二つの真実、三つの嘘 | m-memo

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ネタバレだらけの映画メモ。

忘れ易いので自分用にメモしてます。
ネタバレ部分は詳細を記載することもあれば、
二言三言のこともあります。

 

■あらすじ

出産予定日まであとわずかというタイミングで、事件に巻き込まれ死産してしまったエスターは、親族を失った悲しみをシェアし語り合う“グリーフケア”への参加を勧められ、そこでメラニーという女性と知り合う。死産を経験したエスターと、息子を事故で亡くしたメラニー。子どもを失った悲しみを分かち合い、だんだん親密になっていく二人だったが、エスターにもメラニーにも、それぞれ言動に不可解な点が見え隠れだして―。(メーカーサイトより)

 

■ネタバレ

*エスター:出産予定日の2週間前、エスターは暴漢に襲われる。レンガで繰り返し腹部を殴られ、一命は取り留めたが胎児を失う。彼女はレズビアンで、精子バンクを利用して妊娠していた。そして実は、恋人のアニカに自分を襲うように頼んでいた。アニカにはエスターの考えは理解出来なかったが、彼女の望みを叶えてやったのだ。家族を亡くした人々が集まるグループセラピーに参加したエスターは、そこで息子を亡くしたメラニーと言う女性に出会う。また会いたいと思い電話をするが、忙しいようで次の集会では会えなかった。ある日ショッピングモールでメラニーを見掛けるエスター。メラニーは「息子のペイトンが居なくなった」と騒ぎ立てる。警備員が「監視カメラを確認する」と言うと、メラニーは「外を見て来るわ」と言う。そして彼女は、車で待っていた息子を抱えてモールに戻る。メラニーの息子は死んではいなかった。その光景を見たエスターは、彼女は自分と同じなのだと感じる。家に招いて話をしている最中にキスをすると、強く拒絶されてしまう。泣き崩れるがエスターは諦めない。鍵の隠し場所を把握しているアニカの車を使ってメラニー宅へ。そして家に侵入してバスタブでペイトンを殺す。息子の死体を発見して泣き叫ぶメラニー。そこへエスターが姿を見せる。「あなたのためにやったのよ。嘘は良くないわ。これで一緒に居られる」とメラニーに語り掛けるエスター。そこへメラニーの夫パトリックが駆け付けて発砲、エスターは絶命する。

*メラニーとパトリック:悲劇のヒロインとなったメラニー。警察の取り調べや葬儀では生気のない表情を浮かべる。しかし、次第に彼女は活気を取り戻す。友人知人に進んで声を掛けてランチに誘い、自分の悲劇を語る。息子の遺品を受け取りに幼稚園に出向けば、甘えた仕草で教師に抱き着いて呆れられる。一方パトリックは息子を亡くして、妻以上に気落ちしていた。仕事にも随分行っていない。勤務先の社長は実父のため、幸い理解してくれている。窓の外を見ると、事件の日以来停まっている車がある。何日も動いていない。車に近寄ってみると鍵が掛かっていなかった。車の登録証を持ち出して警察に電話をするが、勝手に車内に入った事を咎められて納得が出来ない。ある日グループセラピーに参加してみると、参加者の1人に声を掛けられる。自分と息子の名前から、メラニーの夫だと分かったと。妻を1年程前から知っていると言う男性に「子供が死んだのは1ヶ月前だ」と告げると困惑し「勘違いだったようだ」と立ち去ろうとする。呼び止めて携帯電話の中の家族写真を見せると、相手は益々混乱する。妻はペイトンが生きていた頃からこのような集会に参加していたのだ。自分が息子を殺した犯人を撃った時には、犯人が妻に何か話し掛けていた。何を言われたのか訊くと「次はお前だ」と言われたとの答え。しかし、そんな様子には見えなかった。パトリックはメラニーが信じられなくなる。「子供はまた作れるわ」と微笑み、身だしなみを整えて出掛けて行く妻。銃を持ち出して帰宅したメラニーを詰問するが、納得の出来る会話にはならない。疲弊したパトリックは「もう限界だ、この家を出る」と告げる。

