ディーラー入庫の際に、現行3シリーズのクリーンディーゼル、320dのツーリングワゴンに乗る機会がありましたので、レポートします。
試乗した個体は、320dツーリング(F31)のLuxury。標準価格は5,490,000円(税込)ナリ。
タイヤは、225/50/17サイズのBSポテンザS001_RFT(ランフラット)。
Mスポーツではないサスペンションと、ポテンシャルの高いこのブリヂストンタイヤの組合せは、果たしてどんな乗り味を見せてくれるのか、興味津々で乗り込む。
乗り込んでまず戸惑ったのが、シートのサイドサポートの頼りなさ。
2台のM3を乗り継いでいる僕にとっては、腰と肩のサイドサポートがしっかりと体を支えてくれることに慣れているせいか、本革ではあるけれど平板なシートの形状にどうしても違和感が。
シフトレバーは電子制御で、P(パーキング)モードもスイッチひとつ。サイドブレーキが電気式ではないのは、BMWならではのこだわりなのかな。
エンジンスタートスイッチを押した瞬間、ディーゼルであることを意識せざるを得ない。
家族は、「トラクターみたいやね」と言っていたけど、トラクターはちょっと言い過ぎにしても、スポーツドライビングのイメージとは程遠いディーゼル特有の「ガラガラ」音。
発進加速は、出足だけやたら元気のいい国産車のCVTのようではなく、極めて上品で滑らかに加速してゆく。
しかしその加速は決して「かったるい」と感じるものではない。
それもそのはず、320dが積むN47D20Cディーゼルエンジンは、最大トルク38.7kgmを、わずか1,750rpmから発生させる。
このトルクは、E46_M3をはるかに凌駕し、愛車蜜柑号(E92_M3)にも迫ろうかという力強さ。
パワーも184馬力あって、1,620kgの車体を走らせるには必要十分だろう。
ちなみに、このモデルの前後重量配分は、前軸780kg、後軸840kgの、前後比48:52。前席に二人乗車なら、ほぼ50:50に近くなる理想的なバランス。
ブレーキのフィールも、踏み始めこそわずかに反応の鈍さを感じることはあるものの、踏み増していくと踏力に比例した充分な制動力を出してくれ、全く問題はない。
このまま書き続けると、際限なく続きそうなので、簡潔に○×で整理してみたいと思います。
まず、良いと思ったところ。
・圧倒的な燃費とコストパフォーマンスの良さ。
約80kmほど、市街地、峠、都市高速道路を走ったところでは、平均燃費は約16km/l。
しかも軽油だから、途中で給油した時の価格はなんと88円/l(税別)!
ハイオクと比べると約2/3の安さなので、燃費比較するなら、蜜柑号の1/3で済むことになる。
これは、かなり魅力的です。ちなみに、ガソリン仕様の320iツーリングLuxuryとの価格差は23万円。購入時には減税の関係でさらに差は縮まるはずなので、実質、長距離を走るなら数年で元は取れるはず。
・サスペンションとタイヤの相性の良さ
標準仕様のサスと、17インチランフラットタイヤの組合せは、非常に相性がいいと感じます。市街地では路面の凹凸を適度にいなし、舗装の荒れた路面でも不快な突き上げを感じることはない。
それでいて、雲の上を滑っているような妙な浮遊感や、タイヤの接地感の欠如もなく、路面の状況はステアリングを通して的確に伝えてくれる。
ワインディングに持ち出して少し負荷をかけてやると、前後同径の225タイヤはしっかりと路面を捉え、Rのきついコーナーでも姿勢を乱すことはなかった。
ハンドリングの素直さとあいまって、この感覚は、運転していて「気持ちいい」と感じるレベル。
おそらく、Mスポーツになると、タイヤは18インチとなり、サスも締め上げられて、乗り心地は硬くなる。僕なら、あえてMスポーツにしない選択をすると思います。
次は、ちょっと残念に感じたところ。
・進化しても、音はやっぱりディーゼルだった
家族が「トラクターみたい」と評したエンジン音。遮音そのものは優秀で、運転中にエンジン音が煩いと感じることはなかった。でも、やっぱりディーゼルエンジンの「ガラガラ」という音は、僕が求めるスポーツドライビングのイメージには合わない。
BMWの専門チューニングメーカーALPINA(アルピナ)は3シリーズのディーゼルモデル(D3ビターボ)もラインナップする。もし、試乗などできる機会があれば、アルピナがディーゼルをどのように料理しているのか、とても興味があります。
・アイドリングストップの躾
以前、2シリーズのActive Tourer(218d)に試乗した時に気になった、アイドリングストップして再始動するときの振動と音。
残念ながら、上位カテゴリの3シリーズでも大差ありませんでした。ガソリンエンジンと比べると、明らかに音も振動も大きい。僕の蜜柑号は4,000ccV8エンジンだけど、リスタート時のマナーは極めて静かで滑らかです。
そろそろ結論を。
320dツーリングLuxury
ディーゼルではあってもBMWらしい、運転する歓びを確実に味わえるモデルです。特に、ハンドリングと足回りは優秀。僕ならあえてMスポーツは選択しません。
運転モードの切り替えは、エコプロ、コンフォート、スポーツ+の3種類あり、明確に味付けの違いを感じることができます。スポーツ+モードにすれば、パワー不足を感じることはほとんどないはず。
ガソリンモデルとの比較をするのであれば、圧倒的な燃費と軽油の安さに魅力を感じるならぜひ。
満タン給油(約6,000円)で、余裕で1,000km以上走ります。将来もしハイブリッドと組み合わされるようなことがあったら、いったいどれだけ走るんだろう。
その一方で、「どんなに進化しても、ディーゼルはやっぱりディーゼル」と再認識したのもまた事実。
マツダが世界に誇る最新のSKYACTIVE-Dを採用するCX-3には、ディーゼルエンジン独特のカラカラ音を低減する「ナチュラルサウンドスムーザー」がオプションで用意される。
その装着車の音も聴いてみたことがあるけれど、やっぱりディーゼルがガソリンエンジンを‘偽装’することは不可能だと感じました。
ディーゼルモデルの長所と短所を明確に感じることができた、良い機会となりました。