自民党の裏金問題は、法律に違反する行為が党内に広く広がっていたことが問題視され、取り扱いのミスではなくて、意図的に自由に使えるお金を作り、それを選挙買収のために使っていたのではないかというストーリーが、見る人の心の中に浮かんでいる、ということだと思います。

 

しかし、過去には、選挙買収は大っぴらに行われていた時期もあり、その時に渦中にいた人の心の中では、これは違反ではなくて、許された戦い方だと感じられていたかもしれません。

 

それ以降、この慣習は改めようという合意が、形の上では国会、マスコミ、国民の間でできたということですが、まだ以前の習慣から抜けきらない人が大勢いた、ということかもしれません。

 

それは法律違反である、あるいはうまく胡麻化せば、ぎりぎり法律に合致しているように見せることもできる、ということだったり、法律違反ではあるが、使い道は以前のような選挙買収ではなくて、秘書給与だったり、一般的な会合の経費だったりし、使途に後ろ暗いところはない、ということかもしれません。

 

しかしそうした裏金そのものに関する問題よりも、裏金問題が浮上してきた時に、人々がどう振る舞ったかを見ると、深刻なビジョンが見えてくるように、僕には感じられました。

 

裏金問題では、不正が発覚して、これはまずいとあせったり、隠そうとして右往左往するという動きもあったかもしれません。しかしそれよりも、これを政争に利用してやろうという動きが見えたように思えます。みんなやっている様子なのに、安倍派と二階派だけが検察の捜査対象になっていて、後に独自の動きをして反感を買ったらしい岸田さんの派閥も対象に組み入れられたと聞きました。

 

裏金問題が発覚した後で、それをライバルを追い落とすために使おうという動きが見えた後で、それとは別に、火消しも必要なのか、何か責任をとったという形を作って、それで幕引きにするという演出的な動きも見られました。

 

基本的に善良な人がつい悪いことに手を染めてしまった時には、ばれた瞬間にあせってしまって、しどろもどろになるでしょう。悪事に慣れている人は、どうやって隠すかプランを考えるようですし、一番すごい人は、この機会をどうやって自分のために有利に使うかを考えるようです。

 

そして裏金問題と重なる形で起きた震災に対する対応が求められるということもありました。しかし自民党の議員にとっては、第一が政争であって、被災地のことは官僚任せという感じだったようです。官僚は前例の通りにやって、結果的には、前の地震よりも、まずい対応になってしまったようです。政争が激しすぎて、政治家で、被災地対応に真剣に当たる人がほとんどいなかったのかもしれません。

 

国民生活がどうなっていようと、自分が大臣になるために今ここで頑張らなければという発想があったんじゃないかと思いますし、あいつだけは許せない、この状況を使ってあいつの力をはぎとってやる、みたいな戦いが行われていたのではないでしょうか。

 

これを見て、自民党はもう、国政に真面目に対応する気持ちも能力もなくしてしまい、その実態を言い訳で塗り固めて、外から見えないようにする技術ばかりを磨いている、という感じがしました。

 

自民党が政治的、精神的中身を完全に喪失して、嘘をつく技術だけに頼って、国会に立てこもっている、というふうに思えました。

 

これが本当の実態であるなら、「政権交代が必要だ」という言葉は少し違うような気がします。

 

自民党は終わっていて、ゾンビのようになっていて、うつろな心で国会に閉じこもっているので、彼らが自己弁護で言っていることを気にせず、とにかく外に追い出して、残りの人でこれからどうしていったらいいか、いいアイデアを出し合い、アイデアを競い合って、新しい政治を再スタートする、と言うことが正しい、という気がします。

 

選挙で、自民党が勝ったら、あるべきでないことが起きたと見るべきだし、野党もしくは市民がかつぐ候補が勝ったら、正常な状態に少し戻せたと見るべき、であるような気がします。

 

そこまでひどい言い方をしない場合は、新しい時代に対応した政治をする気がない、古い時代の慣習を続けたい人が、選挙技術やうまい言葉の操り方で、人々をごまかして、政治の場に居座っている、と言ってもいいかもしれません。

 

言葉では、革新は危険だ、社会を国民生活を破壊すると言っていても、自分たちが、社会や国民生活を守るような動きを本当にしているのか、ということが問題になります。

 

彼らが言うことは半分に割り引いてとか、3割くらい割り引いて聞くべきだと思っていた人でも、9割とか10割が嘘である可能性については考えなかったかもしれません。でも、実際は9割、10割の線もありえるんじゃないかと思えてきました。

 

こういう実態がある場では、そこそこいい政権があるけど、もっといい政権で置き換えましょう、という話は成り立たなくて、嘘をついて居座っているごみみたいな政権を、できるだけ早く駆除するというふうに考えなければならないと思います。

 

中身がない人たちが、その実態を隠して、言葉でうまく装って、人々の信頼を勝ち取っている、という状況が、蓋を開けてみると、相当深刻な実態だったんじゃないか、ということが、僕には見えてきた気がするという話でした。

 

自民党の人たちは、特に政争においては、自分の本心を明かさないわけですが、そこで本心とは違うことを話しており、そこで既に嘘がつかれていますが、そもそも明けても暮れても、政争ばっかりやっていることが異常で、政治家と政治記者がこれが政治だというふうに見せていること自体も、嘘なんじゃないかと思えてきました。

 

政争が9割の政治なんておかしいんじゃないか、ということです。