BMW 320d xDrive Mスポーツ(G20)試乗記(その2)完結編 | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

(その1)から続く
 
【足回り】
サスペンションの感触は、以前試乗した330iと同様、19インチランフラットを履いているとは思えないくらいよく動いてくれ、硬さや不快な突き上げを感じることはありませんでした。
 
調べてみて分かったのですが、今回のG20系では、ダンパーにリザーバータンク的なものが標準装備されていて、強い入力に対しての受容性を高めるのに貢献しているとのこと。

先代(F30)・先々代(E90)で、Mスポのサスは締め上げられて硬くてゴツゴツ感が強い、というのがクルマ雑誌のインプレの定型句みたいになっていましたが、それを覆す乗り味に変わっていると僕は思います。
 
僕が10年前に人生で初めて乗ったBMW車のE90_320iMスポーツ(2007年式・17インチRFT)の感想で、当時まだランフラットを履いたモデルのサスセッティングが稚拙だった様子を「木のタイヤかと思った」と後日ブログに書いた記憶がありますが、19インチRFTを苦もなく履きこなしているのは、まさに隔世の感があります。
 
ただ、少しだけ気になったのは、高速巡航している時、路面のわずかな荒れやアンジュレーションも細かく拾ってしまって、喜ばしくない感触がフロアやシートを通じて伝わってくること。
 
家族全員での長距離移動の際など、後席に長時間座らなければならない場合は、もしかしたら酔いやすかったり、不快に感じたりするかもしれない。
 
これについては、比較的簡単に試せる解決策があります。足回りの感触や乗車感は、タイヤ空気圧を許容範囲内で色々変更してみることで、乗り味やステアの感触まで含めて劇的に変わるからです。
 
例えば、僕のM4(19インチ)だと、指定圧は乗車人数によって2.2barから3.1barまでかなり幅があります。この範囲内で、スタンドで給油した時などにフロントとリアの空気圧を少しずつ変えて走ってみることで、自分の好みに合う感触を探すことができます。
 
僕は少し硬めの感触とすっきりしたステアフィールが好きなので、前後共に標準よりも0.2barほど上げています。装着タイヤがMICHELINのPILOT SUPER SPORTで、サイドウォールが比較的柔らかいことも好みの乗り味に貢献しているかもしれない。
 

【止まる】
ブレーキに関しては、これといって不満もないのですが、特筆すべき優秀さも見られませんでした。
 
例によって、制動時及び減速時に否応なしに襲ってくるエネルギー回生システムによる不自然な減速Gは、F系の時よりもさらに強くなっているような気がします。
 
そこまでして雀の涙ほどのわずかな燃費を稼がないと気が済まないのかなBMWは。
 
しばらく転がしてみて、一番マナー良く静かに停車させる方法は、減速時の最後の数秒、ブレーキペダルからあえて足を離して、エネルギー回生による減速力に委ねることだと気づきました。
 
最後の一瞬だけ、軽くペダルに足を触れることで最もスムーズに停車することができます。なんか、『電車でGo!』のマスコン操作を思い出しました。(分からんやろってツッコミお願いします)

アイドリングストップの制御に関しては、結構早めに動作するので頻度が多く、僕は多少煩わしいと感じました。

僕がMTモデルに乗っていて、アイドリングストップに関してはある程度自分の意志を反映させられる(クラッチの入切)ので余計にそう感じるのかもしれません。

再始動の際の音振は、特に気にはなりませんでした。同じディーゼルの1・2シリーズでは、復帰の際の振動がもっと強いのが明らかですが、車格(=価格)ぶん、しっかり対策を講じてくれているようです。

 
【内装】
かなり酷評してしまった操作パネル以外の内装についてですが、F系から向上していると唯一僕が思った部分は、ドア開閉レバー(内側)のデザインと触り心地です。
 
先々代E系、先代F系ともにシンプルなスティック型のレバー形状で特筆すべきものではなかったのですが、G20になって形状ががらりと変わり、中抜きの菱形のような、より掴みやすい形に変わり、取付位置、操作感もいい感じです。ドアレバーは、最も頻繁に触る所の一つなので、このデザイン変更は歓迎です。


僕が、「運転への集中を阻害する」として忌み嫌うドアパネルのLEDライン加飾(実用性のないヒカリモノ)ですが、iDriveの設定をあれこれイジッていたところ、少なくとも7色(赤・オレンジ・青など)以上に変更でき、しかもON・OFF(完全消灯)が選択できることが判明。

レインボーカラーはともかく、OFFの選択が可能になったことは大歓迎で、もし夜に運転する時でもようやく安心できます。ありがとうBMW。
 

BMWの内装は、低価格の1シリーズ等でもあまり手を抜かないことが好感が持てるけれど、逆に言えば、価格やグレードが上がってもほとんど変わり映えしないということでもある。
 
