前回に引き続き、1Mの第一印象です。
3枚目の皮は、ステアリングに装備されている「Mボタン」を押したとき。
Mボタンは、E46_M3にもE92_M3(Mドライブパッケージのみ)にも装着されている‘ひみつの’ボタン。
E46と1MのMボタンは、スロットル制御やエンジンのマッピングを変更してレスポンスやパフォーマンスを上げるためのもの。(E92の場合は登録した個別設定の呼び出し)
1Mは、ボタンを押すとメーターパネルに「SPORT」と表示される。BMWは、じつはこのモードこそ、クルマ本来の(BMWが狙う)パフォーマンスを余すところなく発揮させる「標準モード」としたいのではないだろうか。
あえて始動時にデフォルト(標準)でおとなしい(ひつじ)モードに設定しているのは、燃費やCO2排出基準をクリアするための苦肉の策なのかも。
ともあれ、走行中にMボタンを押した途端、まるでニトロを噴いたようにドカーンと加速する様は、檻に閉じ込められていた猛獣が野に放たれた瞬間の歓喜の躍動のようにも思えます。
また1Mには「Over Boost」機能が装備されていて、ボタンによる切り替えなどではなく、アクセルをフルスロットルで踏み込んで4,000rpmを超えると自動的にオーバーブースト状態となり、最大トルクが45.9kgmから51.0kgmにまで引き上げられる。
この51.0kgmというオーバーブースト時最大トルクは、最新のM2(F22)のスペックと全く一緒。車重が軽い(1,580kg:1,495kg)分、互角の勝負(何の?)ができそう。
安全に踏める場所で、Mボタンを押してさらにアクセルを踏み込み、オーバーブーストを試してみました。
・・・
笑うしかないです。
体が置いていかれるような暴力的な加速と、前輪が浮くのではないかと思うほどの後輪の強烈なトラクション。シートのサポートがしっかりしていなかったら、体を支えることすら難しい。
それでも決然と踏み続けると、直進にもかかわらずDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)が頻繁に介入(インジケーターが点灯)してタイヤがグリップを失わないよう、細かくトラクション制御が行われている。まさしく「電制」の恩恵に他ならない。
加速は、今まで乗ったE46_M3のみならず、E92_M3さえも間違いなく凌駕します。絶対的なパワーはE92_M3に及ぶべくもない(420PS:340PS)けれど、車体が軽いということ(1,630kg:1,495kg)が中低速における加速時にはこんなにも影響するのだということを、身をもって実感しました。
Mの末っ子は、そのおとなしいスタイルからは想像もつかないくらいの、とんでもないやんちゃ坊主(もちろん褒め言葉です)でした。
僕はこの1Mに、雪豹号(Snow Leopard)という愛称をつけようと思います。
まるでMacのOSのバージョンみたいな名前ですが、真っ白な筋肉質の躯体に秘めた獰猛なパワーが、岩山を自在に駆けるネコ科の猛獣ユキヒョウを連想させます。
久しぶりに乗る左マニュアルの感触もすぐに思い出しました。ギアをリバース(バック)に入れるとき、手首を不自然に捻じ曲げなくていいのも地味に嬉しい。
やんちゃな雪豹号とは、時間は少しかかるかもしれないけど、とても親密になれそうな予感がしています。
以上が、納車6日目時点での、1Mの第一印象になります。後日この文章を見た僕は、何を思うのか。楽しみでもあり、ちょっと怖い気もします。
ハンドリングなどを含めた詳細なレポートはまたの機会に。
E46_M3を乗り継いでくれた後輩のもとへ。
フルノーマルだったM3が、いつの間にかサーキット仕様のように大変身。
なんだかんだで、既に100万円以上かけているそうです。まださらに変わりますとのこと。
・・ちょっと複雑。でも、とても大事に乗ってくれています。