今日は写真のお話。デジタルカメラの普及が進んでしばらくの間、コンデジ(コンパクトデジカメ)と一眼レフを併用していたけれど、一眼レフのほうはフィルム(銀塩)カメラをかなり後まで愛用し続けていた。
その時期のデジカメは、せいぜい200~300万画素程度で、機能も性能も、そして写真の出来映えも、歴史の長いフィルムカメラに遠く及ばなかった。ある文献によると、フィルムをデジタルの画素に置き換えると、概ね800万画素程度と書かれていたが、自分にはそれ以上の差があるように感じていた。端的にいえば、フィルムで撮るときちんと表現できる「奥行き」が、デジタルだとなぜか平板になってしまう。
風景を撮りに行くときは、リバーサル(ポジ)フィルムを好んで使っていた(FUJIのベルビアやプロビアなど)。リバーサルとは、現像したときにネガ(反転)画像ではなく、ポジ(正立)画像として出来上がるフィルムのこと。現像に出すときに、仕上がりをスリーブ(ネガと同じ)か、マウント(スライドフィルムの状態にして1枚ずつカット)を選択する。
通常のネガフィルムと比較したリバーサルの良さは、撮った写真を目で見たままにより近い透過光で見られること。自分の思い通りのイメージで撮れたポジを、ライトBOXに載せてルーペで覗いたときの感動は何ものにも代えがたい。
デメリットは、撮影後の修正・調整(露出など)が一切きかないこと。現在のデジタル画像のようにボタン一発で修正して自分の腕の未熟を小細工でごまかすことは一切できない。まさに一発勝負。
だから、撮影の際は1枚1枚が真剣勝負だった。一日の撮影で持参するフィルムはたいてい3本。36枚撮りだから、100枚余り。1本現像してスライドにすると、だいたい3000円以上かかっていたから、お財布的にもそれが限界だった。
シャッタースピードや絞り、ホワイトバランスを、経験や勘を頼りに合わせても、結果は現像に出すまでわからない。しかも、自分の意図を反映させようと数値をいじれば、失敗のリスクが増大する。
遠くまで出かけて、思いを込めて撮影したのに、出来上がった写真はほとんど真っ黒で何が写っているのかよくわからない惨状を呈したときも一度や二度ではなかった。
今はもちろん、コンパクトだけでなく一眼もデジタルを使う。写真の撮り方も明らかに変わった。大容量のメモリーカードに、枚数を気にせずバンバン撮り溜めていく。同じ構図で、少しずつ露出を変えながら何枚も。動きのある被写体なら、連写でとりあえず枚数を撮って、後からベストショットをチョイス。最初からトリミング(切り抜き)することを想定して撮ることも。自分でそうしながら、「ずるいよね」って、思ってしまう。
写真に対する情熱は、初めて自分のお小遣いを貯めて買ったリコーの一眼レフXR500を手にした高校生の時とぜんぜん変わっていない。
だけど、「この一瞬、この一枚」に賭ける一期一会の気持ちや緊張感、ドキドキを味わうことは、極めて少なくなってしまった。デジタルの便利さを享受しながらも、そこに一抹の寂しさを感じる複雑な、私です。