BMW M440i xDrive Coupé(G22)試乗記 | M3遣いのブログ

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ディーラーで、2020年11月に日本でのデリバリーが開始された新型4シリーズ(2ドアクーペ)に試乗する機会を得ましたのでレポートします。


今回の試乗車はM440i xDrive(フルタイム4WD)で、日本でのローンチ(当初)発売モデルはこれと420i(標準またはMスポーツ・184PS直4エンジン)の2モデルのみ。欧州で売られる430iやディーゼルモデル、48Vマイルドハイブリッド搭載車は導入されていません。



【第一印象】

まずは、物議をかもしている巨大縦長グリルのこともあるので、初対面の第一印象から。




「思っていたほど強い違和感はないけど、やっぱり自分は嫌かな。」


試乗車のボディカラーが、アークティック・レースブルー(メタリック)という比較的濃いめの色なので、グリルが目立ちにくいという条件もあるだろう。


グリル自体が黒灰色なので、白や黄色などの明るいボディカラーだとやっぱり僕は「ブタ鼻」にしか見えないと思う。


運よく試乗車の隣に自分のM4を止められたので、2台並べてしげしげと見比べてみる。





細部は別として、基本的に形はほとんど変わってないなと思いました。


しいて挙げればボンネットの厚み(高さ)が若干増したかなという程度。フロント&リアウィンドウの傾斜角(=A・Cピラーの角度)は真横から見ても違いが分からないほど相似形です。


あのブタ鼻グリルを生み出したデザイナーの心境を代弁するなら、「ここまで外形が似てると新味を出すにはもうグリルくらいしかねーよ!」という感じでしょうか。




【外装】

外観の細部に移ります。


細部を観察すると、これまでのBMWのデザインの文法を各所で打破していることがわかります。


例えば、ズィッケ(ジッケ)と呼ばれる、フロントからドアハンドルを通ってリアまで一本線でつながるキャラクターライン(プレスライン)をやめて、前後から伸びる高低差のある2本にしていること。


L字型のテールランプ。(レクサスとそっくりだったので僕も内心やめてほしいと思っていました)※点灯した時サイドまで周り込んだ部分まで含めると、まだL字に見えないこともないですが・・




驚いたのは、FRベースの正統なシリーズモデルにもかかわらず、あっさりとBMW伝統のホフマイスターキンク(サイドウィンドウ後端の切り欠き)まで、やめてきたこと。


1・2シリーズ(2ドアクーペを除く)をFF化して、頑なにこだわってきた50:50の前後重量配分が不可能になったのを契機に、BMWはこれまでの伝統を「走りにこだわる自動車屋であり続ける」という矜持とともにどこかに置いてきてしまったように見えます。


それは、BMWのもう一つのアイコンでもある「キドニー(腎臓)グリル」に関しても。



【フロントの造形】

ドイツのプレミアムブランド(BMW・メルセデス・ポルシェ・アウディ等)が、モデルチェンジを重ねてもフロントフェイスのデザインをほとんど変えないのには理由がある、とドイツ車の歴史を記した本で読んだことがあります。


それは、欧州のアウトバーン(速度無制限)の追い越し車線を走行している時に、ルームミラーに小さく映る後続車の影を見ただけで、ドライバーが「速度差(性能差)があるクルマが後ろから来ているから早めに車線変更する」という判断を容易にするため、と書いてありました。


確かに、モデルチェンジの度にデザインがコロコロ変わる国産車と違って、モデルが違ってもフロントフェイスが変わらないから、車種はともかくメーカーはすぐに判別できます。


トヨタのレクサスがスピンドルグリルを(今のところ)一貫して採用し続けているのも、その例に倣ったものと僕は思います。


今回の新型4シリーズの「左右対称」という基本線は辛うじて守ったものの、あの珍妙な形のグリルを、アウトバーンを走る多種多様な車のドライバーさんたちが瞬時に「あ、BMWが来た」と認識してくれるのかどうかは不明ですが。


あと、細かい部分で気になったのが、ボンネット前端(パーツとしてはフロントフェンダー)に付いているBMWのロゴマーク周りが不自然に凹んでいること。


おそらく、グリル中心軸の谷間の部分とボディの造形を破綻なく合わせるには、凹ませるしか方法がなかったのだと思いますが、全体として眺めるとどうにも不自然で、遠くから見ると「あっ、イタズラされてボンネットが凹んでる!」ようにしか見えないのです。


