■あらすじ
アルチュールは運転中に自動車事故を起こし、病院で昏睡状態から目覚める。事故の詳細などの記憶がない。看護師イザベルは、昏睡中に彼が意味のわからないことを話していたという。しかしイザベルは惨殺死体で発見され、アルチュールは容疑者として尋問される。自分の過去と現在に疑いを持った彼が自分の過去を探すうちに、隠された秘密や失踪した兄の真実が次第に明らかになっていく…そして、物語は衝撃のエンディングへ。(動画配信サービス作品頁より)
■ネタバレ
*前半は交通事故を起こしたアルチュールが見ている夢の世界、後半が現実世界と言う構成。夢の中では現実での関係者が、状況や立場を変えて登場する。
・イザベル:夢では看護師、現実では客室乗務員でアルチュールの恋人。本来の名前はアリス。夢の中の恋人は父の若い頃の浮気相手。夢の中では2人共殺されてしまい、アルチュールに嫌疑が掛かる。
・兄イヴァン:夢では10日連絡が取れない。現実では30年前に崖から転落して死亡している。兄の部屋として夢に出てくるのは自分の部屋。
・父と母:夢の中では母は施設に入っていて車椅子に座っている。現実では母の方が父よりも元気。
・ウォルコット医師:夢では精神科医、現実では外科医。
・コスカス:夢でも現実でも警察官。夢では冷淡な態度だが現実では気さくなオネエキャラで、アルチュールの階下に住んでいる。
*事故後の意識が混濁した状態で、アルチュールは幾つかの言葉を繰り返していた。夢ではイザベルがそれをメモして渡してくれる。現実では女医が録音しており、同様にアルチュールに渡す。アルチュールは記憶を辿りながらその謎を紐解いていく。
・スパゲティを刈る:幼い頃スパゲティが大好きだったアルチュールは、もっともっとと欲しがった。すると兄や友達が「畑に生えるんだよ」と揶揄う。アルチュールは「大人になったらスパゲティを刈りたい。素敵な仕事だ」と言う。他愛のない子供の会話。
・テキサスは存在しない:兄イヴァンは自転車の後ろにアルチュールを乗せていた時に、運転を誤って1人崖から落ちてしまった。その知らせを聞いて、テキサスに居たはずの父が僅か2時間でフランスに戻ってきた。実際には秘書と不倫旅行していたのだ。
・シルヴァン・ガネムに殺される:シルヴァン・ガネムは兄の名前イヴァン・セリグマンのアナグラム。アルチュールは兄の死に対して罪悪感を抱き続けてきた。
・RP50:憶えていた車のナンバーの一部。兄の転落死のショックで話す事が出来ず、やがて忘れ去っていた記憶だが、事故はイヴァンのミスではなかった。車と接触して自転車から投げ出されたのだ。イヴァンは崖から突き出した木に掴まり、アルチュールは崖の段差部分に着地した。車を運転していた男はイヴァンを助けず、自転車を崖下に投げ捨てて走り去った。
*コスカスに車両ナンバーを伝えて調べてもらうと、持ち主は女性で既に死亡していた。アルチュールの記憶にあるのは男の姿だ。実は事故の前日に盗難届が出ており、あの日運転していたのが誰なのかは分からない。
*アルチュールの部屋に空巣が入り、女医から渡されたテープが奪われる。女医も何者かに襲われる。担当医に相談すると「現場に戻れば何か思い出すかもしれない」と言われ、イヴァンが命を落とした崖に向かう。そこへ担当医が現れ、アルチュールの記憶も蘇る。2人乗りの自転車を撥ねて、兄を見殺しにしたのは若き日の担当医だった。担当医はアルチュールの脚を撃つ。殺されるかと思ったが、担当医は崖から身を投げる。
■雑感・メモ等
*映画『ブラック・ボックス 記憶の罠』
*動画配信サービスにて鑑賞
*フランス製改変夢オチ系サスペンス
*トニーノ・ブナキスタの短編小説が原作とのこと。現実が歪んだ形で夢や幻の中に現れるタイプのあれです。このタイプで比較的有名かな?と思う作品でも交通事故が発端になっているので、余計に印象が被る。
*映画と言う虚構の中で夢と言う虚構を組み立てられると、現実との設定である階層も実は夢なのでは?と身構えてしまう。その通りに虚構であった場合は「やっぱり」と思うし、本当に現実だった場合は「期待外れ」と感じる。どちらにしても満足感が薄くなるので、匙加減とかバランス感覚とかなかなか難しい。
*父と母の夢と現実との差異等を見ると単純に夢=願望ではないと思うけど、特に法則や意味はないんだろうか。勤務先の社長だけは夢でも現実でも変化がない。不満をぶちまけて退職を宣言した時に拍手喝采を浴びたから、ここも夢なのかなと思ったんだけど違ってた。
*医師の行動が腑に落ちない。隠蔽したかったのなら事故時にアルチュールを見逃したのは何故なのか。(医師の方からは見えていなくて後からニュース等でその場に居た事を知ったとかなら分かるけど、そういう風には見えないので。)最後に対峙した時には「来る前に告白の手紙を書いた。それがないと君も困るだろ」と言ってから落下するんだけど、それならアルチュールの脚を撃つのは余計では。酷くないか。
*重要ではない言葉もあるけど、如何にも何かありそうだったのに「フィンオイルがACを買収」は解明されなかったような。
*似てるけど妹か親戚なんだろか、と思って検索したらマリオン・コティヤール本人だった。