営業さんからの提案というのは、「委託販売」のシステムだった。
車を一定期間お店に預けて、その間に売れれば、買い取りや下取りよりも有利な金額で次の車を手にできる。
相談の結果、買い手がつけばどうにか件(くだん)のASK車を購入できそうなめどはついたけれど、問題は万が一M3が売れなかったら?
その質問に営業さんは、「うちはこれまで委託販売成約100%の実績があります。お客さんの車(M3コンペティションMT)は、現在全国どこからも売りに出ていない希少車ですから、きっと売れると思います。」
それでもなお食い下がって、「もし本当に売れなかったら?」と重ねて質問すると、
「その時はウチが○○万円で買い取らせていただくか、M3を返却します。でも、大丈夫です。」と自信たっぷり。
売れなかった場合の買取金額は、ディーラーの下取査定よりも高いけれど、それでもASK車の購入には大いに差し障りがある。
数日間熟考の末、委託販売に賭けてみることにしました。
そう、僕にとって今回の買い替えは正直言って「賭け」そのものでした。車という大切なパートナーを選ぶ岐路を「賭け」と呼ぶのは極めて不謹慎だと思いますが、それにはまた深い事情がありまして(春というのは人事異動の時期ですねぇ)・・・(ここでは割愛させていただきます)
M3が首尾よく売れれば、僕とASK車の間に繋がる縁があったということ。
売れなければ、蜜柑号とこれからも仲良くしなさいということ。
もちろん、お店による買い取りは選択肢から外す。ローンに加えこれ以上の追加負担はわが家の財政破綻に直結する。M3の返却に至った場合は、陸送費用その他それなりの負担が発生するけれど、それは仕方がないと割り切るしかない。
・・・というわけで、心の準備もうまくできないまま、4月初旬にわが蜜柑号は遠く本州の彼の地へ旅立っていったのでした。
おまけのエピソードをひとつ。
委託販売の依頼はしたものの、M3はどうやって運ぶんだろうと思っていたら、お店が陸送業者(キャリー)を手配して積みに来ます、とのこと。
日程や時間は直接業者さんとやり取りしてくださいと言われていたのだけれど、ある平日の夕方突然携帯に電話がかかってきて、「近くまで来てるんですけど、今から積みに来ていいですか?」って。
ある程度荷物は整理していたものの、まだ完全に下ろせていないし、何より最後の洗車をしてないし。
でも、洗車してないから今日はだめですというわけにもいかず、ばたばたと準備をして待ち合わせ場所(近くの国道の交差点脇)へと蜜柑号を走らせる。
道路端に停車していたのは、すでに4台の車を積んでいる大きなカーキャリー。「載るのかな」と心配になりつつ、蜜柑号のスマートキーを二つ、業者さんに渡す。
業者さんに「書類にサインしてください」と頼まれ書類に目を通していると、「あれっ?」という業者さんのあわてたような声。
じつはその時、大変なことが起こっていたのでした。
続きは次回に。