補選の評価をいろいろ見ましたが、この結果が新しい傾向を示していると考える人と、今の風を表しているだけで根本的には変わっていないと考える人に分かれていました。

 

雰囲気が変わったとみなす人は、戦後の自民党支配の体制が、もう限界を迎えているという考えに、多数派の国民も傾いてきていると考えているようです。

 

政権交代が必要と考え、頼りない部分、信頼できない部分があっても、立憲民主党を支持しようという気分になっている、ということにも変化が表れています。それまでは「悪夢の民主党政権」という宣伝に流された面もあり、野党はダメだから自民党しかないという気分が一般的だったからです。少々ダメなところがあっても大目に見て野党支持を考え始めるということは変化でしょう。

 

変わっていないと見る人は、裏金問題の強烈な印象が残っている間に選挙が行われたので、自民党に対する怒りが表明されただけだと見ていました。

 

しばらくすると、また別の印象にさらされることになるので、違った気分となり、自民党に好意的な結果が出るかもしれません。政党や政治勢力は、一喜一憂せずに、一般有権者とつながり、風に流される人を当てにせずに、いつも自分たちを応援してくれる味方を増やすことを考えた方がいい、ということなんだと思います。

 

たまたま次の選挙も、自民党のイメージが悪い時に行われることもあるかもしれませんが、そうではないこともあり、都合がいい期待をして待つわけにもいかないので、風に左右されない政治基盤を作るために努力した方がいい、ということだと思います。

 

そもそも衆院の解散の時期は、自民党政権が時期を選べる状況なので、不利な時には選挙はやらないので、衆院については、野党に都合のいい選挙になることは、あまりありません。

 

ジャーナリストの佐藤章さんは一月万冊の動画で、立憲民主の泉代表は、早急に政権構想をまとめるべきだ、ということを言っていました。

 

佐藤さんは今回の選挙結果を根本的な変化だと見る人の一人で、国民が、自民党政治からの脱却、政権交代待望に心を決めたと考えているようです。

 

それで今からもう政権交代を見越して行動すべきと考えていて、民主党政権の時にうまくいかなかったことを考慮し、政権構想を早くまとめることを提言しているわけです。

 

民主党政権の時には、小沢さん、菅さん、仙谷さんなどが、それぞれ政権構想をまとめて持っていたそうですが、お互いの連絡調整がうまくできなかった部分があったそうです。

 

お互い協力するんじゃなくてお互い邪魔し合うような関係になったのかもしれないですし、そもそもお互いの考えていることをわかっていなくて意思疎通がうまくできなかったということかもしれません。

 

多分、今は当時よりも状況が悪くて、政権構想を持っている人があまりいないのだろうと思いますが、それは早くに政権交代があるなどとは、とても考えられない状況が続いていたこともあるかもしれません。

 

それで明るい展望が見えてきた段階で、今すぐやって、ということを佐藤さんは言っているのだと思います。前回の失敗の轍を今回は踏まないようにするには、政権構想をまとめるだけでなくて、多くの人の間で、すり合わせを行って、共通理解を持つようにしなければならない、ということも必要なんでしょう。

 

しかしまあ、泉さんは総理大臣になってみんなを引っ張っていくリーダーとして適任なのかというと、そうではないような感じがしますね。

 

最初に代表選で選ばれた時には、新しい方向性を示して、党を改革しようとしているように見えましたが、それがうまくいかなくても、反省したり軌道修正したりしないし、かといって代表を辞めるわけでもなく、地位に居座り続けているという感じなので、何がしたいのかよくわからない印象になってしまいました。

 

泉さんが指し示した方向性は、保守二大政党制を望んだ人と同じで、共産党やその他の社会主義政党を排除して、保守政党だけで政権交代可能なもう一つの政党を作るということだったように思えました。

 

具体的には、共産党と距離をとって、維新や国民民主に接近し、連携を強化しようとしていました。そしてその後、自分たちの問題というより、維新や国民民主に連携を断られ、敵対的な対応をとられたことによって、泉さんが目指した路線は継続不可能になってきました。

 

そして、それとは別に、国会内で、いつも自民党に敵対的な対応をするのではなくて、良い提案があれば協力するし、自分たちでも良い提案をして自民党に取り入れてもらうといった、小沢さんの発想(敵対的な政権交代)とは違った形で、55年体制を乗り越える試みもありました。

 

これについても、自民党が全く相手にしない態度を取ったために、どうにもならなくなりました。誠実に応じることはもちろん、利用しようとすることすら、ほとんどなかった気がします。前向きな国会論議にしようという発想は自民党にはなく、取引をする気持ちだけがあり、立憲側に自民党が魅力と思える取引材料がなかったために無視されたのだと思います。

 

泉さんのアイデアが非現実的であったのかもしれないし、やり方がまずかったのかもしれませんが、何が原因だったとしても、思い切りやって失敗したら、失敗を認めて次の人に代わるということだと、何がやりたかったのかわかるし、見ていて清々しい態度に映ると思うんですが、やろうとしたことがうまくいかなくても、それを失敗だと認めず、地位を譲るわけでもなく、人を入れ替えて自分は居座るという選択を泉さんはしているので、この人は何がしたい人なのかさっぱりわからないという印象になってしまっています。どういう意図でこの行動が出てきているのか、つながりが見えないからです。

 

利己主義とか恨みとか、ネガティブな感情の存在を予想しても、つじつまが合う説明ができません。それで、ただぼんやりしていて、つながりのある思考ができない人じゃないか、という感じがしてきます。

 

しばらくの間、野党第一党の代表者の役割を果たしてもらう人というだけだったら、誰でもいいのかもしれませんが、その人の選択、判断で、歴史が変わるといった大きな場面を、泉さんに任せたいと思う人はあまりいないんじゃないでしょうか。

 

そういう意味では、泉さんに何か注文を言うより、適切なタイミングで早く交代するように言う方がいいのかもしれません。前原さんも、保守の二大政党制を実現したかったようですが、希望の党への合流を成し遂げて、それがうまくいかなかった時点で、引責辞任したんじゃなかったでしたっけ。前原さんの方が潔い感じがしますね。

 

そして佐藤さんが言っている政権構想というのは、実際に政権を担当する時に、どういう人材の配置で行くのか、何を優先してやるのか、という具体的な措置のことを言っているだけでなくて、それを事前に国民にわかりやすいイメージとして伝えることも含んでいます。

 

誰が総理大臣になるのかということをはっきり打ち出すこともそのひとつです。

 

仮に、政権の座についた時に、どういう人選をして、どういう優先順位でやるかがきっちり決まっていても、それを事前に国民に伝えることができないと、国民の方ではわからないので、選挙の時に投票してもらえないということがありえます。

 

それでイメージを先に打ち出すことが重要になるわけですが、やはりイメージ選挙にならないように、実際の計画の方を優先してほしいという気が、僕はします。

 

やってみたら拍子抜けということになると最悪で、またその後、反動の流れが起きてしまいます。