響き、ジャーマンも銃を持ち出す。チョークを諫めるつもりだったがイアンと滝へ向かったと知り、口封じのためにサムとイアンを殺す事にしたのだろう。
*サムが危険を察知して車に乗り込むと、ジャーマンは銃床でガラスを叩き割る。昨夜イアンから貰ったナイフでジャーマンの腕を切り裂くサム。相手が怯んだ隙に、オーリーを抱えて森へ逃げ込む。ジャーマンはバンジョーを放ってサムを追うが、バンジョーは野生の豚に気を逸らされる。
*一方イアンはチョークと相対して「次は僕を殺すのか?」と訊く。チョークは一旦銃を構えるが「いや、犯される彼女を見てろ」と嗤う。イアンはチョークを突き飛ばして森の中へ走る。チョークは木々や茂みに邪魔され発砲出来ず、イアンを追い掛ける。サムとジャーマン、イアンとチョークは次第に接近。それには気付いていないチョークが動く標的を撃つと、倒れたのはジャーマンだった。
*チョークが狼狽えていると、赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。サムが必死にあやしてもオーリーは泣き止まない。結局2人はチョークに見付かり、倒れたジャーマンの傍まで連れて来られる。ジャーマンの銃を取ろうとしたイアンだが、逡巡している内にチョークが戻って来て失敗。茂みの影に身を隠す。
*泣き止まない赤ん坊に苛立ったチョークは、サムからオーリーを取り上げる。サムは助けを求めて必死にイアンの名前を呼ぶが、イアンは飛び出す事が出来ない。ブランケットごと地面に投げ付けられるオーリー。チョークは泣き叫ぶサムに銃口を向けながら、ジャーマンに「どうしたい?」と問い掛ける。ジャーマンは痛みに耐えかねて「俺を殺してくれ」と懇願する。拒絶するも繰り返し頼まれ、チョークは「じゃあな」と言うとジャーマンに止めを刺す。
*チョークはイアンが近くに居るだろうと踏んで「滝の近くの岩場へ行くぞ」と声を張り上げる。エムや彼女の父親の死体が転がる場所で、手首を縛られ木に吊るされるサム。「叫べ、あいつの名前を呼べ」と言われて服を脱がされそうになるが、間もなく車が走り去る音が聞こえてくる。イアンがジャーマンの死体から鍵の束を見付け、車で逃げ出したのだ。「腰抜けめ」と悪態を吐いて、イアンを追うチョーク。バンジョーも連れて行こうとするが、ジャーマンの愛犬は彼の死体の傍から離れようとはしない。
*チョークはサムを自分の車に乗せて、山道を走る。車の中でもチョークは「情けない男だな、逃げ出しやがった」とイアンを罵っている。サムは「逃げたんじゃないわ、オーリーを助けたのよ」と言う。オーリーはジャーマンの死体の傍で投げ捨てられたが、車に乗せられる前に見た時にはブランケットの中から居なくなっていたのだ。イアンは赤ん坊を連れて町へ向かった筈だ。「そうはさせない」と呟くチョーク。それを聞いたサムは、腕を縛られたままだがハンドルを掴んで抵抗しようとする。チョークはサムを殴り付けるが、余所見をしている内に道を逸れて、車が木に激突する。
*イアンは町へ辿り着いて、アームストロング巡査が運転する警察車両で再び森へ。もう1台のパトカーに別の警官が乗り、2台で森を走る。もう日が暮れていてスピードが出せない。漸くストーニー・クリークへ近付くと、木に激突して停止している車を発見する。車内にはサムだけが居て、縛られた腕をハンドルに固定されている。どうしてもロープが外せないが、車が近付いて来るのを感じてライトを点けるサム。警官達は慎重に車に接近するが、身を潜めて待ち構えていたチョークに射殺されてしまう。
*イアンも撃たれて負傷。漸くロープを外したサムは逃げようとするが、イアンを人質に脅されて、パトカーを運転させられる。助手席にはイアン、後部座席にチョーク。「オーリーは無事なの?」と尋ねるが、イアンは赤ん坊の行方を知らなかった。また自分で歩いて行ってしまったようだ。森ではオーリーに気付いたバンジョーがジャーマンの死体から離れて、赤ん坊の傍で蹲っている。
*イアンがオーリーを助けた訳ではなく、自分を置いて逃げ出したのだと知って、サムは怒りを露わにする。「悪かった、混乱してたんだ」とイアンが宥めても無言で、スピードを上げるサム。チョークが「いい加減にしないと撃つぞ、スピードを落とせ」と叫んでも構わず走り、急激にハンドルを切る。横転する車。チョークが車から這い出すが、最初の事故でも怪我をしており、更にダメージが酷くなっている。サムは車を降り後部座席のドアを閉めて、銃を取ろうとするチョークを阻止。チョークに覆い被さり、掴んだ石で相手の頭を繰り返し叩いて潰す。
*応答のないパトカーに救援が駆け付けたのか、自ら無線を使ったのか、サムは病院で目を覚ます。覚束ない足取りで近くの病室に入るとイアンが眠っている。見詰めているとやがてイアンも目を覚ますが、サムは何も言う事が出来なかった。
■雑感・メモ等
*映画『キリング・グラウンド』
*レンタルにて鑑賞
*オーストラリア製のキャンプ系ホラー
*ジャケットに『後味最悪』『胸糞系』なんて煽りが踊っていたので正直見たくなかったけど、時系列が交錯するタイプとの情報を小耳に挟んでレンタル。時系列細工系が好きなので。
*この作品の場合は時系列部分で奇を衒う訳ではなくて、時間軸が異なるエピソードを並行して描いている事は序盤から分かる。意外性はないけど、緊迫感は出ていると思う。(ネタバレでは時系列の通りに書いたけど、エム達とサム達がそれぞれ滝の傍に辿り着くまでが並行して描かれる。)
*[胸糞系]については、警戒していた程は酷くなかった。被害者全滅で加害者生存パターンかもと思ってたから、主人公が敵を始末した部分には安堵。恋人達の関係は壊れてしまったかもしれないけど、赤ん坊については犬のお陰で幾らか希望がある描写。エム達のパートは確かに理不尽で胸糞だけど、執拗な残虐描写とかはない。
*エンドロールで『コンドルは飛んでいく』が流れるのは何とも胸糞と言うか、遣り切れなさが募る。
*詳細説明はなかったけど、エムは高校生で両親は再婚(母が継母)オーリーは2人の子かな。エムの悪夢についての会話では母親と少し距離感がある。ジャーマンとチョークは刑務所仲間?
*滝について悲劇の歴史が語られて、犠牲者達が同様に滝の傍に運ばれるけど、滝そのものは映らない。