ふんわり風船ハート みぶき えみ@月の記憶の声を聴く人

   

月の記憶の声を聴きながら綴る

みぶきえみの世界観🌙

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前のお話

下矢印

 

 

看護学生になった私。

 

確かに環境は大きく変わった。

 

けど、今の環境から逃れたいっていう

思いしか持っていなかった私は

 

 

そこが、どんな場所なのかを

全く考えていなかった。

 

 

大学生のように

華やかなキャンパスライフじゃないことは

なんとなくわかっていた。

 

私の大きな誤算は・・・

 

 

青春真っただ中の

18歳~20歳の女の子が

集う場所だったっていうこと。

 

 

建物の1階から3階までが学校

4階と5階が寮っていう生活。

 

1部屋に、各学年2人ずつの

6人部屋。

 

逃げ場が全くない。

 

ベッドは、まるで押し入れのような

2段ベッドが3つ。

 

 

けど、入口のカーテンを閉めると

唯一、ひとりになれる場所だった。

 

 

彼を失って少しの希望も見いだせず

絶望したままの私。

 

この苦しい想いを

打ち明けられる友達を

作りたいとは思わなかった。

 

 

ただ、18歳の女の子らしく

その環境の中に

溶け込むことだけ考えた。

 

 

必要以上に、明るくふるまい

おしゃれをしたり、遊びに行ったり

18歳の女の子らしく

いることだけ考えていた。

 

同級生から見れば

何の悩みもなく

自分の思い通りに生きているように

見えただろう。

 

だけど、寮生活で1日の大半を

演じて過ごしている私は

夜には心身ともに疲れ果てていた。

 

 

全神経を張り詰め

今にも壊れそうな鎧を

着ているようだった。

 

 

ベッドで眠る時間だけが

唯一安らげる時間だった。

 

そして、普通の女の子を

演じれば演じるほど

大切な記憶は深い淵へと流れ落ち

 

ひとかけらずつ

真実を失っていくように思えた。

 

それでも、学校のカリキュラムは

押し寄せてくる。

 

毎日の授業や救護訓練。

 

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県内の看護学校対抗の球技大会で

チアガールをしたこともあった。

 

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文化祭の時は、同級生とバンドを組んで

歌ったりもした。

 

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それはただ、やって来たものを

こなすというだけで

 

その先に未来を感じることはなかった。

 

屋上から夜空を見つめては

飛び降りてしまいたいと

思うこともあった。

 

 

煌々と輝く満月を見るたびに

あの日のことが思い出されて

吸い込まれてしまいそうだった。

 

 

けど、それはできなかった。

 

 

だって、私は

彼に裏切られたんだから。

 

 

私に、一言も

残してくれなかったんだから。

 

後を追ったって

追い返されると思っていたから

どこにも居場所がないように感じていた。

 

今にして思えば

この誤解があったからこそ

私は生きてくることができた。

 

彼が旅立った時

私はまだ17歳だった。

 

だから、人が亡くなる時は

まるでドラマのように

 

最後には大切な人に囲まれて

何か言葉を残して

亡くなるものだと思っていた。

 

だから、私を呼んでもくれず

一言も残してくれなかった彼に

裏切られたと思ってしまったのだ。

 

けど、もしあの時

 


「生まれ変わったら結婚しよう」

 

 

なんて言われてたら

私はその日のうちに

彼のもとに向かっただろう。

 

最愛の人にも裏切られ

絶望の中を生きる私と

 

明るく振舞い

18歳の女の子として

生活する私。

 

まるで、あの頃のように

ふたりの私が

絡まり合って、余計に苦しくなっていた。

 

下矢印

 

 

そして、あの頃の真っ暗な絶望とは違って

今は、光が明るすぎて、まぶしくて

何も見えない。

 

 

絶望って白いんだね。

 

 

 

 

次のお話

下矢印