アメリカでの、白人警官による黒人への不当な制圧行動による死亡事件(2020.5.25)をきっかけとした人種差別反対運動。
発端となった事件の報道はこちらです(BBC NEWSより)
https://www.bbc.com/japanese/52857950
抗議デモはアメリカ国内だけでなく日本を含め世界各地に拡大し、人種差別への批判、格差是正を求める声が強まっています。
そんな中、こんなネットの記事を目にしました。
『「白い肌を推奨」と批判 ジョンソン・エンド・ジョンソンがアジア、中東で美白製品を一部販売中止』(2020.6.20 毎日新聞Premiumより)
記事によれば、「白い肌を推奨している」との批判を受けたものだという。
誤解を恐れずに言えば、
何か、違うくね?
と思います。
過去似たような事例として、例えば中国や韓国で反日感情が高まった時期に、現地の日本企業が店を閉じたり販売を自粛したりしたことがあったけど、今回の対応とは根本的に違うような気がする。
会社は批判に対し、「意図するところではなく、健康な肌が美しい肌だ。」と説明しているそうですが、それなら堂々とその意見を主張して販売を続ければいい。
ネット社会での批判の拡大や不買運動を懸念しての措置かもしれないし、ブランドイメージを悪くしたくないという判断も働いたのかも(個人の推測です)。
でも、販売を中止した商品を日常使っていた人たちは買えなくなって困るだろうし、どんな商品を使ってどのような自分になりたいのか、というのは個人の自由ではないのか、とも思う。
アメリカにおける白人以外の人たちに対する差別(意識)、特に黒人差別はとても根深いものがあると思います。
今回の抗議活動を増幅させたのが、新型コロナウイルスによる感染死者数が、米国内では黒人は白人の2倍というのが明らかになり、差別だけでなく生活や医療の格差もあらためて顕在化した、という見方もあります。
抗議活動には多くの白人も参加し、人種差別政策に消極的だと言われてきたトランプ大統領も、警官による首を圧迫しての制圧を原則禁止することを含む警察改革に関する大統領令に署名(2020.6.16)したと報道されていました。
でも、アメリカで人種差別を禁止する法律はすでにあるし、目先のことに場当たり的に対応しているだけのように僕には見えます。
日本に目を向けてみると、部落差別やアイヌの人たちに対する差別、ハンセン病の元患者さんやその家族に対する差別をはじめとして、数多くの差別が解決されずに根深く残っていると感じます。
部落差別に関しては、江戸幕府が人々の差別感情を利用する形で身分制度化したはるか以前、一説によれば1,000年以上も前から一部の人たちを特別視したり排除したりしていた記録も残っているそうです。
2016年にようやく、『部落差別の解消の推進に関する法律』が制定され、国が部落差別は現に存在することを認めて、その解消に行政や国民が努めることが規定されたけれど、禁止法ではなくいわゆる理念法で、部落差別の真の解消にはまだまだ道のりは長いと感じます。
そもそも、明治四年(1871年)に出された「解放令」によって身分制度はなくなったはずで、法令を出すことによって差別がなくなるなら今頃こんな話にはなってない。
「5万日の日延べ」という史実があります。
近畿地方のある村で、身分制度を廃止する解放令に反対する民衆たちに対し、一揆を恐れる土地の有力者が、「解放令は5万日の日延べ(延期)になった」と嘘の説明をして沈静化させた、というものです。
5万日とひと口に言っても、気が遠くなるほどの時間ですが、電卓を叩いてみれば約137年。
つまり、解放令が出された1871年から137年後の2008年には、その5万日目を迎えているのです。
5万日の日延べと聞いて、当時悔しい思いをした被差別の立場にあった人々は、よもや本当に5万日が経過しても、まだ差別が残っているとは夢にも思わなかったのではないでしょうか。
人間、あるいは自分自身の、負の側面を思わずにはいられません。
最初の話に戻ります。
僕がネットのニュース(美白製品の販売中止)を見て感じた違和感の正体は何なのか、ずっと考え続けました。
化粧品やそれに類する商品の中には、より白くするものだけでなく、様々な肌の色に合わせた多種多様なものがきっとある。
その中で「美白」だけを取り上げてことさら騒ぎ立てたり謗ったり、それに過剰反応して慌てて自粛したりする社会。
そんな風潮を感じて「また嫌な世の中が一歩進んだな」というのが、僕の正直な気持ちです。
差別を容認する社会を是と言っているのではありません。
差別はけっして許されない。
ネットの拡がりによって、鬼の首でも獲ったように騒ぎ立てる画面の向こうの批判者が、どこの誰なのかもよくわからないまま、まるでそれが世論であるかのように扱われ、大きな決定が次々になされていく今の社会が、僕は怖いのです。
2020.6.21追記
今日は16時から18時頃にかけて部分日食がありました。ありあわせの機材を掻き集めてどうにか撮影できました。Instagramに上げていますので、よかったら見ていただければと思います。
次の日食が見られるのは、10年後の2030年6月だそうです。10年後の僕は何をしているだろうと考えると、ちょっと憂鬱になってしまう日曜日の夕方でした。