今回乗った320dの内装が、例えば国産車ならかなり高額な価格帯と言える641万円のクルマに見合った内装か、と問われたら、僕は疑問符をつけたい。
 
ドリンクホルダーのカバー(スライド式)のとってつけたような木目調化粧パネル等「安い部材を高級っぽくみせようとする」内装にもまた新興市場の影響(&コスト計算)が・・と考えると、ちょっと哀しくなります。

 
【総評】
今回の320d xDrive Mスポーツの試乗を通じて僕が感じた良い点と残念な点を整理して、総評としたいと思います。
 
良い点
・F系より着実に向上した車内の遮音性(僕はエンジン音が聞こえないのは嫌いですが)
 
・Dセグでも重量級に属する1,680kgのボディがもたらす重厚感・安定感
 
・乗り込んですぐにピタッと決まるドラポジと、サイドサポートを含めたシートの出来
 
・xDriveでも雑味を生じさせていないステアフィール(注:個人の感想です(^^ゞ)

 
残念な点
・BMW史上最大の汚点と言いたいほどのタコメーター裏返しデザイン(エンジン回転数を見るのが嫌になるし、メーターパネル中央に表示される情報が無駄に多すぎて運転に集中できん!)
(上部の発光は、ドライバーの居眠りやよそ見を警告するためのセンサーの光で、写真には写っても実際には見えませんが、あんな紫光線を常時顔に照射されていると思うとなんか不安になります・・)

この珍妙な形のメーターパネル(全面液晶)ですが、BMWは「キドニーグリルを模した」と自慢しているようです。(一代限りで消滅した某トヨタクラウンの王冠グリルを思い出します)

しかし、運転を楽しむ際に見るべき情報を瞬時に掴むにはこの変形メーターと反時計回りタコは全く不適です。速度計も回転計も、真円で目盛が等間隔で時計回りでないと役に立たないんです。

本国仕様では、グレードによってメーターパネルのデザインが異なるそうで、この「ガンダムメーター」は上位グレードだけらしい。

元に戻せとまでは言いませんが、全面液晶なんだからせめてソフトウェアの仕様で、従来型のメーターもユーザー自身が選択できるようになって欲しい。


・ステアリングリムが太すぎて疲れる(手が小さな人は、危ないので買ってはいけないと思います)


・もはや中国市場しか眼中にない(としか思えない)内外装デザインの迷走と無駄な仕掛けの数々(自動開閉グリルフィンとか両手放し後退システムとか声でエアコン操作できるとか)
 

・日本導入はxDrive(四駆)一択しかないため、ディーゼルの燃費メリットを生かせていない

 

このクルマを新車で購入するとしたら、必要なオプションを付けて諸費用含めたらおそらく700万円前後にはなると思われます。
 
それでもあえて選ぶ理由を挙げるとすれば・・
・冬季は必ずタイヤを替えて雪道に備えるような地方なら、フルタイム4WDの恩恵を十分受けられるでしょう。
 
・ボディ剛性先代比50%upとBMWは謳っているそうですが、それを踏まえるまでもなく、衝突安全性能はいまだ国産車の比ではありません。事故の補償は保険でカバーできても、健康(体の安全)は一旦損なってしまったら元には戻りません。そこにお金をかける価値を見出せる人なら。
 
・ガソリンモデルとの価格差を燃費で取り戻すには20万km以上乗らないと割が合いませんが、ガソリンモデルには真似のできない強力なトルク(320i=30.6kgm・320d=40.8kgm)を備えています。
 
例えば家族四人で高速を長距離移動するような場面で、320iだと登り坂で思うように加速せずもどかしさを感じるような場面でも、320dならスイスイ(最大トルクは、以前僕が乗っていたE92_M3と同じです)



以上、長くなりましたが、320dxDriveの試乗記を終わりたいと思います。なんか、自分で考えていた以上に辛口のコメントになってしまいましたが、これも僕のBMWへの偏愛ならではの想いです。
 
誇りも伝統もかなぐり捨てて中国市場でのメルセデス・アウディとの不毛な覇権争いに身を投じてしまったBMWの迷走を、いずれ滅びゆく「騎馬民族」の一人として本当に懸念しています。
 
残念ながら、ティーザー的に情報が見え隠れする次期4シリーズ&M4には、BMWの改悛・原点回帰の兆候は僕には見えません。
 
このまま、新興市場の要求に応じて各車種のボディの巨大化を止めず、自動運転やEV(電気自動車)への道を突き進んで、それでもなお「駆け抜ける歓び」は変わらず備わっています、などと妄言を吐くような事態になるとしたら、その時は僕自身がBMWから卒業する時かもしれないと思っています。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。