テレビのバラエティ番組で、「スポーツ界の知られざるルール」みたいなコーナーをやっていた。
出演していた卓球の日本代表・伊藤美誠選手(14)が、「国際試合では、11対0で勝ってはいけないという暗黙のルールがあるんです。」と発言。
もちろんスタジオも「へぇー」ってなったけど、かつて「卓球バカ」を自認していた自分も全く知らず、思わず「へぇー」とつぶやいてしまった。
10対0になった時点で、勝っているほうがわざとミスをして、相手に1点を献上するそうです。
ネットで検索したら、過去にも国際大会で福原愛選手がモンゴルの選手を「完封」してしまい、試合後のインタビューで“謝罪”したというエピソードも載っていたので、そういうのが本当にあるらしい。
賛否両論あるだろうが、僕は気になる。
自分が中学生のときに卓球を始めて最初に出た卓球大会。中体連や新人戦のような「公式戦」ではなく、オープン形式の市民大会で、小学生から大人まで、ひとつのトーナメントで戦う。
僕は、いわゆる「ぶっ込み」と呼ばれる第1シード下に入れられて、いきなり初戦で優勝候補と対戦することに。
生まれて初めて出た試合で相手は大人。緊張と高揚で足はフワフワ、頭は真っ白。サーブは1本も取れず、こちらがサーブするとほとんどレシーブスマッシュやものすごいドライブを決められて、あっという間に試合は終了。
1点も取れなかった僕は、悔しかったし、恥ずかしかった。
でもその一方で、初心者の僕を相手に一切手を抜かず、真剣に戦ってくれた相手を尊敬したし、感謝の気持ちでいっぱいだった。
僕がそれ以来、つらいときも苦しいときもあったけど、それでも「うまくなりたい」という一心で厳しい練習に耐え、卓球が大好きになれたのは、あのときの悔しさ、相手の立派な態度が強く印象に残っていたからだと今でも思っています。
もしあの試合で、相手が手を抜いたり、わざとミスをして僕に点をくれたりしたとしたら、僕はとても惨めな気持ちになっただろう。
そんな思いもあって、今回のことにはいまひとつ納得がいかない。
野球でも、大差がついたときの盗塁はタブー、みたいなそれこそ「暗黙のルール」があるけれど、卓球の場合の「わざとミスをして相手に点を与える」というのとは根本的に違うような気がする。
ネットでは、卓球のプロリーグの世界で、スポンサーとの絡みもあって完勝するのは嫌われる、みたいなことも書かれていたけど、それなら少なくとも、そんな奇妙なルールはプロの世界だけにして、アマチュアや地方の大会、ましてや中高生の大会では、そんなことが広まらないように願う。
僕はその後数多くの大会に出て、対戦相手の名前はほとんど忘れてしまったけれど、あのときの相手選手の名前だけは30年以上経った今でもはっきりと覚えています。
上松さん、下手くそな中学生の僕を相手に、真剣に試合をしてくれてありがとうございました。あなたのおかげで僕は、卓球がもっと大好きになって、練習に打ち込むことができました。
皆さんは、どう思いますか?