第五章は、フレイザー委員会報告書というタイトルです。これは重要です。

 

なぜ統一教会に関する緻密な調査を行う委員会が立ち上げられたかというと、それに先立って、在韓米軍の撤退の計画があり、韓国政府がそれを何とか止めようと工作するという出来事があったからです。

 

韓国政府が、工作部隊として使ったのがKCIAと統一教会で、統一教会は日本で試みたように、政治家に接近し、秘書を派遣したり、選挙を手伝ったり、金を配ったりして、自分たちの味方に引き入れようとしたようです。

 

これがコリア・ゲート事件と呼ばれていて、その時、統一教会に問題意識が向けられ、それでフレイザー議員が代表となり委員会を作り、報告書が出たという流れみたいです。

 

日本ではこうした動きが全くありませんでした。

 

なぜこの日米の違いが出たのかは、ひとつの重要なテーマになるかもしれません。

 

僕のざっとした感想では、やはりヨーロッパ系の人たちの意識魂的な能力があって、ぬえのようにとらえどころのない統一教会でも、意識の力で照らし出そうとする力を発揮することができたのではないか、と思われます。

 

日本人の場合は、とらえどころのないものを解明しようという気概はなくて、臆病な人は避けるし、冒険心のある人は利用しようとするのだろうと思います。日本の昔話で異界との出会いが描かれる時には、だいたい怖がって避ける人と無謀にも接触する人の両方が出てくるんじゃないかと思います。それが何であるか、詳しく調べようとする人は出てこないんじゃないでしょうか。

 

フレイザー委員会は、可能なかぎりの情報を集め、詳細な分析をしていますが、それでも統一教会が、経済、政治、宗教の三つの分野にまたがって、アメーバのように増殖、浸透する傾向を持っていたため、省庁の縦割りの弊害にぶつかって、調べきれない部分があったようです。

 

それでも報告書の最後に、今後、省庁横断的な調査機構を作って、継続して調査するように要望を出していたようです。

 

それでフレイザー委員会報告書は、最初に統一教会の危険性を警告するものともなったし、今後の統一教会の調査の方向性を示すものにもなったようです。

 

日本は、このフレイザー委員会報告書を完全に無視した形ですが、イギリスやフランスではこれを取り入れ、自分たちの調査に生かしていったようです。

 

これまでの章を読んできた印象では、統一教会は、朝鮮半島統一の夢については、本当にそれを信じているかもしれないが、他のことは全部方便という感想を持ちました。

 

そして教義も全部、でっちあげのように感じられます。教祖が女性とセックスすることで、人類の血の汚れが清められるという教説については、単にあなたがセックスをしたかっただけでしょ、というふうに感じられました。

 

そして最後には、朝鮮半島統一についても、どうでもよくなっていたのかもしれないとも思えます。全部が嘘で塗り固められているうちに、最初の本当の思いもどこかに行ってしまうということがあるんじゃないかと思うからです。

 

そして教団の全体は、その都度の都合によって、人々の警戒を避けるために宗教組織が背後にあることを隠したり、税逃れをするために宗教組織であることを打ち出したり、企業群で働く信者たちのやる気を引き出すために宗教的な動機付けをしたりと、都合によって宗教を打ち出したり引っこめたりしています。

 

そして経済団体と宗教団体を実際にはつなげて、人や金を相互に移動させたりもします。さらには、工作をして、議会や軍に浸透していこうとします。

 

ダミー会社やフロント企業など、多数の企業を擁して、全体像がつかみづらくしてあることは、警戒されずに秘密裡に活動できる利点もありますし、調査された時にしっぽをつかまれにくい利点もあるようです。

 

そして、問題を指摘する人に対しては、議員だったら落選運動を起こしたり、関与がのありなしが判明していないものの、不審死が起きていたり、裁判を起こしたり、ということがあります。

 

以上のような話を見ていくと、統一教会は何かの理念の実現のために組織された団体という感じではなく、人間社会をむしばむ病気のように感じられます。

 

有田さんは、統一教会の難点は、ひとつは霊感商法で、もうひとつは人気商品を作っている営利企業が実は統一教会系で、ただ商品を売るだけでなく、宗教的勧誘の拠点でもあることだと指摘していました。とにかく全部が混ぜ合わされていて、統一教会の利己主義のために組織されている、という感じがします。