未明、先週トーワブックスでレンタルした『悲愁』のビデオを観る。 

 

(ビリー・ワイルダー監督の1978年度の映画でありますな。映画というものの二重構造を捉えた一人の女性の残酷なまでも悲惨な物語を、見事に描いたリアルな人間ドラマであったですな。一種のアート・フィルムであり、まさに伝説の重みというものがヒシヒシと伝わって来る作品だったですな。その伝説の女優役フェードラに扮するマルト・ケラーが抜群に良く、『マラソンマン』と『ブラック・サンデー』しか知らなかった彼女の本気の演技を、まざまざと見せつけられた感じだったですな。元々、このようなアート系の映画は得意ではなかったけれど、ワイルダー監督のフラッシュバックを使った華麗な手腕によって、とても感動的に描かれていて、ひじょうに観易かったですな。さすがビリー・ワイルダー監督の実力を垣間見たっていう名作だったですな。タマにはこの手の映画もイイですなぁ)

 

 

  朝、梅田の梅田松竹で『座頭市』を観る。 

 

(何かと色々話題になっていた座頭市の最新作ですな。その後、他の人によって何作か作られましたが、やはり座頭市といえば勝新太郎以外に考えられませんな。まぁ、往年の座頭市と比べると、キャラクター自体が変わってきているのはある意味時代の変化もあり、それも当然であろうけれど、勝新の基本は変わらないと思い、いわばこれは、勝新=座頭市の集大成的な作品ともいえる訳で、そういう意味でも面白かったですな。しかしこれを観ていると、70年代後半から80年代にかけて、勝新という役者を上手く日本映画の中に溶け込ませて来なかった映画界は、とても不幸な事だと思わざるを得ないですな。今だと、本当にそう思いますな。それだけこの映画の勝新はイキイキとしていましたな。まぁ、私生活では色々ありましたが、あの時代だったからこそ、勝新を活かせなかったのはひじょうに残念ですな。今この映画を観ると、圧倒的に故人の出演が多いのには、時代とはいえ感慨深いものがありますな。平成元年に作られた映画を31年経った令和2年の時代に観れば、そうなってしまうのも致し方ないですけどねぇ…)