M3がようやく復活。クラッチを新品交換したM3は、まるで別のクルマのよう。クラッチペダルは気持ち重くなり、ミートポイントが以前よりもかなり奥に。
手前でミートする癖がいつの間にかついてしまっていたので、発進の際に何度かエンストしそうになった。なので、エンストしないように回転を上げて繋ぐので、まるで初心者。けっこう恥ずかしい。
ディーラーで、取り外したクラッチ板と、新品の部品の写真を撮っていてくれた。並べると、磨耗したクラッチ板の厚みは新品の約半分しかない。滑って当たり前。気のせいか、帰りの高速でのパフォーマンスもワンランク上がったような気がする。
ちなみに、納車に向かう行きの車(代車)は、マツダのアクセラ。静かだし乗り心地もいいし、燃費もいい。
平均燃費計は、リッター当たり17km超。でも、まともに走るのはせいぜい70km/hまで。それを超えると、エンジンは苦しそうに仕事をし、ボディは悲鳴を上げ始める。
ほとんどの日本のファミリーカーはこのアクセラと同じように、市街地で多用する60km /h 程度までの速度域にパフォーマンスの重点を置いている。なので、発進加速(出足)はすごくいいけど、上まで回すほど楽しくなくなるという瑕疵をかかえている。それがわかっているので、高速で飛ばしたいとかまったく思えない。
閑話休題、最近テレビの村上龍さんがコメンテーターを務める某番組に、トヨタ自動車の豊田章男社長が出演して、トヨタが最高益を更新し、全世界販売台数1,000万台を世界で初めて達成したことを大々的に喧伝(けんでん)なさっていた。
そのこと自体云々(うんぬん)するつもりは毛頭ないけど、ひとつだけ納得できないことが。
それは、新型クラウンの売れ行きが好調だという理由の説明の中に、プレス技術の進化によってタイヤハウス部分の鋼板を内側に折り込めるようになったため、タイヤを従来より外側に出せるようになり、デザイン上の迫力が増した、と説明していた部分。
それを、いかにも職人気質ふうの技術者さんに誇らしげに言わせていて、あれを見た世の中のオトーサンたちは、「おお、やっぱり日本の技術力はスゲー」と単純に感心して、「いつかはやっぱりクラウン」なんて思うのかなあ。
で、何が納得できないかというと、プレス技術の件はトヨタが初めて開発したものでもなんでもなく、10年以上前に出た僕のM3はフツーに実現している。
タイヤホイールのドレスアップで、フェンダーぎりぎりまでタイヤを外側に出すことを「ツライチ」と呼ぶけど、M3はスぺーサーなんか入れなくても、ノーマル状態でほぼツライチ。
つまり、きちんとコストをかければできることを、さもトヨタの技術の結晶であるかのように吹聴しているのが、テレビを見ていて可笑しかったし、また残念でもあった。
コストをかけてタイヤを外側に出した分、その埋め合わせのために一体どれだけの下請け、孫請けの会社が厳しいコストカットの犠牲を強いられたことだろう。
売り上げ台数で世界一を達成したトヨタが次に目指しているのは、ドイツ御三家(メルセデス・BMW ・アウディ)のようなプレミアムブランドのイメージ。
でも、真似をした技術をさも自分たちの手柄のように自慢し喧伝する某アジアの国のようなことをしているうちは、追いつくことはおろか、近づくことさえできないだろう。
豊田社長のクルマづくりに対する熱い情熱は伝わってきた。
「運転して楽しいクルマをつくろう!」
社長のその言葉を、僕は信じたい。がんばれ、トヨタ。