僕は「世界樹の迷宮」や「ウィザードリー」、「エルミナージュ」のようなゲームが好きなんですが、それは歯ごたえのある戦闘が好きというわけではなくて(難易度が選べたらノーマルにします)、少しずつ進められて、その都度、進行度合いが確保できるから、だと思います。
切りがいいところまで進められたという満足感でゲームを終えられ、次もまた同じ経験ができる、というのがいいのだと思います。
しかし、あまり難しいと、難所で何度でも跳ね返されて、ほとんど進まないということがあるし、むきになって長時間やってしまう、ということになって、日常のリズムをゲームが浸食してきます。
日常を大事にしたいということもありますが、ゲームの世界に赴いて、落ち着かない気持ちになって戻ってくるというのでは、リラクゼーションのためにやっているのであれば本末転倒でしょう。
難しい敵に跳ね返されて、なかなか先に進めないということだったら、まだ納得できると思うんですが、次にどこに行けばいいかわからないとか、西から攻めても、東から攻めても、打開策が見当たらないという、迷いの中に取り残された気分になると、お酒でも飲んで憂さを晴らしたくなるほど、ストレスがたまった状態になるんじゃないかと思います。
「ハンマーウォッチ2」は、最初は、ちまちまと敵を倒して、少しずつレベルアップしていける、練る前に少しずつやるのに適したゲームという印象でしたが、少し先に進むと、そうも言っていられなくなりました。
たくさん敵が配置されていて、こちらの存在に気づかれるとワラワラと群がってくるので、逃げると、逃げた先にもまた敵がいて、集中攻撃されます。何度も死にます。
そのせいで、ダンジョンの中の構造をゆっくり見渡している余裕がなくて、中の構造を覚えることができません。中がどうなっているかイメージできないし、どこを目指すべきかもわかりません。
その他、メニュー操作に失敗して大事なアイテムをなくしてしまったり、スキルの割り振りに失敗したりして、意気消沈することが重なってきます。それで落ち着かない気持ちになってしまいました。
実際は、(キャラクターだけでなくプレイヤーも)少しずつでも経験を積んでおり、頭の中の地図の断片が相互につながってきて、ダンジョンの中が、だいたいどんな構造になっているかがわかってきます。そして行くべき場所も見えてきました。
でも事前にそうなるとはわかっていないので、途中で宙ぶらりんの落ち着かない気持ちにさせられます。
こういうふうに一度、難所に陥り、その後、それを超えて行った経験は、このゲームにとどまらず、他のゲームに向き合った時にも、応用できるものになるのかもしれません。それでゲーマーと呼ばれる人、自称する人は、新しいゲームに向き合っても、他の人とは違って、すいすいと難所を超えていくのかもしれません。
しかし視点を変えてみると、ゲームの方で配慮してもらって、メニューの構成をわかりやすくしてもらうとか、説明してもらうとか、地図を見やすくしてもらうとかすれば、ストレスは軽減されるかもしれません。
ものは考えようで、不親切なゲームを無理やり攻略すると、その分だけ、ゲーマーとしての経験が余分に上昇する、ということもあるかもしれません。
ある程度、ゲームに向き合った時に、自分の元々持っている、事態への対処法の不備があぶりだされるところがあります。そこに注目して直していくことができたら、ストーリーを享受すること以外に、ゲームの効用がある、ということになるかもしれません。
ひとつの方法は、一度に複数の問題に直面した時には、問題点をノートに書きだすなどして、心の中でコンプレックス構造を作り出さないようにすることかもしれません。それって、あまり自分の心の中で深く引き受けるべき問題でもないですよね。ゲーム内の住人にとっては大問題だとしても、そして彼らと出会った人間として見過ごしにすることが不人情だとしても、それらは架空の人物であり架空の問題なわけですから、重要度は僕たちの日常生活の方が上なわけです。
最近のゲームは親切すぎるという意見に対しては、どの程度ゲームにコミットするか、プレイする人がその都度選べるようになっている方が望ましいんじゃないか、ということを言いたい気がします。
中ボスが登場する時に、これは中ボスですよ、戦わずに迂回することもできますし、戦って戦いを楽しむこともできます。戦った場合は経験値やアイテムが得られます。と説明が出たら、リアルな感覚で世界が楽しめなくなるかもしれませんが、そういうことの示唆はあってもいいかもしれません。実際そういうことは行われていて、中ボスだけは雑魚敵とは違って、ゲージが別様に出るとかいう仕様を見かけます。それで単に大きいだけでなく、中ボスなんだとわかります。
でもまあ、何の説明もなく世界に放り込まれて、試行錯誤して事態を打開することが好きな人は、あれこれメッセージがうるさく出たら、やりづらくてしょうがないかもしれません。あるいは、指図されることが嫌いな人も、度重なるメッセージをうるさく感じるかもしれません。
資金を回収する立場の人は、全ての人に幅広く対応したいところだと思いますが、現実的には誰でもというわけではなくて、ライトユーザー方面なのか、ヘビーユーザー方面なのか、どちらを中心にするかを決めて、そこからある程度、幅を広げていくしかないのかもしれません。