ここにもキドニーグリル巨大化のしわ寄せが、と思うと悲しくなります。



試乗記らしからぬ出だしになってしまいました。



【エンジン及び車台関連】

M440iに搭載されているエンジンは、G20系3シリーズにも載っているB58B30B型の3L直6シングルターボ(ツインスクロール)で、最大出力387PS・最大トルク51kgmです。


このエンジンは、B58B30A後継のモジュラー(量産型)エンジンで、基本設計に大きな変更はないようです。3・4シリーズのフラッグシップモデルはモデルチェンジのたびに最高出力をアップ(下記参照)しています。
N54B30A:306PS
N55B30A:326PS
B58B30A:340PS
B58B30B:387PS


参考までに、歴代M3・M4の公称出力です。
E46 M3:S54B32:343PS
E92 M3:S65B40A:420PS(V8自然吸気)
F82 M4:S55B30A:431・450PS(現行)後者はコンペティション
G82 M4:S58B30A:480・510PS(予定)同上


公称出力(カタログ馬力)はライバルメーカー(メルセデスやアウディ)の比較対象モデルをターゲットにしているようで、机上の数字であって、実走行ではほとんど参考にならないと思います。


最高速は自主規制(一般モデル:250km/h・Mモデル275km/h)かけてるのに、際限ない(カタログ上の)パワー競争に辟易している僕のようなユーザーがいることもメーカーは判ってほしい。


いまだにカタログ記載の馬力にこだわって車を買う人がいるのかな。




車重はなんと1,740kg。僕のM4(F82)より、130kg(大人二人分)も重い。


もちろんxDrive(四駆)だし、Mはカーボンルーフをはじめとしてさまざまな軽量化を施しているから、2021年に出るG系M3・M4はもう少し軽くなるとは思うけど、それにしても重すぎないかって思います。


クルマの挙動は、重くなればなるほど慣性が大きく働いて、いわゆる「軽快な動き」とは程遠くなる。


いくらエンジンをパワーアップして、パワーウェイトレシオ(馬力当たり重量)を向上させたとしても、非力でも軽量な車(例えばマツダのロードスター)の機動性にはかなわなくなる。


その分水嶺は、人によって考えが違うと思うけど、僕は車重1,500kg付近だと思っています。


それは、1,610kgで420PSのE92_M3(3.83kg/PS)から、1,495kgで340PSだった1Mクーペ(4.40kg/PS)に乗り換えた時に肌で感じました。


パワーウェイトレシオではE92の圧勝ですが、峠を走ると1Mのほうが速く走れて、しかも運転が楽しかったのです。


現行M2は1Mの後継と言われていますが、コンペティションでも車重は上記M3や現行M4と同じ1,610kgもあって、ボディは小さくても機動性に優れるとは言えません。


 

話がそれました。


新型の4シリーズがここまで重くなった理由のひとつが、プラットフォームの変更によるものだと僕は考えます。

 

 

先代のF系までは、3・4シリーズは格下の1シリーズ(FR)と車台を共有してきました。(その弊害でステアリング軸のオフセットが生じていたけれど)

しかしG系からはBMW呼称の「CLAR」プラットフォームを、上はV12を積む7シリーズから、下は縦置き直4の3シリーズまで全て共有しています。


これは、FRとFRベース4WDを一つの車台で賄うことで、コストダウンとともに、来るべき電動化に備えたものと思います。


大に小を兼ねさせれば、センタートンネル周りに余裕を作ることができ、電池やモーター動力系を組み合わせることが可能になるからです。


結果、3・4シリーズについては、いわばサイズの合わないだぼだぼ(博多弁ですか?)のズボンを無理やり履かされているようなもので、重くなるのも無理はないだろう。


Mモデルはサーキット走行も視野に入れた造りをしてきたはずだけれど、これだけベース車両が重くなってしまうと、今後はサーキット用にはCSやGTS(+500万円以上)を買ってくださいということなのだろう。