*アニカ:エスターを亡くしたアニカは、恋人を射殺した夫婦を見付け出したいと思い詰めていた。新聞社へ押し掛けても、息子を殺された被害者側が情報公開を望んでいないため、記者もその夫婦の名前は知らないと言う。そんな中警察から、盗難届を出していた車が見付かったとの連絡がある。エスターが使った事は予想出来ていた。車で向かった地域が分かれば、ニュース映像で流れた外観から家が特定出来るだろう。目的の家に侵入し、メラニーを拘束するアニカ。メラニーがエスターと寝たのだろうとアニカは考えていたが、平手打ち等してもメラニーは強く否定する。アニカはそれを信じ、彼女をどうするか考えるのは後回しにする事にした。取り敢えずエスターを撃ったパトリックを、妻の前で犯す事にする。水音が聞こえてシャワー中かと思いバスルームを探すと、パトリックは既に死んでいた。メラニーに殺されたのだ。メラニーの元に戻ると彼女は拘束を解いていて、夫が持ち出していた銃を構えている。アニカに一発撃ち込むと「あなたのお陰でシナリオが決まったわ」と言うメラニー。アニカに罪を擦り付けて、悲劇のヒロインを演じるつもりだ。本を出版してテレビ番組に出演する…その映像が鮮明に浮かぶ。この状況で独り言を言うメラニーに困惑し「誰に話してるのさ」と訊くアニカ。メラニーは「みんなによ」と答える。アニカは手元に転がるハンマーに静かに指を伸ばす。そして、銃声が響いた。

 

■雑感・メモ等

*映画『二つの真実、三つの嘘』

*レンタルにて鑑賞

*病んでる人だらけの厄介サスペンス

*タイトルが気になってレンタルしてみた1本。(因みにGEOやぽすれんでは『アフターグリーフ』と書かれた画像が登録されてる。別題かなと思ったけど検索しても何もヒットしないので、発売前の仮タイトルとかなのかな。)

*前半はエスターが主人公。後半は、彼女が引き起こした事件によって歯車が狂ってしまった3人が描かれている。ラストは暗転して、2人がどうなったか分からない幕切れ。状況からするとメラニーが有利だけど果たして。

*劇中で明言されてはいないけど(原題が『Proxy』である事からしても)エスターは代理ミュンヒハウゼン症候群(に近い症状?)なんだと思う。「妊婦になったら急に注目を集めた。私が居ると周囲も幸せに包まれた。でも親にはなりたくない」みたいな発言があったから[妊婦になる事]が目的だったようにも見えるけど、メラニーにシンパシーを感じていた事からすると最終的には[子をなくした母]になりたかったのではないかな。わざわざ妊娠して死産を目論むのは特殊な気がするけど。メラニーの方は代理ミュンヒハウゼン症候群予備軍みたいな感じか。一方で[理想的な家族]にも執着があって、自分から去ろうとした夫を殺してしまう。

*そもそもタイトルが気になって借りた訳だけど、邦題が原題とは無関係だから意味を考えるだけ無駄かなと言う気はする。虚偽性障害自体が嘘を土台にしているようなもので、2つとか3つとかの話じゃないような?敢えて考えるなら[真実]は「子をなくした母エスター」と「理想的な家族を持っていたメラニー」の2つかなと。(個人の感想です。)その方法の是非はともかく、エスターにはそこが着地点で真実だった。メラニーはあれこれ妄想はするけど、家族の居る場所が現実だった。

*[嘘]の方は例えば、メラニーの[家族]は、エスターには偽りだったし、パトリックには真実を知った後に虚構となった。メラニーには理想だった筈だけど、息子の死によって、より完璧なものを手に入れてしまった。結局3人にとっての[嘘]になった。

*或いはメラニーの息子・エスター・パトリック、それぞれの死についての[嘘]を指すのかも。(エスターの胎児についても周囲を欺いているように感じるけど、エスター自身は「生まれてくるのが楽しみ」とか「亡くして悲しい」とか言ってなかったように思うんだよね。)

*嘘や妄想と言えば、パトリックの妄想はちょっと分かり難く且つ面白かった。エスターの射殺について「2発目は余計だった。1発撃ってから、地下室で締め上げれば良かった」みたいな事を言う。時間が経って、もう居る筈のないエスターをバスタブから引き摺り出して地下室へ連れ込む。顔や服が血に汚れるパトリック。でも一歩家から外に出ると血は綺麗になくなる。屋内に戻るとまた血塗れで、現実と妄想がシームレス。一方メラニーの妄想は、現実とは分かり易く区別されている。そしてエスターのパートには妄想は存在しない。

*脚本や構成が悪い訳ではないけど、題材が題材なのでどうしたって胸糞悪い。メラニーよりはアニカに生き残って欲しいけど、彼女も結局胎児殺しなんだよね。