ヒトミ・ルートが少し進みました。18年前の事件の概要が明らかになってきました。

 

プレイヤーの目の前にさらされていた事実の中に、未解明のものがあって、ひとつその意味がわかると、数珠つなぎに多くのことの意味がわかってくる、という展開となっていました。

 

イリスに似ているがイリスとは違う遺体が誰なのか、それがわかると、多くのことがわかってきます。

 

イリス、オウタ、ミズキの人生は平凡なもので、自分の身にも覚えがあるような内容がいくらかありましたが、ヒトミやオキウラの人生は、アウトローの世界と関わりを持っているために、平凡な人間からは少し縁遠いものとなっているようです。

 

かといって、ヒトミやオキウラが、一般人とは違う感性を持っているということではなくて、普通の大学生、普通の社会人の感性の範囲なんですが、深刻なトラブルに関わったために、人一倍の勇気を振り絞らなければならなくて、普通の人と比べて、勇敢であり強くなっている、ということが言えると思います。

 

深刻なトラブルに巻き込まれたのはオキウラとヒトミの同級生で、彼女に友情を感じていたオキウラとヒトミが、彼女を助けようと努力したのですが、結局、彼女が殺され、彼女の子供が残されました。

 

オキウラとヒトミは、殺された彼女の遺体を回収して、オキウラの会社の放棄された倉庫で保管しました。自分の身を守るためには、遺体を回収したりしない方が良かったのですが、殺害された上、埋められた友人を、気持ち的にそのままにはしておけなかったのかもしれません。

 

オキウラは、若い頃から暴力団と関係していて、犯罪行為の手伝いをしていたので、権力者や裏社会の事情に多少通じており、今回の殺人事件の秘密を知ってしまった自分たちが、不用意な行動をとると、自分たちまで殺されることがわかっていました。

 

それで通報はしないようにし、子供はヒトミが育てることになったんだと思います。

 

ヒトミは、自分の身を守るためにそうしたというより、子供を友人から託されたように感じていて、きっと守ると誓っており、強い思いを持っていました。また、仇討ちのため犯人に仕返しをやりかねない勢いがありました。

 

ヒトミは後に、殺し屋の仕事をしている人と恋仲になっていますが、その人と出会ったのは、撃たれて血を流しながら倒れているその人を介抱しようとしたためでした。もともと強い人が、裏社会との出会いを経て、さらに強くなったという感じがします。

 

オキウラも、裏社会と関わりを持っていましたが、そちらに染まるということはなくて、無垢な人が健やかに育って行ってほしいという願いを持ち続けた人だったと思いますが、半分裏社会に足を踏み入れているだけに、経営している芸能事務所でスキャンダルが発生した時には、懇意にしている暴力団に依頼してもみ消し工作をするなどということはあったようです。

 

ヒトミもオキウラも、つながりが深い人にだけ、深い情愛を抱いているということは言えるかもしれませんが、自分と縁のある人以外はどうなってもいいとは思っていないでしょう。

 

ヒトミの場合は学校の教師をしていて、教え子の子供たちのことは誰のことでも心配している感じでした。またオキウラは、実子のミズキや、縁の深いイリスのことを特別に深く配慮していたように思いますが、昔自分が関わった犯罪行為で傷つけた人のことを気に病んでいるところもあって、縁の深い人のことにも同情できる人だと感じました。

 

自分が守られた環境にいると、自分の身を守らなきゃとか、周りの人を守らなきゃとは、あまり思わないわけですが、危ない事件に巻き込まれた人は、自分がどう行動するかで自分や周りの人が助かったり助からなかったりするので、頑張って自分の役割を果たさなければという強い思いを持つようになるんでしょう。

 

そしてある意味で、危ない環境に慣れてもいくので、トラブルが起きた時に、フットワーク軽く動くことができる、ということにもなるんでしょう。

 

ダテは、事件捜査の仕事をしているため、別の形で、危ないことには慣れていて、トラブルが起きても素早く対応することができます。

 

そしてやはり、ダテの場合は、アイボウの手助けも大きく寄与していると感じられます。

 

アイボウの根本はエーアイ=人工知能なので、僕たちの世界で、人間を助けるものとして登場し、利用が促進され、また将来発生するかもしれない害が心配されているものと、同じものでしょう。

 

アイボウの場合は、ドラえもんと同じように、主人を支える友人的存在で、独立して動きながら、必ず主人の利益になるように奉仕する関係性を崩しません。害となりそうな部分はほとんど感じられません。

 

アイボウがダテの恥ずかしい秘密を知っても、本人に苦情を言うだけで、他の人に漏洩したりはしないですし。

 

僕たちの世界のエーアイは、エーアイそのものというより、エーアイの開発に関わっている人たちが、人々の幸せのためにという発想よりも、利益とか、ライバル企業との競争に勝つとか、市場占有率とか、そういうことを考えて作っている感じがするので、エーアイを取り巻く世界が、欲望のうごめく世界になってしまっているような気がして、そこが心配になってくるところです。

 

 

この作品は、なかなか重厚な構造になっていて、現在の事件以外に、18年前の事件もあり、またダテも何かの事件に巻き込まれた結果、記憶をなくしているらしいので、少なくとも、3重の構造があるように思えます。

 

少しずつ紐解かれていくので、奥深い印象を受けます。

 

序盤は、解明されないことが多すぎて、ぼんやりした印象でしたが、それは細部まで詰めずにいい加減に作られていたからではなくて、解明が後の章にまで取って置かれていただけだったようです。