ここでふと疑問が。


BMWは、次期2シリーズクーペ&M2は現行と同じFRで出すと言っているようです。車台(プラットフォーム)はどうするんだろう。


全幅が1,850mmあるM2はともかく、1,775mmしかない220i(現行)をCLARで賄うのはちょっと無理があるのでは・・


心配しても仕方ないか。



すみません、なかなか(試乗)車が動きません。



【タイヤ・サス】

試乗車のタイヤは、F225/40R19、R255/35/R19サイズの、GOODYEAR EAGLE F1(ランフラット)を履いていました。


ネットで見た別の試乗車にはブリヂストンのトランザRFT装着車もあったようなので、生産工場などの違いで標準装着タイヤも変わるものと思います。


ホイールには盛大に赤茶色のブレーキダストが付着していたので、ブレーキパッドは粉が出ない日本仕様ではないようです。やれやれ。


サスペンションは前ストラット・後マルチリンクで、2005年発売のE90系から基本設計は変わっていません。


もちろん、各部の剛性強化やアルミによる軽量化によって、乗り心地は確実に向上を続けていて、今回のモデルチェンジのトピックは、ダンパーのサブタンク装備による路面からの入力(凹凸)に対する許容力の増強だと思います。


また、以前320dの試乗記にも書きましたが、19インチランフラットの履きこなしと、内製ではないトランスミッションZF製8HPのエンジンとの協調制御の素晴らしさは、他を寄せ付けないBMWの強みだと思います。


グリルを巨大化しようがタコメーターを裏返そうが構いませんが、これだけは今後も守り続けてほしい。



【装備・内装】

タイヤの検分を終えようやく車内へ。


試乗車は右ハンドルでしたが、M440iは左も選べます。担当さんによれば、左は受注生産になるので納車まで相当待たなければいけないようです。


トランスミッションは8AT一択ですが、今のご時世日本で売られる新車で左ハンドルの設定があるだけ嬉しい。


乗り込んでドアを閉めた途端、右肩後方から「ウィーン」とアームが伸びてきて、シートベルトを締めやすいように差し出してくれる。E92_M3(蜜柑号)に乗っていた時と同じように、「ありがとう」と思わず声が出ました。


はー、やっぱり復活したんだ。


E92_M3で同じ機能が付いていて、めっちゃ便利だなーと思っていたのに、次のF82_M4では省かれていたので「これも軽量化の一環なのかな」と残念に思っていたけれど、おそらく次期M4ではちゃんとついてくると思う。(外したのは)やっぱり不評だったんだなー。


G系からパーキングブレーキは電制になって、手動で解除しなくてもアクセルを踏めば自動で解除されます。もちろん停車時も自動。


僕のM4でも、たまにサイドブレーキの解除が甘くて走り出してから警告(音とディスプレイ表示)されることもあるので、ずぼらさんには嬉しい装備。


でも、手動式ならではの、クラッチ切ってサイドブレーキ引いて後ろをロックさせてドリフトオンみたいなお遊びはもうできなくなってしまった。滅びゆく騎馬民族として、ちょっとだけさみしい。



装備や内装の詳細については、G20系3シリーズと同じなので割愛させていただきます。詳細は過去のG系3シリーズの試乗記を参照いただければと思います。




【試乗インプレ】


試乗コースは、3車線の市街地・路面が荒れている住宅地・海岸沿いの直線などでした。高速には乗っていません。


以前乗った3と同様、遮音性が一段と高められていて、パドルシフトを使って4,000回転くらいまで上げてみてもエンジン音はほとんど車内に入ってこない。


・・と思っていたら、ドライブモードをSport+にしたところ、ボタンを押した瞬間に「ブロロロー」という威勢のいいエンジンサウンドが車内に鳴り響くようになりました。


僕「これ、合成音ですよね?」


助手席の担当さん「まあ、そうですね。i8(1,500cc直3エンジンなのに車内ではV8風サウンドが鳴り響く)で味をしめたみたいですね。」


僕のM4でもその演出は入っていて、最近では多少うるさいと感じるようになってきたけれど、M440iのようにあからさまで安っぽくはない。


本来なら、排気系を丁寧にチューニングして遮音の度合いを調整すれば安っぽい合成音をスピーカーから流さなくても、自然なインライン6のエンジンサウンドを聴かせることは可能であるはずなのに、コストダウンと遮音の向上のために安易な方法に走り、しかも聴いた瞬間にそれとわかるようなチープな演出をするのは、BMWエンスーの僕としては非常に残念に思います。


Mパフォーマンスモデルなので、パドルシフトを多用して多少スポーツ的な運転も試してみましたが、裏返しデザインのタコメーターがすごく見づらくて、途中で回転数を確認するのを諦めました。


