Active Tourer 試乗記(その2) | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

(その1より続く)


タイミングを見計らって、車線変更を何度か試してみる。ステアの反応は極めて素直。パワステは電動電子制御だけど、妙な感触を手に伝えることはなく、素直で自然な反力を返してくれる。


車の動きも、重心の高さを意識させることなく素直に曲がっていく。路面不整の処理も、前ストラット・後マルチリンクのこのクラスにしては贅沢なサスペンションのお蔭なのか、不快な突き上げもなく、それでいてフワフワとした収まりの悪さもなく、フラットに近い感覚で、ここが「BMWらしさ」と言えなくもない。


ただ、FF(前輪駆動)であること、前に重量が嵩んでいることは、目をつぶっていてもわかる。


以前から気になっていた前後重量配分は、車重1,500kgの218dで、前890kg:後610kgと、ほぼ6:4。


前後でこれほどの重量差があるBMW車は、おそらく史上初めてではないだろうか。


このフロントの重さは、走る(加速)・曲がる(操舵)・止まる(減速・停止)のすべてのタイミングにおいて強く意識せざるを得ない。ブレーキの踏み方ひとつにしても、パッセンジャーになるべくGを感じさせないようにマナー良く止まろうとするなら、右足の動作にミリ単位の繊細な操作が要求される。


減速時の不自然なGのかかり方は、もしかしたらエネルギー回生ブレーキの影響かもしれない。いずれにしても、ちょっと気になる挙動マナーの不自然さではある。


その他、気がついたこと。


気になったのは、アイドリングストップ動作時の振動。自動停止後、エンジンが再始動するときの「ブルルン」というやや大きめの振動が、市街地で頻繁に繰り返されるとやはり気になる。もちろん嫌なら燃費の悪化と引き換えにOFFにもできるし、ディーゼルだから、ある程度仕方ないとは思うけど。


ディーラーの担当さんによれば、エンジンレイアウトやマウントの仕方、パーツにも影響されるとのこと。2シリーズという車格を考えれば、あまりお金をかけられない部分ではあるだろう。


また、高いシートポジションのお蔭で視界は良好。後席には座ってみていないけど、後ろからの視界にも考慮したレイアウトになっているとのこと。


だけど、ノーズの先は低くスラント(傾斜)していてドライバーからは全く見えないので、ポジションが高いにもかかわらず車体感覚は掴みづらい。女性ドライバーをもターゲットにするなら、前の見切りには何らかの配慮が欲しかったところ。


あと、フロントガラス下端はかなり前方に傾斜していて、ほぼ平坦なダッシュボード上面が約50cmもテーブルのように続いている。まるで一世代前のビートルみたいだと思ったけど、フロントガラス前面だから物は置けないし、なんとも中途半端なスペース。


そろそろ結論を。


自分がBMW乗りだと知って、「BMWって、ぶっちゃけどうなんでしょう?」って聞いてくる人はけっこう多い。その中に、子どもが小さい20~30歳代の、いわゆるファミリー層ど真ん中の人ももちろんいる。


その人たちに、「これ、いいから乗ってみなよ」って勧められるかといえば、正直言って厳しいです。


理由。


試乗したアクティブツアラー218dの車両価格は3,530,000円。必要なオプションを付けて諸費用を含めば400万円を超えるのは確実。


競合する国産車たちなら、少なくとも50~100万円は安く買えるだろう。アクティブツアラーに、その価格差以上の選ぶ価値があるかと問われると、正直、厳しい気がします。


それでもあえて勧めたいケースがあるとすれば、通勤で高速を常時使用して、走行距離が年間20,000km以上あり、なおかつ休日には子ども連れでレジャーも楽しみたい人。


SUVタイプがいいけど、機械式駐車場の制限で全高が高い車には乗れない人。(アクティブツアラーは全高1,550mmで立駐OK。X1は1,575mmでNG)


ただ、新車にこだわらないのであれば僕なら320dツーリング(F31)の認定中古車のほうを勧めたい。3シリーズなら、FRレイアウトならではのBMWらしさを堪能できる。


最後に。


少し前のブログで、BMWがFFのミニバンを出してきたことを「迷走か、英断か?」と書きました。短時間ではあるけれど、アクティブツアラーに実際乗ってみて、僕としては残念だけど現時点では、「BMWの迷走」だと判断せざるを得ない。


ところどころにBMWならではのこだわりや‘らしさ’を感じさせてくれるものの、こだわりを持って「これでなければ」という競合他社を上回る決め手に欠けるのも確か。


とはいえ、以前からFFモデルを出し続けてきたメルセデスやアウディに販売台数で水をあけられないためには、従来のように「走り」にこだわる人だけをターゲットにしていては太刀打ちできない、という「お家の事情」もあるのだろう。


BMWエンスーの自分としては、現時点で「迷走」と思わざるを得ない今後の方向性が、市場の動向や顧客のニーズに必要以上に振り回されることなく、これからも変わらずに「駆け抜ける歓び」を体現したクルマ造りを続けてほしい。


特に来年(2016年)はBMW創業100周年という、大きな節目の年になります。人目を惹く高額なスポーツカーもいいけれど、ぜひ、誰もが運転を心から楽しめるリーズナブルなスポーツモデルを出してほしい。欲張りだけど、左ハンドルも、マニュアルも自由に選べる設定で。BMWジャパンさん、どうかよろしくお願いします。