迷走か、英断か? | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

僕が愛してやまないBMWは、長年にわたってFR(フロントエンジン・リアドライブ)にこだわり続けてきた、いまどき珍しい自動車メーカーです。


それは、他でもなくBMWが掲げ続ける「駆け抜ける歓び」を車(メカニズム)として体現するためには、FF(前輪駆動)はあり得ない、という思想から。


FF(フロントエンジン・フロントドライブ)は、駆動輪が同時に操舵輪も兼ねるため、物体の運動力学からすればFRやMR・RRに一歩譲ることは物理学的にも異論がない。


それを裏付けるように、各メーカーがしのぎを削る、「ニュルブルクリンク最速ラップタイム」でも、わざわざ「‘FF’最速」とただし書きがつけられるほど。


しかも、車の前部にエンジンや操舵系、トランスミッション(変速機)などが集中し、後輪はいわば「回っているだけ」。


このため、前後重量配分は極端にフロント寄りとなり、前65:後35のようなクルマも少なくない。前が重いということは、言わずもがなフロントブレーキにかかる負担も大きい。


これだけ並べると、FFのメリットなんてひとつもないじゃんって思うけど、走行性能以外で実は大きなメリットが。


ひとつは、室内スペースを広く採れること。エンジンの駆動力を後輪に伝える必要がないから、ドライブシャフトを通す「センタートンネル」が要らない。ファミリーカーのほとんどがFFなのも頷ける。


もうひとつのメリットは、メーカー側にある。同等性能のFRに比べて、低コストで車が作れること。低コスト=部品点数が少なくて済む=軽量化が容易=燃費が良くなる、という二次的利点も。


僕は、上記のような数々のメリットを考慮しても、「駆け抜ける歓び」を担保したクルマづくりを続けるために、BMWは絶対にFFには手を出さない(MINIは別ブランドとして)と、ずっと思ってきました。


ところが、2年ほど前に次期1シリーズをFF&3気筒メインで出すと公式にアナウンスしたのをきっかけに、先般2シリーズのミニバン、「アクティブツアラー(5人乗り)」と「グランツアラー(7人乗り)」の2車種を実際にFFで出してきた。今後も続々とFFのラインナップを拡大していくもよう。


BMWにしてみれば、MINI(ローバー)を買収して傘下に収めてからFFの技術も十分に研究して、(BMW本体としてFFを出す)機は熟した、と判断したのだろう。


しかし僕にとっては、かなりショック。なぜって、FFもさることながら、まさかBMWがミニバンに手を出してくるとは思わなかったから。


BMWのこれまでの経営思想は、トヨタやVW(フォルクスワーゲン)のように幅広い顧客層をターゲットにするのではなく、たとえ少数であっても、車選びの基準として「走り」にこだわる人たちのためのクルマづくりを目指してきたはず。


ここにきてのBMWの‘変心’ぶりには、ちょっと暗澹たる気持ちにならざるを得ない。


BMWはいう。「FFであっても、重心高の高いミニバンでも、BMWらしい「走る楽しさ」を十分に堪能いただけます。」


じゃあ、今までのFRへのこだわりに対する説明は、嘘だったのか?そこまでして車種のバリエーションをなりふり構わず拡大し販売台数を稼いで、ドイツプレミアム御三家(メルセデス・BMW・アウディ)での数字(売り上げ)の不毛な争いに勝たないといけないのか?


自動車評論家の沢村慎太朗さんの言葉ではないけれど、なじみの老舗のちょっと高いけどめっちゃ美味しいうなぎ屋さんが、急に「お手軽居酒屋メニューはじめました」「えっ?」・・・みたいな、複雑な心境です。


とはいえ、FFのアクティブ(グラン)ツアラーに実際に乗りもしないで嘆いていても仕方ない。ぜひ近いうちに試乗して、BMWの方針の大転換が迷走なのか、それとも英断なのか、僕なりに判断したい。


どうかせめて美味しい「居酒屋メニュー」でありますように。でも、そこそこ美味しくても、やっぱりFFやミニバンに手を出すのはやめてほしいと思うのは、BMWエンスー(enthusiast)のわがままなのかなあ。