反時計回りのタコ(デジタル表示)は、いびつな形(五角形)の外縁に沿って、針ではなく細くて赤いバーグラフが伸びていくデザイン。


こんな見づらいガンダムメーターにするくらいなら、このクルマにはタコメーター要らないと思いました。


それでいて、400馬力近くあって0-100km/h加速4.5秒だそうなので、とてもじゃないけど恐ろしくてこれでワインディングを飛ばしたいとか絶対に思えない。


ブレーキに関しては、Mスポーツブレーキ(フロント4ポット・リア1ポット対向ピストンキャリパー)が装着されていましたが、踏み始めの遊びがほとんどなくいきなりガツンと効くブレーキで、試乗の最後まで慣れることができなかったので、少々残念に思いました。




なんか、悪口ばかりになってしまいそうなので、良いと思ったところを書きます。

【良いと思ったところ】

・Mパフォーマンスモデルとしては硬すぎない足回りと自然な操舵感

高出力・高性能モデルですが、乗り味に関しては、以前試乗した現行330i・320dと同様に滑らかでゴツゴツ感はなく、サスが良くストロークしてちゃんと仕事している様子が感じ取れます。


操舵フィールに関しては、同じG系3シリーズで感じた、極低速や据え切りで異様に軽く、速度を上げると重過ぎになるちょっと不自然なパワーアシストが多少改善されて、違和感の少ないものになっていました。


また、3で酷評した極太のステアリングリムの径も、少し細くなって握りやすく感じました。ただし、ステアリングから伝わる路面とタイヤのコンタクトに関する情報は希薄で、運転して楽しいと感じられる類のモノではないです。



・トランクリッドがフル電動になった

F系までは、オープンだけは床下に足を差し入れることでできていた(荷物多い時や雨の時めっちゃ便利です)のですが、G系ではクローズも電動化されました。閉める時も、もう一度足を入れたら良いそうですが試すことはできませんでした。



・・・あれ?次(良いところ)が出てこない。うーん、けっしてダメダメなクルマではないのですが、「イイ」と思う部分がなかなか見つかりません。



じつは、「ブタ鼻」グリルは別として、僕がどうしても引っかかっていることがあります。


【価格について】

それは、このクルマの、10,250,000円(税込)という価格設定。


今後追加投入されるのかどうかはわからないけれど、現時点での日本でのラインナップは、直4(184馬力)の420i(577万円・Mスポーツ632万円)と、今回試乗したM440i_xDrive(1,025万円)のみ。


4のクーペで直6エンジンを堪能したいと思ったら、総額で1,100万円以上かかることになります。


先代のF系では、素の435iが738万円(発売開始時)で買えました。


いくらアタマにMを冠したモジュラーエンジンの最高モデルでも4シリーズで1千万円超えはないだろう、と思うわけです。


BMWに限らず輸入車は全て、本国での価格に加えて、輸送費とか関税とか、日本の保安基準に適合させるための仕様変更等の費用も販売価格に含まれているから、クルマそのものの価値としては1~2割程度は割り引いて考えないといけないのだろうけれど。


仮に1,100万円の予算があるのなら、僕だったら現行M4CS(7DCT)の中古車を勧めます。Mパフォーマンスなどという、利益率優先の疑似Mなどわざわざ買わなくても、エンジンも含めM社が造った真のMモデルを心ゆくまで堪能できるからです。


現時点で新車でBMWの直6FRモデルで最も安価なのが、M240iの718万円なので、お財布が厳しいならそちらをどうぞ、という訳なのだろう。


もし、BMWを候補にしていて、新車の値段の高さがネックになっている人がいるとしたら、正規ディーラーの認定中古車を選択肢に入れることをお勧めします。


輸入車は国産車に比べると中古車の値落ち幅が大きいので新車に比べるとお買い得感があります。


また、ディーラーが保証を付けて売っている車(BMWならプレミアムセレクション)であればほとんど中古としての心配はいらないと思います。新車保証が付いた車なら、オーナーが替わっても保証は継続されますし。



【最後に】

試乗記の最後には、試乗したクルマがどんな人におススメできるか、ということをできるだけ書くようにしているのですが、今回はどうもうまく書けません。


1,000万円超という価格と、Mパフォというメーカーのそろばん勘定が透けて見えるどうにも中途半端な立ち位置のモデルだからでしょうか。


4WDのメリットを考えても、雪国でどうしてもクーペに乗りたいという人はそんなに多くないだろうし。


今回の巨大キドニーグリルがめっちゃ気に入った、お金もある、という奇特な方は、とりあえず来年発売のG82_M4まで待たれることをお勧めいたします。担当さんによれば、素のM4(FR)は、1,200万円台~とのことです。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

来年は、今より少しでも皆様の笑顔が増える年になりますように。