あなたに免じて | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

今日は久々に、クルマではないお話。


とあるきっかけで、クレーム対応に関わることに。


事件が起きた場所も組織も管轄も全く違うのだけれど、なぜかうちの部署でお話を聞くことになり、相談に来られた人の話を丁寧に聞き取ってゆく。


相談に来られた方は、席に着くなり堰を切ったように喋り出し、頬を赤く染め息を切らせ、時には大声を張り上げて悔しい気持ちを切々と訴えられる。


でも、お話の筋はちゃんと通っていて、理不尽なことは言っていないし、もし事実ならば苦情を言いたい気持ちも良く解る。


私が相談を受けるときに心がけていること。


相手の話を否定しない。話の腰を折らないで、最後までちゃんと話を聴く。途中でけっして時計を見ない。


どんな時でも、この三つはできるだけ守れるように頭に置いて話を聴く。今回も、来られた方が次第に落ち着いて、表情も言葉も少しずつ穏やかになっていくのがわかった。


じっくり時間をかけて話を聞いた後、とりあえずお引き取り願って、今度は苦情の相手方から話を聞く。


ところが、どうしても「知らぬ、存ぜぬ」の一点張りで、全く非どころか関与さえも認めようとしない。状況的には、どう考えても相談者のほうに分があるように思えた。


事実関係に食い違いがある場合は、当事者同士でやり取りしてもらうのが一番なんだけど、感情的なもつれも入ってきて、事態はどんどんややこしくなっていく。いかん、何とかしなければ。


内心、巻き込まれちゃったなー、と思いつつ、自分からの提案で仲介役として相談者と相手方の話し合いに同席することになりました。


話し合いの場は、当然だけどのっけから息もしづらいほど重苦しい雰囲気。硬い表情のまま挨拶を交わして本題に入る。


苦情を言われた側は、相談者の話の筋が通っているだけに非常に苦しい立場。しかし、最初に「知らない」と否定しただけに、今さら後には引けないのだろう。責任逃れの言い訳に終始しながら、「知らなかった」を繰り返すのみ。


ついに相談者が堪忍袋の緒を切らし、裁判を起こします、と。
「お金じゃない、私自身の名誉のためです。たとえ何十万円かかろうと、真実を明らかにします。」


これはまずい。訴訟が受理されるかどうかは別として、それだけは避けないと。


話し合い開始から一時間がたっても、話は堂々巡りで一向に埒(らち)が明かない。自分はそれまで立会者として口をつぐんでいたけれど、どうにかしなければ、という必死の思いで相談者に話しかける。


○○さん・・・


お怒りはごもっともです。私が○○さんなら、全く同じ思いを抱くと思います。裁判を起こしてでも、というお気持ちは良く解りますが、それだけは何とか思い留めていただけませんか。先方も、知らないとは言ってありますが、ご迷惑をおかけしたことは認めて、こうして謝っておられますし。なんとか、今回はこらえていただけませんか。


・・・


沈黙が、永遠にも思えた。


相談者が、静かに口を開く。


・・・わかりました。今回だけは、あなたの誠意に免じて、これ以上のことは言いません。しかし、もし同じようなことがまた起きたら、その時はきちんとさせていただきますから。


相手方の面々の、安堵のため息が聞こえてくるようだった。何より、自分自身が緊張の糸が切れたように体の力が抜けていく。



ただ、今でも自問を繰り返し、答えは出ない。


「あなたに免じて」と言われることは、果たして最良の着地点だったのだろうか。


相談者の方がどう感じてあるのか、今でもずっと気になっています。