昨日、ある会議が開かれました
来月開催する、比較的大きなミーティングに関する事務局メンバーの打ち合わせです
初開催のテーマにも関わらず内容や次第がすんなりと決まり、役割分担の話になりました
あらかじめ資料には、役割(項目)が書かれ名前が書き込めるよう( )が付いています
すると、
「司会やります」
「記録やります」
「横断幕作ります」
と次々に手が挙がる
みんな積極的だなあと思っていると、
難しい役割を振られる前に比較的やりやすいものを早い者勝ちに埋めていることがわかりました
これはまずい・・・
案の定、
「はい次、基調提案の文案づくりは?」
・・・
誰の手も挙がらない
僕もできれば避けたい、と思っていたのも束の間、
「じゃあ、〇〇君(僕の名前)」
「はい、喜んで」とはもちろん言わないけれど、「できません」とは言えない空気なので引き受けました
ミーティング(本番)は3週間後なので、あまり時間はありません
翌日はスケジュールが詰まっていたので、20時過ぎの打ち合わせ終了後少し残って基調提案の骨子だけでもメモしておこうとパソコンに向かいました
ミーティングのタイトルを書き、趣旨や目的、達成したい目標などを思いつくまま箇条書きにしてみる
しかし、難しいのはそこからです
なにしろ、ミーティングの基調提案を実際に行うのは文案づくりを任された僕ではもちろんない
他人が喋る原稿を書くものほど難しいものはない
少しでもアイディアを膨らまそうと、僕はネットの検索画面を開きました
その時、ふと目に留まったのは画面の右上の生成AIのアイコン
「こんばんは、今日はどのようなご用件ですか?」
とりあえず、ミーティングのタイトルと、先ほど考えたいくつかの項目を入力して、
「このミーティングの基調提案を考えて」
とAIに聞いてみる
待つこと10秒、
「このまま出来上がりでいいんじゃね?」と思えるほどの見事な基調提案が出てきました
驚いたのは、1200字を超える長い文章にも関わらず、起承転結がしっかりしているのはもちろん、文脈の自然さ、聞く者の心情に訴えかけるようなエモーショナルなフレーズ、基調の後展開される内容に絡んだ話題など、僕が考え得るほぼ全ての内容を完璧に網羅していること
もし僕がこれだけの内容を自分で作成するとしたら、少なくとも3日くらいはかかると思いました
AIが考えてくれた内容はもちろんコピペ可能で、数カ所の手直しを加えてあっという間に「基調提案の文案を作る」という僕のタスクはほぼ終わりました
翌日上司に、ゆうべ(AIが)作った文案をA4×2ページにプリントして何も言わず(!)見せたところ、5分ほどじっくり読んだ後、1フレーズだけ消して、「この一文は内容が重複しているから要らない」と言われすんなりOKが出ました
この出来事を経験して僕が思うのは、今まで他人事にしか聞こえなかった「分野によってはAIに取って代わられ人間の仕事が奪われる時代が来る(すでに来ている)」ことが現実のものだということです
https://www.cnn.co.jp/tech/35239795.html
その一方で、人間はどんどん考えることが少なくなり、AIにほとんどのことを任せることを繰り返すうちに知能や能力が退化してゆくのではないか、という不安を覚えたのも確かです
昔読んだ星新一のSFショートショートで、主人公が朝起きて顔を洗い歯を磨き、朝食をとって服を着替え、車に乗って会社に到着したものの、いつまでも車から降りてこないことを不審に思った同僚が声をかけたところ、主人公はすでに冷たくなっており医者が来て死亡したのは昨夜だと思われる・・というオチを思い出しました
あらためて説明するまでもなく、ロボットやAIが、すでに死んでいる主人公を全自動で会社まで送り出すという笑えない未来の実現を、星さんは数十年も前に小説として世に出していたということです
ある専門家は、大きな発明による社会の変革を、蒸気機関、コンピュータ、そしてAIだと表現したそうです
僕等は、大きな社会の変革の只中に居るのかもしれない
その変革のなか、毎日爆弾や銃弾で罪のないたくさんの人々が殺されているという100年前とおよそ変わらない現実が僕を苛みます
